札幌学院大学は2019年10月12日、北星学園大学・北星学園大学短期大学部と同時にフェアトレード大学に認定された。北海道初、国内2番目である。
この事例が制度に残したものは、認定式の華やかさではない。認定基準1が求める「フェアトレードの普及を図る学生団体」に、大学のゼミナールは該当するのか。その問いに、認定委員会が初めて正面から答えたことである。
申請書に記された普及学生団体は「橋長真紀子ゼミナール」だった。現地調査団の判断はこうである。
現地調査団としては、「ゼミナール」は大学のフェアトレード推進組織とは認め難いと判断した。ゼミナールは、大学側の公式教育プログラムであり、当該プログラムには参加への学年的制約と共に、誰でもがゼミ生とはなり得ないという参加性において制約がありうると予想されるからである。
そして理由が、フェアトレードタウンの原理と接続されている。
フェアトレード大学運動の精神は、フェアトレードタウンと同様、ボトムアップの活動であることが基本であること、つまり学生イニシアチブを原則とすべきこと、そしてそのサークルには学生は誰もがいつでも参加でき、学生中心で民主的に運営されている(民主性テスト)ことも同時に基本原則であるべきと考えていることによる。さらに、ゼミナールの場合、担当教員が転職などで不在となると、むしろ活動の継続性が突然大きく削がれる恐れがありうる。
「担当教員がいなくなったとき、活動は続くか」——2019年に書かれたこの一文が、大学編7本の共通論点になる。
背景
起点は、1人の教員の着任である。
2016年4月、橋長真紀子教授(当時は経営学部准教授)が着任し、「橋長真紀子ゼミナール」が開設された。2016年からフェアトレードの勉強会が始まっている。
大学の4つの理念が、この活動を後押しした。「自律・人権・共生・協働」である。認定審査報告書、憲章本文、自己点検・評価報告書のいずれにも、この理念との合致が繰り返し書かれている。
大学自身の自己点検・評価報告書(2020年度版)は、こう説明している。
学内でこの活動が活発化した要因としては、フェアトレードに熱心に取り組む学生団体・教職員の存在に加え、この取り組みが本学の4つの理念いずれとも親和性が極めて高かったことが挙げられる。
時系列は次のとおりである。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2016年4月 | 橋長真紀子ゼミナール 開設。フェアトレード勉強会を開始 |
| 2018年5月 | 「学生発案プロジェクト」発足(オリジナル・フェアトレードバッグを開発) |
| 2018年7月 | 大学全体でフェアトレード大学を目指すことの合意形成(大学サイト) |
| 2018年8月 | 大学運営会議でフェアトレード大学申請準備を承認。学長が支持を表明 |
| 2018年10月 | フェアトレードサークル 設立。生協でフェアトレード産品の販売を開始(学長挨拶とプレゼンのセレモニー付き) |
| 2018年11月9日 | 経営学部学生自治会 定例会で憲章案を審議。全員賛成 |
| 2019年1月24日 | 平成30年度 第12回大学協議会で憲章を承認。同日、3者が署名 |
| 2019年2月 | 大学協議会でフェアトレード大学申請準備を承認 |
| 2019年4月3日 | FTFJへ認定申請 |
| 2019年4月15日 | 認定委員会へ審査を付託 |
| 2019年5月7日 | 第1回認定委員会(書類審査) |
| 2019年6月1日 | 札幌市がフェアトレードタウンに認定(日本で5番目) |
| 2019年6月9〜10日 | 現地調査(長坂寿久・小林尚朗 両委員) |
| 2019年6月20日 | フェアトレードサークルが大学公認団体に(→ 本文「基準1」) |
| 2019年7月19日 | 認定委員会が理事会へ審査報告 |
| 2019年9月3日 | FTFJが認定を承認 |
| 2019年10月12日 | 認定(認定式:さっぽろテレビ塔2階/北星学園大学と共催/参加約80名) |
