大府市は2026年2月25日、日本で8番目のフェアトレードタウンに認定された。愛知県知多半島の付け根、人口約9万3千人。名古屋市(2015年)に続く愛知県内2例目である。
運動の起点が、他の7市と違う。
申請書はこう書いている。
おおぶフェアトレードタウン推進委員会は、子育て中の母親を中心とした市民団体です。活動の原点は、2019年に大府市出身の原田さとみさんが市内で行った講演会「フェアトレード運動で地元に楽しく、世界に優しく」にさかのぼります。この講演をきっかけに、フェアトレードに関心をもつ市民が集まり、2021年に推進委員会を設立しました。また、学校などでSDGsやエシカル消費について学んだこどもたちからの「フェアトレードって知ってる?」という素朴な問いかけに刺激を受けたメンバーもいます。
子どもが学校で学び、家で親に聞いた。それが運動の起点のひとつになっている。
FTRCがこれまで書いた7市の起点は、市民団体、大学教員、行政の政策、隣接自治体の認定、議員連盟だった。大府市は「子どもの問いかけ」である。
そして5年後、7人の推進委員会が認定に届いた。
背景
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2019年 | 大府市出身の原田さとみ氏が市内で講演「フェアトレード運動で地元に楽しく、世界に優しく」 |
| 2021年1月1日 | おおぶフェアトレードタウン推進委員会 設立 |
| 2021年3月 | 原田さとみ氏を招いて市民向け「フェアトレード勉強会」 |
| 2021年4月 | 大府市協働企画提案事業に応募・採択 |
| 2021年9月 | 環境デーなごや、CBC cinema et marche に参加(以降 継続) |
| 2021年11月 | おおぶフェアトレードメルカート、おおぶシネマルシェを開催 |
| 2022年5月 | 世界フェアトレード・デー・なごやに参加(以降 継続) |
| 2022年10月 | 大府市産業文化まつりに参加(以降 継続) |
| 2023年5月 | フェアトレードマルシェを開催(5月・8月・11月・2024年2月) |
| 2023年7月 | 大府地域婦人団体連絡協議会 フェアトレード勉強会 |
| 2024年10月 | SDGs AICHI EXPO 2024 に参加 |
| 2025年4月 | おおぶオリジナルフェアトレードコーヒー 飲み比べイベント(4月・5月) |
| 2025年6月25日 | 大府市議会が「フェアトレードの理念を尊重し、その推進を支持する決議」を起立全員で可決 |
| 2025年7月29日 | 岡村秀人市長が「健康都市おおぶフェアトレード宣言」(おおぶ文化交流の杜アローブ) |
| 2025年8月25日 | オリジナルドリップバッグコーヒー販売開始 |
| 2025年9月6日 | 大府市制55周年記念式典で特別感謝状を受賞 |
| 2025年9月13日 | フェアトレード全国フォーラム2025 in 名古屋で活動発表、「おおぶフェアトレードMAP」お披露目 |
| 2025年9月15日 | FTFJへ認定申請(10月9日に修正版提出) |
| 2025年10月23日 | 愛知県立半田高等学校附属中学校で「ライフスタイル探究」出張授業 |
| 2025年12月11日 | 現地調査(宮川公平団長が現地、坂田裕輔委員がオンライン) |
| 2026年2月25日 | フェアトレードタウン認定(日本で8番目) |
| 2026年3月28日 | 認定記念式典・マルシェ(大府市役所5階議場/市民健康ロビー・広場) |
設立から認定まで5年2か月。札幌市(1年3か月)、いなべ市(1年5か月)、鎌倉市(1年10か月)に比べるとゆっくりである。
名古屋市との人的なつながりが、通奏低音として流れている。運動の起点である原田さとみ氏はフェアトレードタウンなごや/NPO法人フェアトレード名古屋ネットワークの中心人物であり、推進委員会は環境デーなごや、CBC cinema et marche、世界フェアトレード・デー・なごやに毎年参加してきた。賛助会員にはエシカル・ペネロープ株式会社(原田氏の関連会社)も名を連ねている。
※ 出典: 大府市「フェアトレードタウン」ページ/FTFJ 愛知県大府市ページ/おおぶフェアトレードタウン推進委員会「コラビア」団体プロフィール
主体
推進組織はおおぶフェアトレードタウン推進委員会である。2021年1月1日設立。
