札幌市は2019年6月1日、日本で5番目のフェアトレードタウンに認定された。人口196万人、認定タウンのなかで名古屋市に次いで2番目に大きい都市である。
認定までが、際立って速かった。
推進組織「フェアトレードタウンさっぽろ戦略会議」が設立されたのは2018年3月。市議会決議が同年10月31日、市長の支持表明が11月28日、申請書の提出が12月26日。そして翌年6月1日に認定。設立から1年3か月である。
2025年の更新審査で、FTFJの認定委員会はこう書いた。
札幌市の強い意向を踏まえて、推進団体の中核的メンバーが揃い、推進団体の結成から1年3ヵ月という超特急でフェアトレードタウンに認定されたことは、そうした行政と繋がれる強さをもっていることが理解できる。しかし他方で、その性急さの故に、しっかりした基盤作りを疎かにしたかもしれないという反省が、これからの転換期において重要な課題になろうとしていることを、関係者はすでに気付いていると感じられる。
この記事は、その「転換期」の記録である。
背景
札幌のフェアトレード活動は、推進組織より20年古い。
2025年の審査報告書は「札幌におけるフェアトレード活動は、フェアトレード北海道がすでに20年以上の継続的実績がある」と記している。2019年の申請書は、2000年から2018年までのイベント開催を174回、うちメディア報道42回と集計した。推進組織ができる18年前からの積み上げである。
転機は2017年だった。持続可能な開発のための教育(ESD)を推進するRCE北海道道央圏協議会の呼びかけで「フェアトレード推進委員会」が発足。数回の会議を経て2018年3月に「フェアトレードタウンさっぽろ戦略会議」が設立された。
このとき、新しいアクターが2つ加わっている。札幌市環境局の職員と、パタゴニアである。2019年の審査報告書は「新たなアクターがその輪に参加したことからタウン申請へ向けた動きが一気に加速した」と書いている。
そこから先は速い。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2017年 | RCE北海道道央圏協議会の呼びかけで「フェアトレード推進委員会」発足 |
| 2018年3月 | フェアトレードタウンさっぽろ戦略会議 設立 |
| 2018年10月31日 | 市議会が「フェアトレードの理念支持及び普及啓発に関する決議」を全会一致で可決 |
| 2018年11月28日 | 秋元克広市長が定例記者会見で支持を公式表明 |
| 2018年12月26日 | FTFJへ認定申請 |
| 2019年3月18〜20日 | 現地調査(小松豊明団長・坂田裕輔委員) |
| 2019年4月17日 | 認定委員会が理事会へ審査報告 |
| 2019年6月1日 | フェアトレードタウン認定(日本で5番目)/札幌市役所1階ロビーで認定式 |
| 2019年10月12日 | 札幌学院大学・北星学園大学がフェアトレード大学に認定(2校同時、北海道初) |
市議会の決議は全会一致である。自由民主党、民主市民連合、公明党、日本共産党の所属議員全員に加え、無所属・市民ネットワーク北海道・札幌党の議員が名を連ねた。2019年の現地調査は「市議会議員の中にフェアトレードの推進について意欲的な議員がいて、各会派との調整役を果たしたことから、議会での決議がスムーズに進んだ」と記録している。
認定の4か月後、市内の2大学が同時にフェアトレード大学に認定された。この2校が、のちに札幌市の運動の実務を支えることになる。
※ 出典: 札幌市「フェアトレードの推進」ページ/札幌市議会 決議案第2号(2018年10月31日)/FTFJ 北海道札幌市ページ ※ 推進組織の設立年に食い違いがある。札幌市公式サイトとFTFJは「2017年」、2019年の審査報告書は「2018年3月」。2017年は前身の推進委員会の発足年とみられる。
主体
推進組織はフェアトレードタウンさっぽろ戦略会議である。会長は萱野智篤氏(北星学園大学経済学部教授、フェアトレード北海道 代表理事)。
7年間で、組織の規模は大きく縮んだ。
| 1回目の更新(2022年) | 2回目の更新(2025年) | |
|---|---|---|
| 会員 | 正会員47名(個人38名・企業5社・団体4団体)+サポート会員7名 | 6団体17名 |