札幌市のタウン認定(6月1日)と、2大学の同時認定(10月12日)は、同じ年である。4か月半しか離れていない。
認定式は、2大学とFTSN北海道支部の3者共催だった。台風19号の影響で道外からの参加者は来られず、FTFJ代表理事と静岡文化芸術大学の教員はビデオメッセージで参加した。同日、両大学の学長と学生団体に認定証が授与されている。
フェアトレードサークル代表(当時2年生)は、式典で「学内認知度100%を目指す」と抱負を述べた。
※ 出典: 札幌学院大学「「フェアトレード大学」認定 記念式典を開催しました」 https://www.sgu.ac.jp/news/fair_trade20191012.html /同「「フェアトレード大学」に認定」 https://www.sgu.ac.jp/news/fair_trade20190904nintei.html /日本フェアトレード・フォーラム archives/342 https://fairtrade-forum-japan.org/archives/342 /フェアトレード北海道 http://fairtrade-hokkaido.org/?p=290
主体
この大学の推進体制の中心は、学生団体ではなく「協議会」である。
フェアトレード大学推進協議会は、大学当局・フェアトレードサークル・経営学部学生自治会の三者によって設置された。2022年の更新審査報告書は、これを基準5の充足根拠として扱っている。
札幌学院大学では、大学当局、フェアトレードサークル、それに経営学部学生自治会の三者による「フェアトレード大学推進協議会」が設置されている。協議会ではどのようにフェアトレードを推進していくかが議論され、提案に基づいて推進活動が実施されている。
そして、2021年10月の協議会で提案された5項目が記録されている。
| # | 2021年の提案 | 2022年時点の状況 |
|---|---|---|
| 1 | スポーツ大会でFTボールを使用し、FT製品を景品にする | — |
| 2 | 新札幌キャンパスでフェアトレードのモーニングコーヒーを無料配布する | 実現 |
| 3 | さっぽろゆめ結晶の原料の産地スリランカを訪問する | — |
| 4 | 北星学園大学や地元の札幌市厚別区などとコラボして普及イベントを開催する | 実現途上 |
| 5 | 学生の認知度を上げるために動画を作成し活用する | 実現(大学HPに掲載) |
4は、翌2023年5月の「第1回あつべつフェアトレードまつり」として実現した。協議会の提案が2年で形になった記録である。
ただし、開催頻度には注意が必要である。2022年の審査報告書は次のように付記している。
(なお、協議会は2〜3年に1回開催の予定で、これまで開催されたのは2021年の1回である)。
2025年5月30日、オンラインで協議会が開かれている(議事録を確認)。参加者は学長、常務理事、国際交流センター長、サークル顧問・副顧問、サークルの前代表と新代表、経営学部学生自治会の前代表、国際交流課長、国際交流係長である。
静岡文化芸術大学のフェアトレード推進委員会が「年2回」であるのと比べると、開催頻度は低い。一方で、参加者に常務理事が入っている点は他大学にない特徴である。
取り組み
基準1 学生団体の大学公認と顧問教員 — この事例の核心
2019年の申請書は、普及学生団体を「橋長真紀子ゼミナール」としていた。代表者はゼミ担当教員であり、同時に顧問教員でもあった。
現地調査団は、これを認めなかった。(判断理由はリードに引用したとおり。)
しかし、代替の団体はすでにあった。2018年10月に設立された「フェアトレードサークル」である。大学は2019年2月6日付の学長名文書で、FTFJ代表理事宛に次のように伝えていた。
平成30年10月にサークル申請されている「フェアトレードサークル」が橋長ゼミナールの活動を継承し、本学の取組みの充実化を図ることが確認された。
ここで、2つ目の壁が現れる。基準1の指標は「大学から公認されている、ないし公認の申請を行っている」である。