役員は7名。全員が「個人」区分で登録されている。
| 役職 | 氏名 |
|---|---|
| 代表 | 平見舞子 |
| 副代表 | 近藤綾子 |
| 会計 | 志知好恵 |
| 書記 | 岡田淑 |
| 委員 | 岡田直美 |
| 委員 | 北林貴予 |
| 委員 | 加藤協子 |
会員構成(2025年8月1日現在)
| 数 | |
|---|---|
| 推進委員会(実働メンバー) | 7人 |
| 賛助会員(企業・団体) | 17団体 |
| 賛助会員(個人) | 23人 |
事務所は代表の自宅である。会則にそう書かれている(愛知県大府市東新町6丁目451 グリーンヒル東新D棟301)。
賛助会員17団体の顔ぶれが、この市の運動の広がりを示している。
- 企業・商店:アミュークスファーム、白いオリーブ、岡田農園、つむぎてや、みゆきごはん、kaan to color、chillari design、合同会社神技、みかんや、とみーふるーつ、ヘルシングあい、株式会社ドリームメディカル楽、エシカル・ペネロープ株式会社
- フェアトレードショップ:かなふや、弥栄屋
- NPO/NGO:NPO法人おさんぽやなないろ、大府地域婦人団体連絡協議会
大府地域婦人団体連絡協議会が賛助会員に入っているのは、他市に見られない特徴である。2023年7月には同協議会でフェアトレード勉強会が開かれている。
会費は、賛助会員 年間 個人1口2,000円/法人企業1口5,000円/学生1口1,000円。入会金はない。
会則は「認定されること」を目標に書いている
会則の「団体の目的」はこうである。
本会は、市民を対象に「フェアトレード」の推進を図る。フェアトレードについて知る機会を作り推進していくとともに大府市がフェアトレードタウンとして認定されることを目標とする。
認定そのものが会則に目標として書かれている。(鎌倉市の会則も「鎌倉市のフェアトレードタウン認定及び継続を目指す」と書いている。浜松市は逆に、目的からフェアトレードの語を意図的に外した。)
事業として6つが列挙されている。
- 市民を対象としたフェアトレードの勉強会
- 子どもを対象としたフェアトレードの映画会
- 大人を対象としたフェアトレードの映画会
- 大府市内で行われるマルシェ、朝市等に出店
- 「フェアトレード」マルシェの開催
- 大府市外で行われるフェアトレードマルシェへの出店
子ども向けと大人向けの映画会を、別々に書いている。
※ 出典: おおぶフェアトレードタウン推進委員会「コラビア」団体プロフィール
取り組み
基準1・2 推進組織と市民の啓発
認定委員会の判断は簡潔である。
会則において「市民を対象に『フェアトレード』の推進を図る。フェアトレードについて知る機会を作り推進していくとともに大府市がフェアトレードタウンとして認定されることを目標とする」を目的に掲げており、現地調査で推進委員会が地元のいろんなセクターと協働し、幅広い分野から共感を得ていることを確認することができた。
設立当初から市民、行政、NPO、婦人団体、企業を含め多岐にわたるイベントに積極的に参加し、啓発活動を行っていることを示す資料を確認するとともに、聞き取りを行うことができ、基準2に適合していることを確認した。
「イベントに積極的に参加」という書き方に、この組織の性格が出ている。主催より参加が多い。名古屋圏のイベント(環境デーなごや、世界フェアトレード・デー・なごや、CBC cinema et marche、SDGs AICHI EXPO)に毎年出向き、市内では産業文化まつりに出る。鎌倉市と同じ「他団体のイベントに参加する」型である。
基準3 地域社会への浸透 — 改善点が明記された
認定委員会は、この基準について3つの留保をつけている。
現地調査では、行政関係の施設とNPO法人、社会福祉団体においてフェアトレード産品を利用していることを確認した。市役所では、市長や議員自らフェアトレードの説明を行い、イベントではポロシャツを着用することで、大府のフェアトレード活動の普及啓発に役立っているとのこと。
他方、おさんぽやなないろのバナナについては、扱っているバランゴンバナナについては、民衆交易の商材であることは確認が取れているが、基準5の推進団体が認める団体には含まれていない。
企業の利用が見られなかったが、地元の自動車部品メーカーである愛三工業などがCSRの一環で、自社のマルシェにてフェアトレード商材を扱う店舗の出店に協力的(同社出身の議員の関係から)との話を市役所職員から聞いていることもあるため、今後に期待したい。