| 総会 | 開催 | 2024年は開催されていない |
| 定例ミーティング | — | フェアフェス前に集中。協議内容もほとんどフェアフェスのこと |
2025年の審査報告書は、これを率直に書いている。
認定6年目を迎えるにあたり、組織運営が一つの曲がり角にきていることを関係者は感じ始めているようである。その課題としては、この急ぎ過ぎによって十分基盤を造り上げることができないまま、認定後のドライブ(動機)を持続させることが難しく、基盤が弱いままになってしまっているのではないかという指摘が行なわれていた。
課題としては具体的には、会員の大きな減少である。(中略)また会の経理処理や会合の議事録などは、基本的には適切に行なわれていることを確認できたが、但し、2024年の総会の開催がなされていないことが判明した。25年末までに、24年度分と合わせ必ず開催することを、萱野会長は約束してくれた。
現地調査団は「総会は毎年必ず開催すること、経理担当と監事とを分けることは今後必須である」と明記した。
それでも、認定委員会は基準1を満たしていると判断している。理由も書かれている。
依然として、タウン化への運動を進めた人たちの熱気が残っており、理事をはじめ関係者のフェアトレードへの強い情熱と、それによってフェアフェスなどの素晴らしいイベントが開催されていること、出店者をはじめ皆さんがフェアトレードという言葉を通して依然熱い夢や希望や未来を語る力をもっていることに圧倒された。
組織の器は縮んだが、動いている人はいる。それがこの事例の実態である。
規約と意思決定
戦略会議の規約は、理事会体制をとっていない。事務局(員)による決定方式で、しかも事務局員は事務局長が選任すると規定されている。
2019年の認定審査で、この点は民主的運営の観点から確認された。結果として「実際に事務局(員)は総会で立候補により決めていること、事務局会議には他の会員もオブザーバー参加できること、議事録が会員にも開示されていること」から民主性は担保されていると判断された。
規約の文言と運用実態がずれている状態が、認定時から続いている。そして2024年、その運用(総会)が一度止まった。
※ 出典: 札幌市市民活動サポートセンター 団体登録/フェアトレードタウンさっぽろ戦略会議 規約(2018年4月9日掲載)
取り組み
基準1 推進組織の設立と支持層の拡大
札幌の特徴は、推進組織が単独で立っていないことである。
2025年の審査報告書は、この構造を次のように整理している。
フェアトレードタウンさっぽろ戦略会議(以下、戦略会議)は設立されてからまだ6〜7年の若い団体であるため、(20年以上の実績がある「フェアトレード北海道」と)相互に補完し合って活発な活動展開を行い得ているように見受けられる。
会長の萱野氏は、戦略会議の会長であると同時にフェアトレード北海道の代表理事であり、北星学園大学の教授でもある。3つの立場が1人に集まっている。これは推進力にもなり、後継の難しさにもなる。
基準2 運動の展開と市民の啓発
中心にあるのは「フェアトレードフェスタ in さっぽろ」(通称フェアフェス)である。
イベント数の推移は次のとおり。
| 集計期間 | 回数 | うちメディア報道 | |
|---|---|---|---|
| 認定時(2019年) | 2000〜2018年(19年間) | 174回 | 42回 |
| 1回目の更新(2022年) | 過去3年間 | 14回 | — |
| 2回目の更新(2025年) | 過去3年間 | — | 15件 |
2025年の現地調査は、フェアフェスの開催期間中(2025年6月27〜29日)に行われた。報告書は「イベントの詳細とそれぞれの意味について目の当たりに体験することができた」と書いている。
新しい動きもある。「あつべつフェアトレードまつり」(第1回は2023年度)は、2つのフェアトレード大学と副都心開発公社、一般社団法人新さっぽろエリアマネジメント、札幌市、市教育委員会が協働するイベントである。認定委員会はこれを「新しいフェアトレードタウンとフェアトレード大学との新しいフュージョンの可能性」と評価した。
基準3 地域社会への浸透
この基準は、7年間ほとんど動いていない。
| 事例数 | |
|---|---|