しかし、同大学のサークルの公認を管理する「学生委員会」には、公認団体への「申請」を受け付けるという制度が存在しないため、「公認の申請を行っている」という証明が書類上できず、基準1をクリアすることができないのである。
大学のサークル公認制度は、毎月の活動状況報告書の提出と連絡会への出席を1年間続けたうえで、学生委員会が逐次判断するというものだった。設立が2018年10月なので、通常なら公認は2019年10月ごろになる。
現地調査(6月9・10日)の10日後、事態が動いた。
現地調査(6月9・10日)後の6月20日付で、フェアトレードサークルは大学の公認団体と認められたとの報告が、河西学長から胤森代表理事宛(6月27日付)に届いている。これをもって、基準1はクリアしたことになる。
大学が説明した、公認決定が4か月早まった理由はこうである。
フェアトレードサークルの前身は、実績としては、2016年以降の橋長ゼミナールでの活動、2018年5月の「学生発案プロジェクト」の発足などを発展的に引き継いできており、その点ですでに数年の実績があるため
認定審査が、大学内部の手続きを動かした事例である。
その後、サークルはどうなったか
| 2019年(認定時) | 2022年(更新1) | 2025年(更新2) | |
|---|---|---|---|
| 位置づけ | 2019年6月20日に公認 | 公認団体 | 公認団体 |
| メンバー数 | — | 14人(3年6人・1年8人) | 34人(4年8人・3年5人・2年0人・1年21人) |
| ゼミとの関係 | 大半が橋長ゼミ生 | 橋長ゼミ所属は3人のみ。他ゼミ・他学部の学生が加入 | 経済経営学科・新札幌キャンパスの学生が多い |
| 会合 | — | — | 毎週1回(対面)。議事録を作成して欠席者に共有 |
2022年の審査報告書は、この変化を明確に評価している。
以前はメンバーの大半が橋長ゼミ所属の学生だったのに対して、今年度は他のゼミや他学部の学生も加わったことで、多様性に富んだ開かれたサークルとなっている(橋長ゼミ所属の学生は3人のみ)。
2019年に認定委員会が求めた「誰もがいつでも参加できる」状態が、3年で実現している。
同時に、コロナ禍の影響も記録されている。「1人も新メンバーを獲得できなかった昨年度(2021年度)と打って変わって、今年度は8人もの新入生をリクルートすることができ」。
2025年の構成には、注意すべき数字がある。2年生が0人である。1年生21人・3年生5人・4年生8人という分布は、特定の年に加入が途切れると、2年後に運営の中核が空くことを示している。
判定:3回とも適合。
基準2 普及活動・研究教育活動 — 「3年以上」をどう数えたか
認定時、基準2にも同じ問題が現れた。
指標は「普及学生団体が3年以上にわたって継続的に普及活動を行っている」(当時)である。フェアトレードサークルは設立から1年に満たない。
今回の調査では、「フェアトレードサークル」の母体となった「橋長ゼミナール」および「学生発案プロジェクト」の活動を「フェアトレードサークル」が継承しているものと考え、それらの活動期間を含めて3年以上と判断した。
そして認定委員会は、この判断に留保を付けている。
ただし、以上のような普及活動の主体について、認定委員のなかから疑問が呈されたことを付記しておかねばならない。
今後は普及学生団体として「フェアトレードサークル」が、学内のフェアトレード普及活動の主体となっていくことを確認できたが、今後、更新審査などがあるならば、それが実現されているかどうかを確認することが必要であろう。
3年後の更新審査は、この宿題に答えている。(前項の「橋長ゼミ所属は3人のみ」の記述である。)
主な成果 — 「さっぽろゆめ結晶」
2022年の審査報告書が「特筆すべき」としたのは、学生発案の商品開発である。
「さっぽろゆめ結晶」はアルゼンチンの蜂蜜、ガーナのカカオ、スリランカのシナモンパウダー(以上フェアトレード認証素材)、それに北海道産の黒米・雑穀等を使用した、フェアトレード+地産地消、かつヴィーガンでアニマルウェルフェアにも配慮した幾重にも「エシカル」な生菓子である。