いくつかの点で今後の改善が求められるところはあるものの、日常的な産品利用を通して、組織内外へのフェアトレード普及啓発に役立てており、基準3に適合していると確認した。
3つの留保を整理する。
| # | 指摘 | 意味 |
|---|---|---|
| 1 | バランゴンバナナが「推進団体が認めるフェアトレード団体」のリストに入っていない | 手続き上の不備。民衆交易の商材であることは確認済み |
| 2 | 企業の利用が見られなかった | 基準3の中心である「地元企業の組織内利用」が確認できていない |
| 3 | 「いくつかの点で今後の改善が求められる」 | 認定委員会が明示的に改善を求めている |
それでも適合と判断された。
注目すべきは1の指摘である。バランゴンバナナはオルター・トレード・ジャパン(ATJ)が扱う「民衆交易」の商品で、国際フェアトレード認証やWFTO加盟団体の産品ではない。基準5の「地域の推進組織が適切と認めるフェアトレード団体」のリストに載せておけば、そのまま認められる。リストに載っていなかったことが指摘されている。
これは札幌市の記事で扱った「第3カテゴリー団体リスト」の問題と同じ構造である。(2022年に札幌市の推進組織がFTFJに「リストの公開性・公報性を高めてほしい」と要望している。)
基準4 地域活性化への貢献 — 5事例中2事例
認定委員会の判断は、ここでも留保つきである。
連携事例5のバランゴンバナナを使ったAPLAのバナナについては、WFTOあるいはFLOの認証ラベルの付いたバナナではないが、「民衆交易」のバナナが使われていることを確認した。連携事例1から4のうち、フェアトレード産品を扱ったものは、1および2のみではあるものの、どの事例も地産地消やオーガニックなど人や環境に配慮した素材を使い、フェアトレードの普及啓発の文脈で活動を行っていることを確認した。
5つの連携事例のうち、フェアトレード産品を使っているのは3つである。残りの2つは地産地消やオーガニックの取り組みで、フェアトレードの普及啓発の文脈に置かれている。
そのうえで、連携先の幅が評価された。
大府市役所、社会福祉団体、大学、公共施設、企業など地元のさまざまなセクターと連携して、フェアトレードの普及啓発活動をしていることから、基準4に適合していることを確認した。
市の公式サイトが挙げている取り組みは次のとおり。
- ぽこぽこバナナPROJECT
- Obu Fairtrade Coffee — 東ティモール産。パラアーティストの山下賢志氏・岩堀里美氏の絵画をパッケージに使用
- フェアトレードマルシェ 年2回(広報おおぶによれば「現在では年2回、18店舗が集う一大イベント」)
- 国際交流協会と連携した中学生向けワークショップ
- 企業連携:KIYOMIZU GLOBAL BUSINESS株式会社、白いオリーブ、愛三工業株式会社
「白いオリーブ」は知多半島でオリーブを栽培している。岡田農園(無農薬野菜)×みゆきごはん×白いオリーブの3者で弁当を製造する連携もある。
基準5 地域の店等によるフェアトレード産品の幅広い提供
人口93,147人(2025年7月末現在)に対して必要な店舗数は9店。
| 必要店舗数 | 9店 |
| 申請(カウント数) | 11.5店 |
| 必要数に対する倍率 | 1.28倍 |
8市のなかで、名古屋市(1.02倍)に次いで2番目に低い。(鎌倉市1.53倍、いなべ市5.80倍。)
現地調査では5件を実地調査した。
結果、上記の通り販売だけでなく対応いただいた方々みなさんがフェアトレードの説明を十分にできることが確認できたため、基準5の条件に適合している。
訪問先は次のとおり。
| 訪問先 | 性格 |
|---|---|
| オリーブオイル専門店「白いオリーブ」 | 知多半島でオリーブを栽培 |
| Café LiMe(かなふや) | フェアトレードショップ |
| 弥栄屋(いやさかや) | フェアトレードショップ |
| 木のおもちゃ 峠のお店 | — |
| KURUTO おおぶ | 大府市健康にぎわいステーション |
KURUTOおおぶは、令和8年度から新たにフェアトレード商品の取り扱いを始める方針である。2025年12月11日の建設産業委員会で、産業振興部長が指定管理者の重点項目として「物販コーナーですけれども、こういったところで、新たにフェアトレード商品とか酒類の取扱いもしていこう」と答弁している。