| 認定時(2019年) | 4件 |
| 1回目の更新(2022年) | 変化なし(現地調査で2件を追加確認) |
| 2回目の更新(2025年) | 3件(当初より減少) |
2025年の審査報告書は率直である。
地元の企業/事業者や団体(学校や市民団体)等で、いかにフェアトレード商品が使用されているかという点については、札幌でも事例数が増えておらず、3件報告されているのみであり(当初認定時は4件)、本基準に関しては特段具体的な対応は新たには行なわれてこなかったかのようである。
確認された事例は次のとおりである。
- 札幌市国際局:表敬訪問のゲストにフェアトレードコットンのトートバッグを配付
- 札幌学院大学:寄付者にシサム工房のフェアトレードコットンのトートバッグを贈呈
- 北星学園大学:寄付者への返礼品として、2022〜24年は大学ロゴ入りフェアトレード認証オーガニックコットンのトートバッグ、2025年はシャプラニールのクラフトリンク(バングラデシュ製ガムチャ)
- パタゴニア:社内でのコーヒー・紅茶の使用(2022年時点。2025年は未確認)
3件のうち2件が大学の返礼品である。
そのうえで報告書はこう続けている。
日本のすべてのフェアトレードタウンにとって、一番の弱点となっている活動が本基準3(次いで基準4)のように感じられる。その中でも札幌の場合、基準3および4への取組みにはむしろ大いなる可能性があるのではないかと、現地調査全体から感じられた。
基準4 地域活性化への貢献
2025年の申請書が挙げた4事例は、いずれも協働の相手が多い。
| # | 事例 | 協働の相手 |
|---|---|---|
| 1 | フェアトレードフェスタ in さっぽろ | 札幌市・市教育委員会・JICA北海道など |
| 2 | あつべつフェアトレードまつり | 2つのフェアトレード大学・副都心開発公社・新さっぽろエリアマネジメント・札幌市・市教育委員会 |
| 3 | クロスホテル・マーケット | クロスホテル・フェアトレード雑貨&レストランみんたる |
| 4 | エコラップ つつむ・つつまれる | 市立大通高校 遊語部・社会福祉法人草の実会 |
③には変化があった。クロスホテル札幌は2022年時点でフェアトレード宿泊プランや近隣店との提携を行い、認定委員会は「観光とフェアトレードをマッチングさせている点で先進事例」と評価していた。2025年の調査では「急激に増えたインバウンド需要から従来のフェアトレードへの取り組みが難しくなった」との説明があり、今後はサステナブル認定ホテルの枠組みで検討したいとのことだった。
2022年に確認された「さっぽろゆめ結晶」は、産官学民の協働の到達点である。2019年9月に学生が発案し、2020年10月に発売。エシカルタイムが国際フェアトレード認証ラベルを取得・製造、北海道博報堂と経営コンサルタントがプロモーションを助言、北海道新聞のクラウドファンディングで資金を集めた。市庁舎の売店で販売され、海外の領事館へのギフトにも使われている。
2025年には、コーヒーの新しい動きが確認されている。申請書の記述を、報告書がそのまま引いている。
現在の札幌は、大手コーヒー専門企業が認証豆を使用した独自製品(UCCの EZONO BLEND、三本コーヒー)と自家焙煎店がフェアトレード団体から豆を仕入れ、フェアトレードを前面に打ち出した多彩な独自製品を盛んに開発・販売している第3の波の時代に入っているといえよう
ふるさと納税の返礼品にフェアトレードコーヒーを申請する動きも確認された。
もうひとつ、行政の制度が使われている。札幌市の「まちづくりパートナーシップ協定」である。企業と自治体の協働関係を促進する制度で、イオンやコープさっぽろが市と協定を結んでいる。これに基づき、市内のイオン各店舗20店弱でフェアトレードのポスター掲示とパンフレット/マップの配布が行われている。
基準5 地域の店等によるフェアトレード産品の幅広い提供
この基準の裏側に、札幌市の事例で最も注目すべき事実がある。
まず数字を見る。
| 認定時(2019年) | 1回目の更新(2022年) | 2回目の更新(2025年) | |
|---|---|---|---|
| 人口 | 1,965,940人 | 1,973,331人(2021年10月) | 約196万人(2025年2月1日) |