開発にあたってはクラウド・ファンディングで70万円近い資金を集め、地元の企業二社との協働で製造し、札幌市や北海道新聞、博報堂などから広報面の協力を得たことで話題を呼び、札幌のみならず北海道全体へのフェアトレードの普及に大きく貢献した。
この商品は、札幌市の事例記事にも登場する。市庁舎の売店で販売され、海外の領事館へのギフトにも使われている。大学の学生プロジェクトが、タウンの成果として数えられている。
国際的な研究連携
2020年10月、世界フェアトレード大学Webシンポジウムを北星学園大学と共催した。英ミドルセックス大学、静岡文化芸術大学が参加し、「フェアトレード大学の地域における役割」が議論された。
また、本シンポジウムの企画を機に、北星学園大学、英ミドルセックス大学との共同研究も始まり、共同論文「人をエシカル消費に向かわせるものは何か?」(2020年9月30日公刊)として結実した。
認定を起点に、国際共同研究が生まれた事例である。
判定:3回とも適合。
基準3 大学当局によるフェアトレード産品の購入・利用
| 2019年(認定時) | 2022年(更新1) | 2025年(更新2) | |
|---|---|---|---|
| 予算 | 2019年度に戦略予算として確保(2018年度はゼロ) | 年約70万円(うち約30万円を調達に充当)。2020年度から | 年72万円 + 学生の会議参加旅費10万円 |
| 主な調達 | コーヒー(海外協定校への手土産・来客用)/チョコレート/筆入れ | オリジナルFTバッグ(寄付者返礼品・協定校訪問手土産)/コーヒー・紅茶・チョコ/モーニングコーヒー無料配布/バンブーストロー・ボールペン | オリジナルFTコーヒー1,000パック(高校訪問の手土産)/FTバッグ/学内イベント用のコーヒーと菓子 |
| 所管 | 国際交流センター | 国際交流課・広報入試課・社会連携センター | 国際交流課・企画政策課 |
2019年の時点では「調達はまだ少ない」と書かれていた。3年で予算化され、部局を横断した。
2022年の審査報告書は、この広がりを基準5の根拠にも使っている。
所管の国際交流課だけでなく広報入試課、社会連携センターなども積極的に関わるようになっていて、フェアトレード推進が全学的な動きになっていることが窺われる。
判定:3回とも適合。
基準4 学内での2品目以上の販売・提供
販売箇所は、一貫して江別キャンパスの生協売店1か所である。
| 2019年 | 2022年 | 2025年 | |
|---|---|---|---|
| 仕入先 | シャプラニール/シサム工房(オリジナルバッグ) | 第三世界ショップに一本化(以前はピープルツリー、シサム工房からも) | 第三世界ショップ+シサム工房(オリジナルトートバッグ) |
| 陳列 | 店舗入口すぐ中央にコーナー。バッグ製作プロセスの掲示 | ワゴン形式のコーナー | 常設のフェアトレードコーナー。POPは生協スタッフが作成 |
| 売れ筋 | — | — | 「カレーの壺」(レトルト食品) |
新札幌キャンパスには、生協がない。
札幌学院大学は2021年度に新札幌駅近くに新札幌キャンパスをオープンさせたが、同キャンパスはビルと駐車場のみから成っていてスペースに乏しく、生協の売店を出す余裕がないという。
サークルのメンバーは新札幌キャンパスに多い。つまり、学生の多くがいるキャンパスで、フェアトレード産品を常時買うことができない。2025年の推進協議会では、常務理事から「恒常的な物販は難しいものの、学生サークルがブースを設けて販売する催事であれば可能」との生協回答が共有され、「フェアトレードウィーク」のようなイベントの企画が提案されている。
生協の仕入れルートについて、記録に値する事実がある。
生協では、2018年から、全国生協の共通仕入の仕組みとは別に、フェアトレード産品を第三世界ショップからの個別仕入ルートを確立している。