取扱店マップ「おおぶフェアトレードMAP」は、日本福祉大学付属高等学校 国際協力部の生徒が推進委員会と共に作成した。
基準6 自治体によるフェアトレードの支持と普及
議会 — 請願から決議へ
大府市議会の決議は、請願から始まっている。
| 日付 | できごと |
|---|---|
| 2025年6月25日 | 請願第1号「大府市におけるフェアトレードタウン認定に向けた決議を求める請願」を採択(全会一致) |
| 2025年6月25日 | 決議第2号「フェアトレードの理念を尊重し、その推進を支持する決議」を起立全員で可決 |
請願者は「おおぶフェアトレードタウン推進委員会代表ほか6名」。紹介議員は6名。同じ日に請願が採択され、決議が可決されている。
決議の提出者は鷹羽琴美議員、賛成者は6名(柴崎智子・小山昌子・蟹江陸孝・本田雅志・木下久子・飯尾祐介)で、議会運営委員会のメンバー7名にあたる。
決議文の結びが、他市と違う。
よって、本市議会は、大府市がフェアトレードの理念を尊重し、市民・企業・教育機関・行政が連携しながら、その普及・啓発・実践に取り組むことを支持し、あわせて、フェアトレードタウン認定の取得に向けて、市民協働による体制整備と段階的な準備を進めていくよう要望するとともに、議会としてもこの取組を積極的に後押しすることをここに決議します。
「認定の取得に向けて(中略)進めていくよう要望する」と、認定そのものを目標として書いている。そして「議会としてもこの取組を積極的に後押しする」と議会自身を主語にしている。
決議の文言は、市の政策との接続も明示している。「大府市は、『健康都市おおぶ』の理念のもと、総合計画において持続可能なまちづくりを掲げ(中略)フェアトレードの推進は、こうした市の政策とも高い親和性を持ち」。
市長 — 「健康都市おおぶフェアトレード宣言」
2025年7月29日、岡村秀人市長が「健康都市おおぶフェアトレード宣言」を行った。会場はおおぶ文化交流の杜アローブ。
宣言の名称そのものに「健康都市おおぶ」が入っている。
大府市は、「サスティナブル健康都市」の実現を目指しています。それは、未来のこどもたちや孫たちの世代に安心して暮らせるまちを託したいという想いがあるからです。(中略)
そして、大府市は、地元の恵みを大切にする地産地消、環境に配慮した消費、障がいのある方がやりがいを持って働けるようなサポートなどに力をいれています。こうした活動を通じて、人と自然にやさしい「地域のフェアトレード」の輪が広がり、地域の活性化にもつながっています。(中略)
大府市は、フェアトレードの理念を支持し、市民・事業者・学校などと力を合わせて、誰にもやさしい「サスティナブル健康都市」を育み、未来につないでいくことをここに宣言します。
大府市はWHO健康都市連合に加盟し、「健康都市」を都市像として掲げている。フェアトレードは、その枠組みのなかに置かれた。
「地域のフェアトレード」という言い方は、いなべ市の「ローカルフェアトレード(地産地消)」と同じ発想である。地産地消・環境配慮・障害者就労を、フェアトレードと同じ枠に置く。浜松市の議会決議・市長宣言も同じ構造だった。
認定委員会の評価
大府市議会の決議文および岡村秀人市長の支持表明は、大府市がフェアトレードを支持する姿勢を、健康都市、サスティナビリティ、子どもたちの未来といった、大府市が目指す都市像に関連付けて明確に表現している。また、図書館をはじめとした公共施設では指定管理団体が積極的に推進委員会と連携してイベントを開催し、市役所および市職員がフェアトレード普及に関して市民団体と連携して非常に熱心に努力を積み重ねている実態を現地調査で確認することができた。
予算 — 事業名はない
令和6〜8年度の当初予算に「フェアトレード」を冠した事業名は存在しない。
明示的に計上されたのは、令和7年度の補正予算(第7号、2025年12月議決)だけである。企画広報戦略課の「シティプロモーション事業」として、
- 報償費 37万円(認定記念式典の出演・出席謝礼、記念品等)
- 需用費 18万8,000円(記念式典の横断幕等)
記念品は「本年度作製しました大府市のオリジナルのフェアトレードコーヒー」を主に検討すると担当課長が答弁している。
令和8年度には、農業の枠で1件の記載がある。