| 必要店舗数 | 197店 | 198店 | 196店 |
| 申請された店舗数 | 228店 | 268店 | 261.5店 |
| 専門店 | 2店 | あり(みんたる等) | — |
問題は、この数字を誰がどう数えているかである。
基準5のベースデータは、北星学園大学の授業から出ている。
2025年の審査報告書が、その仕組みを説明している。
札幌市の小売店舗調査については、北星学園大学の萱野智篤教授の「フェアトレード講座」(4単位)において、夏休みの課題実習として受講学生たちにフェアトレード商品を販売している小売店を訪問し、聴き取りを行なう課題を課しており、これまでは毎年20〜30名の受講生によって、実質的にフェアトレード商品販売店の調査を行なっており、戦略会議はこの成果をもって、タウン申請および更新における基準5のベースデータとしてきた。
認定基準の根拠データを、大学の一講義が支えている。
認定委員会はこれを認めた。「萱野教授講座学生の調査が学術的かつ学生にとって評価のともなう厳正なものであることを確認の上、小売店舗への調査を代替させてよいこととする旨の了承・了解を図り」——つまり、通常求められる裏取り(必要店舗数の20%相当を直接確認)の代替として認めている。
その判断が必要だった理由も、報告書に書かれている。
現地調査団がコンタクト(インタビュー)を行なったフェアトレード店舗数は26。(中略)実質は21店舗であり、これ以外にフェアフェス外で3店舗をチェックしているので、合計24店であった。この24店舗は人口1万人当たり必要数(196店)の内の13.3%であり、これは20%に6.7%不足している。
そして、そのベースとなる大学のリスト自体に問題がある。
但し、現在使用できる萱野リストは、(中略)2023年度のリストであり、これが最新リスト(24年リストは作成されていない)となっている。
裏取りの手続きは、認定のたびに緩んでいる。
| 認定委員会が直接確認した店舗 | 判定 | |
|---|---|---|
| 2019年 | 47店(申告228店の20%超) | 5店で取扱い確認できず → 216店に減点。それでも必要197店を上回る |
| 2022年 | 8店(非チェーン店41店の2割程度。第1回認定委員会で合意) | 全店で取扱いを確認 |
| 2025年 | 24店(必要196店の13.3%。20%に6.7%不足) | 大学の課題実習リストで代替 |
2019年の調査は厳密だった。47店を当たり、5店で取扱いが確認できず、その割合(5%)を申告数から機械的に減点したうえで基準を満たすと判断している。この手続きは、その後の2回では行われていない。
※ これは札幌市の問題ではなく、FTFJの審査運用の問題である。
基準6 自治体によるフェアトレードの支持と普及
札幌市のフェアトレードは、国際部門が担っている。担当は総務局国際部国際課。2022年の調査時点では「交流課」だった。
市議会決議(2018年10月31日)は全会一致。提出者は自由民主党、民主市民連合、公明党、日本共産党の所属議員全員に、無所属の坂本きょう子議員、市民ネットワーク北海道の石川佐和子議員、札幌党の中山真一議員が加わっている。
市長の支持表明は2018年11月28日の定例記者会見。宣言文は現在も市サイトに全文が掲載されている。
市が行っていること
2025年の現地調査で確認された内容は次のとおりである。
- フェアトレードパンフレット/マップの作成。戦略会議と共同で作成し、印刷代等の費用は札幌市が負担。最初に6,000部、2022年の改訂時に2,000部増刷、2025年時点で残り1,000部。同年に新版が出る予定
- まちづくりパートナーシップ協定に基づき、市内のイオン各店舗20店弱でポスター掲示とパンフレット/マップ配布
- 「SDGs教育旅行@SAPPORO」でフェアトレードのレッスンを実施(中高の修学旅行向け。実施はエシカルタイム)
- 市庁舎の売店でフェアトレードチョコレートを販売、図書館に展示、市庁舎にフェアトレードコーナーを設置(2022年時点で確認)
- 小学生向け環境副読本にフェアトレードのページを追加。フェアトレードタウンにも言及