地産地消推進事業(款6・項1・目3、所管:農業振興課)事業費 29,283千円 ◎(5)「有機農業及びフェアトレードの普及を目的としたマルシェを市役所で開催します。」
令和8年度の施政方針にも、同じ文脈で1か所だけ登場する。
市内における有機農業の更なる推進を図るため、企業版ふるさと納税による寄附金を活用し、スタートアップ企業と連携した農業体験イベント等を開催するほか、有機農業やフェアトレードの普及を目的としたマルシェを開催します。
認定の翌年度の施政方針で、フェアトレードは「認定」の文脈ではなく、有機農業施策の付随項目として1文だけ現れている。(令和6・7年度の施政方針には言及なし。)
※ 出典: 大府市 令和8年度 主要事業・施政方針/大府市議会 会議録検索システム/大府市「フェアトレードタウン」ページ/大府市 記者発表(2025年7月24日・2026年3月24日)
成果
| 指標 | 認定時(2026年2月) |
|---|---|
| 人口 | 93,175人(2025年8月31日) |
| 基準5の必要店舗数 | 9店 |
| 商業施設数(カウント数) | 11.5店 |
| 必要数に対する倍率 | 1.28倍(8市中 最低は名古屋市1.02倍) |
| 推進委員会(実働) | 7人 |
| 賛助会員 | 企業・団体17/個人23 |
| フェアトレードマルシェ | 年2回・18店舗(広報おおぶ 2025年12月号) |
| 設立から認定まで | 5年2か月 |
行政計画への位置づけ — ない
大府市には、フェアトレードの記載がある行政計画がありません。
| 計画 | 「フェアトレード」の記載 |
|---|---|
| 第6次大府市総合計画(2020〜2030年度) | 0件 |
| 第3次大府市まち・ひと・しごと創生総合戦略(2025年3月策定) | 0件 |
| 同 進捗管理報告書(2025年12月) | 0件 |
| 「健康都市おおぶ」みんなの健康づくり推進プラン2020-2030 | 0件 |
| 実施計画(令和6・7・8年度) | 0件 |
市長宣言が「健康都市おおぶフェアトレード宣言」と名づけられ、議会決議が「健康都市おおぶ」の理念に接続しているにもかかわらず、健康都市の計画文書にフェアトレードの記載はありません。
接続は宣言と決議のレベルにとどまり、計画とKPIのレベルには届いていません。
これは8市のなかで最も薄い位置づけです。
| 都市 | 行政計画への位置づけ |
|---|---|
| いなべ市 | 総合計画の基本構想 5本柱の1つ+KPI(取扱店舗数) |
| 逗子市 | 総合計画のKPI(認知度50%超) |
| 札幌市 | SDGs未来都市計画のKPI(認知度)※目標年度が2023年度のまま |
| 名古屋市 | 生物多様性なごや戦略実行計画2030に施策として位置づけ |
| 浜松市 | 戦略計画のKPIだった(2025年度に消滅) |
| 鎌倉市 | 実施計画に事業工程として記載(KPIではない) |
| 大府市 | 記載なし |
認知度 — 測っていない
大府市はフェアトレードの認知度を測っていません。
令和6(2024)年度の市民意識調査(18歳以上3,000人、回収1,403件・回収率46.8%)の報告書全文に「フェアトレード」「エシカル」「SDGs」の語は0件です。
令和8(2026)年度の調査は2026年7月31日〜8月31日に実施中です。結果の公表は2027年3月頃の予定で、フェアトレードの設問があるかは調査票が非公開のため確認できません。
認定の翌年度の調査です。設問を入れる最後の機会でした。
課題
大府市は認定から半年で、まだ最初の更新(2029年)を迎えていません。
認定委員会が認定時に明記した改善点は3つあります。
1. バランゴンバナナが「推進団体が認めるフェアトレード団体」のリストに含まれていない。
民衆交易の商材であることは確認済みですが、基準5のリストに載っていません。手続き上の不備であり、リストに追加すれば解消します。
2. 企業の組織内利用が確認できていない。
基準3の中心となる「地元企業がフェアトレード産品を組織内で利用する」事例が、現地調査で確認できませんでした。
ただし、見込みは示されています。地元の自動車部品メーカー愛三工業がCSRの一環で、自社のマルシェにフェアトレード商材を扱う店舗の出店に協力的である——という話を、認定委員会は市職員から聞いています。(同社出身の議員の関係からという説明つきです。)