- 市長がフェアフェスに応援メッセージを送付(2022〜2024年、YouTubeのアーカイブで確認)
予算 — 単体の費目はない
2025年の現地調査で、市の担当課は「フェアトレードに関わる事業への予算措置と執行の実績に関して、単体の予算費目はない」と回答している。「費目はパンフレットやポスターの印刷、デザイン費用で数十万ではないか」とのことだった。
この回答は、公開資料の検証と一致する。令和7・8年度の局別施策の概要、一般会計予算説明書、予算の概要(合計200万字超)を全文検索しても「フェアトレード」は1件もヒットしない。国際部の予算内訳(令和8年度 501,526千円)にも該当項目はない。
認定更新料の扱いも、他市と逆である。現地調査で「認定料は戦略会議の方に見てもらっている」との回答があった。浜松市と逗子市が認定更新手数料を市の予算で負担しているのとは対照的である。
認定委員会の評価
2025年の審査報告書は、市との関係をこう分析している。
現在までのところ、フェアトレードさっぽろ戦略会議/フェアトレード北海道と行政との協働関係は、行政にとってはSDGs政策を通して、広報関係が中心となっているようである。
担当が国際課故に、例えば学校給食へのフェアトレードへの取組みなどは限定的に取り扱われる感もあるが、フェアトレードタウン側としてはそれをSDGs的に説明しアプローチしていく対応が必要であろうと感じられる。
同時に、行政の姿勢は、「市民側からの要請により、行政として協力できるものであれば協力していく」というものになっていると感じられる。だからこそ、市との協働的側面を増やしていく努力が今後必要なのではないかと感じられた。
「市民側からの要請があれば協力する」という姿勢は、認定を主導した2018年の姿勢とは違う。
議会
会議録検索システムで「フェアトレード」を検索すると全期間で52件。年別では2018年8件、2019年8件、2022年8件、2021年7件、2024年6件、2025年5件、2023年3件、2020年3件、2017年4件。2026年は0件である。
2024年以降の実質的な質疑は、すべて前川隆史議員(公明党)1名によるものである。決算特別委員会での定点質問という形をとっている。
2025年10月17日の決算特別委員会で、国際部長は次のように答弁した。この答弁が、2度目の更新認定日を示す唯一の公開情報である。
その結果、フェアトレード推進活動がさらに深まり、より活性化していることが評価され、2025年8月25日付で、更新が認められたところでございます。
同じ答弁で、2025年度から市の出前講座を北星学園大学のフェアトレードサークルの学生と共同で実施し、小中学生を対象にする企画が明らかにされている。
※ 出典: 札幌市「フェアトレードの推進」ページ/札幌市議会 会議録検索システム/札幌市 令和7・8年度 局別施策の概要・一般会計予算説明書
成果
| 指標 | 認定時(2019年) | 1回目の更新(2022年) | 2回目の更新(2025年) |
|---|---|---|---|
| 人口 | 1,965,940人 | 1,973,331人 | 約196万人 |
| 基準5の必要店舗数 | 197店 | 198店 | 196店 |
| 商業施設数(申請) | 228店 | 268店 | 261.5店 |
| 認定委員会が直接確認した店舗 | 47店(20%超) | 8店 | 24店(13.3%) |
| 産品を利用・普及する地元組織 | 4件 | 変化なし | 3件 |
| イベント・キャンペーン | 174回(2000〜2018年) | 14回(3年) | — |
| メディア報道 | 42回(19年間) | — | 15件 |
| 推進組織の会員 | — | 正会員47名+サポート7名 | 6団体17名 |
認知度 — 数値はある。出典が特定できない
札幌市の第3期SDGs未来都市計画(2024〜2026年)には、フェアトレードのKPIが置かれている。
指標:札幌市民のフェアトレードの認知度 現在(2022年度)48.8% → 2023年度(目標値)50.0% ゴール、ターゲット番号:8.3、8.4、11.a、12.2、12.6、12.8
ただし、この指標には2つの問題がある。
第一に、2024〜2026年の計画でありながら、目標年度が2023年度のまま更新されていない。
第二に、48.8%という数値の出典調査が、公開情報では特定できない。市民意識調査(令和4年度 第1〜4回)、インターネットアンケート調査(令和3〜7年度)のいずれにもフェアトレードの設問は見つからなかった。
したがって、名古屋市・浜松市・逗子市と同じ土俵で比較することはできません。この3市は設問文・選択肢・n・回収率まで公開しています。札幌市は数値だけが計画に載っている状態です。
計画上の位置づけは三層に分かれている。
| 計画 | 位置づけ |
|---|---|
| 第3期SDGs未来都市計画(2024〜2026) | KPIあり(認知度48.8%→50.0%) |
| 札幌市多文化共生・国際交流基本方針(2023年3月、10年計画) | 施策として明記(数値目標なし) |
| 第2次札幌市まちづくり戦略ビジョン/アクションプラン2023 | 記載なし |
市の総合計画の本流には入っていない。そして市長の施政方針(2023年6月)にも令和7年度予算の概要にも、「フェアトレード」は現れない。
同計画の脚注には、国内のフェアトレードタウンとして「熊本市、名古屋市、逗子市、浜松市、いなべ市」の5市が挙げられている。鎌倉市(2025年3月)と大府市(2026年2月)は反映されていない。
※ 出典: 札幌市 第3期SDGs未来都市計画/札幌市多文化共生・国際交流基本方針/第2次札幌市まちづくり戦略ビジョン・アクションプラン2023 ※ すべて公開資料。PDFの該当ページを直接確認済み(2026年8月27日)。
4市の比較 — 札幌市だけが比較表に入れない
| 名古屋市 | 浜松市 | 逗子市 | 札幌市 | |
|---|---|---|---|---|
| 人口 | 約232万人 | 約76万人 | 約5.5万人 | 約196万人 |
| フェアトレードを知っている | 40.6% | 42.3% | 44.5% | 48.8%(2022年度) |
| 自分のまちがタウンだと知っている | 2.3% | 4.2% | 21.8%(試算) | 調査なし |
| 設問文・n・回収率の公開 | あり | あり | あり | なし |
「フェアトレードの認知」と「自分のまちがタウンである認知」を分けて測っていないため、札幌市はこの比較に入れません。
名古屋市(232万人)で2.3%、浜松市(76万人)で4.2%という結果を踏まえると、196万人の札幌市がどのあたりに位置するかは重要な情報になります。測れば分かることです。
課題
2025年の更新審査で、認定委員会は第2部(今後3年間の活動)について次のように書いた。
第Ⅱ部について、申請書には具体的な取組みや方針があまり書き込まれておらず、これからの3年間で取り組もうとしている重点項目などが分かりづらく、明確ではなかった。
同じ指摘は2022年にもあった。「申請書の当該箇所には具体的な取り組みや方針があまり書き込まれておらず、3年間で何に取り組もうとしているのかが明確ではなかった」。2回続けて同じことが書かれている。
そこで現地調査団は、フェアフェス初日の夜の懇親会のあと、有志に残ってもらう場を設けた。約12名が残り、全員が札幌市のフェアトレードタウンの今後について語ったという。報告書は「結果としていずれも熱い発言の場となった」と記している。
そのうえで、報告書は次のように総括している。
今後3年間の自分たちのタウンの展開について話し合うこと、しかも理念と共に具体性の両面をもって話し合い取り組んでいくことはなかなか難しいことであろう。しかし、結局話し合うことでしか、未来は生まれてこないし、続けること(継続性)以外に方法はないのが現実なのであろうと思われる。そのことが指摘する一つの課題は、熟議の場をもっと大切にすることであろう。
現地調査団は、札幌の運動を3期に区切っている。
札幌市でのフェアトレード活動の第一期は、フェアトレードに目覚めた方々が、市民にフェアトレードを知らせるために、フェアフェスというイベントを開催し続けたことから始まり、第二期はフェアトレードタウン認定のチャンスを掴むために、急遽目標を設定し、それを短期間の内に見事に達成してきた。
そしてこれからの第三期は、(中略)札幌/北海道的フェアトレードタウン運動の展開を求めて発展していくことであろう。