3. 「いくつかの点で今後の改善が求められる」。
認定委員会が基準3の結論にこう書いています。次回更新(2029年)で問われる部分です。
公開情報から確認できる論点は、さらに2つあります。
4. 事業所への浸透。
いなべ市の事業所調査では79.2%が「今後も行う予定はない」と回答していました。大府市は事業所調査を行っていないため、比較できません。
5. 基準5の余裕が小さい。
必要9店に対して11.5店(1.28倍)。名古屋市(1.02倍)に次いで低い。人口が微増している市なので、必要店舗数は今後上がります。93,321人が10万人に達すれば、必要数は10店になります。KURUTOおおぶが令和8年度からフェアトレード商品を扱う方針であることは、この点で意味があります。
出典
- 大府市「フェアトレードタウン」 https://www.city.obu.aichi.jp/shisei/shisaku/nougyo/1038671.html (取得日 2026-08-27)
- 大府市 記者発表「健康都市おおぶフェアトレード宣言」(2025年7月24日) https://www.city.obu.aichi.jp/shisei/koho/pressrelease/1003447/1036139/1036363.html (取得日 2026-08-27)
- 大府市 記者発表「おおぶフェアトレードタウン認定記念式典・マルシェ」(2026年3月24日) https://www.city.obu.aichi.jp/shisei/koho/pressrelease/1003447/1037807/1038696.html (取得日 2026-08-27)
- 大府市 令和8年度 主要事業 https://www.city.obu.aichi.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/038/648/r8shuyoujigyou.pdf (取得日 2026-08-27)
- 大府市 令和8年度 施政方針 https://www.city.obu.aichi.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/038/648/r8shiseihoushin.pdf (取得日 2026-08-27)
- 大府市議会 会議録検索システム https://obu.gijiroku.com/voices/g07v_search.asp (取得日 2026-08-27)
- 大府市 令和7年第2回(6月)定例会 https://www.city.obu.aichi.jp/gikai/honkaigi/1034050/1034054.html (取得日 2026-08-27)
- 第6次大府市総合計画 https://www.city.obu.aichi.jp/shisei/shisaku/soukei/1002912.html (取得日 2026-08-27)
- 大府市 市民意識調査 https://www.city.obu.aichi.jp/shisei/koho/shimin_chosa/index.html (取得日 2026-08-27)
- 大府市 最新人口および世帯数 https://www.city.obu.aichi.jp/shisei/toukei_data/toukei/1003733.html (取得日 2026-08-27)
- 大府市「健康都市」 https://www.city.obu.aichi.jp/shisei/information/1010326/1020746/index.html (取得日 2026-08-27)
- 広報おおぶ 2025年12月号 https://www.city.obu.aichi.jp/shisei/koho/koho_obu/1033274/1037316.html (取得日 2026-08-27)
- おおぶフェアトレードタウン推進委員会(大府市民活動支援サイト「コラビア」) https://obu.genki365.net/G0001055/aboutus.html (取得日 2026-08-27)
- 日本フェアトレード・フォーラム「愛知県大府市」 https://fairtrade-forum-japan.org/townactivity/details/obu (取得日 2026-08-27)