整理すると、明示された課題は5つである。
- 会員の大きな減少(正会員47名+サポート7名 → 6団体17名)
- 総会を毎年必ず開催すること(2024年は未開催)
- 経理担当と監事を分けること
- 基準3・基準4の事例が増えていないこと(4件 → 3件)
- 今後3年間の具体的な取組みが申請書に書き込まれていないこと(2回連続の指摘)
出典
- 札幌市「フェアトレードの推進」 https://www.city.sapporo.jp/kokusai/cooperation/fairtrade.html (取得日 2026-08-27)
- 札幌市議会 決議案第2号「フェアトレードの理念支持及び普及啓発に関する決議」 https://www.city.sapporo.jp/gikai/html/documents/30_3t_k02.pdf (取得日 2026-08-27)
- 札幌市 第3期SDGs未来都市計画(2024〜2026) https://www.city.sapporo.jp/kankyo/sdgs/documents/sdgs_plan3.pdf (取得日 2026-08-27)
- 札幌市多文化共生・国際交流基本方針 https://www.city.sapporo.jp/kokusai/documents/kihonhousin.pdf (取得日 2026-08-27)
- 第2次札幌市まちづくり戦略ビジョン・アクションプラン2023 https://www.city.sapporo.jp/chosei/actionplan2023.html (取得日 2026-08-27)
- 札幌市 令和8年度 局別施策の概要 https://www.city.sapporo.jp/zaisei/kohyo/yosan-kessan/r8/documents/04_r8_kyokubetsu.pdf (取得日 2026-08-27)
- 札幌市議会 会議録検索システム https://sapporo.gijiroku.com/voices/g07v_search.asp (取得日 2026-08-27)
- 札幌市 推計人口 https://www.city.sapporo.jp/toukei/jinko/suikei-jinko/suikei-jinko.html (取得日 2026-08-27)
- フェアトレードタウンさっぽろ戦略会議 公式ブログ https://fttsapporo.blogspot.com/ (取得日 2026-08-27)
- フェアトレード北海道 https://fairtrade-hokkaido.org/ (取得日 2026-08-27)
- 日本フェアトレード・フォーラム「北海道札幌市」 https://fairtrade-forum-japan.org/townactivity/details/sapporo (取得日 2026-08-27)
- 日本フェアトレード・フォーラム「札幌市をフェアトレードタウンとして2度目の更新認定」 https://fairtrade-forum-japan.org/archives/4593 (取得日 2026-08-27)
- 北星学園大学・北星学園大学短期大学部「フェアトレード大学」 https://www.hokusei.ac.jp/activity/fair_trade/ (取得日 2026-08-27)
- 札幌学院大学「フェアトレード大学に認定」 https://www.sgu.ac.jp/news/fair_trade20190904nintei.html (取得日 2026-08-27)
- 札幌市市民活動サポートセンター 団体登録 http://sapporo-machizukuri.com/org/4433 (取得日 2026-08-27)
- フェアトレードフェスタ in さっぽろ https://fes.peace-cooperation.net/2025 (取得日 2026-08-27)
- 北海道新聞「フェアトレード、買って支援 札幌で催し」(2026年6月21日) https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1327763/ (取得日 2026-08-27)
【FTFJ編集部による解説】他地域への示唆
1. 認定を急ぐことには、はっきりした代償がある。
札幌市は推進組織の設立から1年3か月で認定に届いた。これは記録である。行政の強い意向、市議会の全会一致、市長の記者会見での表明、そして20年の運動の蓄積。条件が揃っていた。
6年後、その速さの代償が現れた。会員は47名から17名へ。2024年の総会は開かれなかった。基準3の事例は4件から3件へ減った。認定委員会自身が「この急ぎ過ぎによって十分基盤を造り上げることができないまま、認定後のドライブ(動機)を持続させることが難しく、基盤が弱いままになってしまっているのではないか」と書いている。
これから認定を目指す地域への含意は、速さを競わないことである。認定は目標であって、ゴールではない。認定に向かう準備期間そのものが、認定後に組織を動かす筋肉をつくる時間でもある。逗子市は勉強会の発足(2011年)から認定(2016年)まで5年、熊本市は11年かけている。その時間は無駄ではなかった。
同時に、これはFTFJへの問いでもある。認定審査は「今、基準を満たしているか」を見る。「認定後も続くか」は見ていない。札幌市の6年後を、認定時に予測できたか。予測すべきだったか。この問いは、審査の設計に関わる。
2. 大学は、フェアトレードタウンの実務を担いうる。ただしそれは属人的な資産である。
札幌市の基準5のベースデータは、北星学園大学の「フェアトレード講座」(4単位)の課題実習から出ている。毎年20〜30名の学生が市内の店舗を訪問し、聴き取りを行う。推進組織はその成果を認定申請の基礎資料としてきた。
これは、他のどのタウンにもない仕組みである。店舗調査は推進組織にとって最も手間のかかる作業であり、浜松市では市が消費者団体に委託し、名古屋市では「都市の規模が大きすぎて調査が困難」という状態が続いている。札幌は、それを教育プログラムとして解いた。
だが2024年度のリストは作成されていない。現在使えるのは2023年度版である。この講座を担当しているのは、推進組織の会長でもある萱野教授である。仕組みは1人の教員に依存している。
大学と組むこと自体は、強く推奨できる。ただし「誰が抜けても続く形」にしておくこと。科目として制度化されていても、担当者が替われば内容は変わる。
3. 認定を主導した行政は、認定後に受け身に戻ることがある。
2018年、札幌市はSDGs未来都市構想への対応の一環としてフェアトレードタウン認定を積極的に推進した。市環境局の職員が推進組織の設立メンバーに加わり、市議会の決議も市長の表明も速やかに実現した。
7年後、認定委員会が記録した市の姿勢はこうである。
予算に単体の費目はなく、認定更新料は推進組織が負担している。浜松市・逗子市が更新手数料を市の予算で負担しているのとは対照的である。
行政が主導して認定を取ったタウンは、認定後に「協力する側」に戻りやすい。目標が達成されたからである。推進組織の側は、認定後にこそ、行政に次の目標を持ってもらう働きかけが要る。
そのための材料も、この事例のなかにある。認定委員会は「担当が国際課故に、例えば学校給食へのフェアトレードへの取組みなどは限定的に取り扱われる感もある」と指摘したうえで、「フェアトレードタウン側としてはそれをSDGs的に説明しアプローチしていく対応が必要」と書いている。部局の所管を変えるのではなく、部局の言葉に翻訳する。それが現実的な道筋である。
4. 【FTFJ自身への指摘】基準5の裏取りは、回を追うごとに緩んでいる。
これは札幌市の問題ではなく、FTFJの審査運用の問題である。事例記事として書く以上、正直に記録する。
2019年の手続きは厳密だった。サンプル調査の結果を申告数に反映させ、そのうえで基準を満たすかを判定している。この手続きは、その後の2回では行われていない。
2022年は「非チェーン店の2割」という別の基準に合意し、2025年は必要数の13.3%にとどまったうえで大学のリストで代替した。代替の判断そのものは合理的である。学術的な調査であり、学生の評価もかかっている。だが、その最新版が2年前のものであることは、報告書自身が記録している。
認定基準は、それを検証する手続きとセットで意味を持つ。FTRCは事例記事の集積を通じて、この点も可視化していく。
※ 文責: 内山大志