- 日本フェアトレード・フォーラム プレスリリース(PR TIMES、2026年5月11日) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000026.000081541.html (取得日 2026-08-27)
- 日本フェアトレード・フォーラム「フェアトレード全国フォーラム2025 in 名古屋」 https://fairtrade-forum-japan.org/archives/4426 (取得日 2026-08-27)
【FTFJ編集部による解説】他地域への示唆
1. 学校で学んだ子どもが、家庭に持ち帰る。それが運動の起点になりうる。
大府市の申請書には、他の7市にない一文がある。
FTRCがここまで書いた7市の起点は、市民団体(熊本・名古屋・逗子)、大学教員と事業者(浜松)、行政の政策(札幌)、隣接自治体(鎌倉)、地域活性化への思い(いなべ)だった。大府市は子どもである。
この経路は、他市の施策と裏側でつながっている。名古屋市は2016年から市内全小学校の給食でフェアトレード産品を提供し、2021年から小学6年生の冬休み教材にフェアトレードのページを加えた。浜松市は年40回の出前講座と延べ285校のフェアトレード給食を続けている。鎌倉市は2022年度から給食を始めた。
学校での学びが親を動かすことがある、という事実は、給食や出前講座の効果測定として記録に値する。測るのは難しいが、大府市はその実例である。
2. 認定時に「厳密には満たしきっていない部分」を、審査報告書が明記した。
大府市の認定審査報告書には、3つの留保がある。バランゴンバナナのリスト未登録、企業の組織内利用が確認できないこと、「いくつかの点で今後の改善が求められる」こと。基準4も、5事例のうちフェアトレード産品を使うのは3事例だけである。
それでも認定された。
これは浜松市と同じ構造である。浜松市は認定時、基準5の推進店要件を厳密には満たしていなかった(実店舗を持たない3社が専門店として挙げられていた)。そして3年後、認定をきっかけに専門店が開業し、その店主が推進組織の代表になった。
FTFJは、認定を「達成の証明」だけでなく「達成を引き起こす装置」としても使ってきた。大府市の3つの留保が、2029年の更新でどうなっているか。それを追えるようにするために、留保の内容を記録に残しておく必要がある。
そして、これは審査の透明性の問題でもある。留保つきで認定したことを外に出さなければ、次に「厳密には満たしていない」地域が現れたとき、何を根拠に判断するかが分からなくなる。
3. 宣言と決議に書くことと、計画に書くことは違う。
大府市の市長宣言は「健康都市おおぶフェアトレード宣言」と名づけられている。議会決議も「健康都市おおぶ」の理念に接続している。言葉のうえでは、フェアトレードは大府市の都市像の中心にある。
だが、健康都市の計画文書(「健康都市おおぶ」みんなの健康づくり推進プラン2020-2030)に、フェアトレードの記載は1件もない。総合計画にも、総合戦略にも、実施計画にもない。
8市を並べると、位置づけの深さには階層がある。
含意は明確だ。宣言と決議は入口であって、到達点ではない。次に来るのは計画への記載であり、その次がKPIである。いなべ市は認定から6年で階層1に届いた。大府市の次の目標は、2030年度に改定される第7次総合計画になるだろう。
4. 認定の翌年が、認知度を測り始める最後の好機である。
大府市は令和8年度(2026年)の市民意識調査を、2026年7月31日〜8月31日に実施した。認定(2026年2月25日)の直後である。
この調査にフェアトレードの設問が入っていれば、認定直後の基準値が取れる。入っていなければ、次の機会は数年後になる。
逗子市は7年分、浜松市は5年分の目盛りを持っている。名古屋市は2時点、いなべ市は1時点。鎌倉市(2025年認定)と大府市(2026年認定)は、まだゼロである。
認定は、市の調査に設問を足す交渉材料として最も強いタイミングである。議会決議も市長宣言も出たばかりで、担当課の関心も高い。認定から1年以内に、市民意識調査に2問足す。これは、これから認定を目指すすべての地域に対する具体的な提案になる。
逗子市・名古屋市・浜松市の設問文は、いずれも市の公開報告書に載っている。借りて使える。
※ 文責: 内山大志