静岡文化芸術大学で「事業連合の一括調達化により独自調達が困難」と記録された問題に対し、札幌学院大学は個別仕入ルートを作って解いている。→ 大学編の横断論点
判定:3回とも適合。
基準5 憲章の策定と三者の賛同 — 静岡文化芸術大学の付帯意見の、次の年
2018年1月、認定委員会は静岡文化芸術大学の審査で、こう付帯意見を付けた。
「フェアトレード大学憲章」への署名は、本来の目的・意図として、①学友会(これに準ずる組織)、②フェアトレード普及学生団体、および③大学当局のそれぞれの代表者が行うことが望ましいと考える。
その1年後、札幌学院大学の憲章には、3者の署名がある。
原本(FTFJに提出された別添資料)を確認した。「札幌学院大学 フェアトレード憲章」の末尾、2019年1月24日の日付の下に、次の3者の署名と印がある。
- 札幌学院大学 学長
- 札幌学院大学 経営学部学生自治会 執行委員長
- 橋長真紀子ゼミナール ゼミ長
日本のフェアトレード大学で、三者署名の形が実現した最初の憲章である。
策定プロセス
憲章策定プロセスは概ね、①学生が草案を作成、②修正後に経営学部学生自治会へ、③常任理事を経て理事会へ報告、④大学協議会で承認、となっている。草案の作成は、橋長ゼミのゼミ長を中心に作成、草案は橋長教授経由で常務理事に渡され、学生たちが常務理事にプレゼンを行い、常務理事は理事会に報告を行った。
経営学部学生自治会には2018年11月頃に審議依頼があり、執行委員に憲章案を事前送付したうえで11月9日の定例会で審議、全員賛成を得ている。
承認機関は大学協議会(2019年1月24日/平成30年度第12回)。審査報告書は「大学協議会は学長の傘下にあたる教学系統の最高意思決定機関」と説明し、理事会にも報告されていることを確認している。
認定委員会が判断した論点 — 「学生自治会」をどう数えるか
札幌学院大学には5学部8学科があり、学生自治会があるのは3学部(経営・法・人文)である。しかも、
これら自治会は学部別に結成され、基本的には学部ごとに独自に運営されており、横を連携する組織はない。
憲章に署名したのは、経営学部の自治会だけである。
基準5には、「学生自治会(学友会などそれに準ずる組織)」とあり、同大学の制度上認定委員会としては、経営学部の学生自治会をもって、「それに準ずる組織」と認定した。
全学の学生自治組織が存在しない大学で、基準5をどう適用するか——その最初の判断である。
署名は、公開されていない
大学公式サイトに掲載されている憲章には、3者の署名が載っていない。末尾は「2019年1月24日/札幌学院大学」のみである(2026年8月28日確認)。学長の氏名も記載がない。
同日認定の北星学園大学は、憲章ページに三者の署名と学長名、署名日を公開している。
署名は実在する。だが、外からは見えない。
判定:3回とも適合。
所在自治体・札幌市のフェアトレードタウン運動への関与
この事例には、地理的なねじれがある。
大学の本部は江別市にある。江別市はフェアトレードタウンではない。江別市公式サイトを「フェアトレード」で検索してもヒットせず、大学連携事業の一覧にもフェアトレードを扱った事業は見当たらなかった(2026年8月28日確認)。
そして、活動の舞台はほぼすべて札幌市である。2021年4月に開設された新札幌キャンパスは、札幌市厚別区にある。
| 関与の形 | 内容 | 対応するタウン基準 |
|---|---|---|
| あつべつフェアトレードまつりの主催 | 第1回 2023年5月27日/第2回 2024年12月7日/第3回 2025年11月29日。主催は札幌学院大学と北星学園大学の2大学 | 基準2・4 |
| フェアトレードフェスタ in さっぽろへの参加 | 2017年から。2026年(6月20〜21日)は学生が活動報告を発表 | 基準2 |
| 「さっぽろゆめ結晶」の開発 | 2019年に学生が発案、2020年10月発売。FTFJの札幌市ページが連携事例として大学を名指ししている | 基準4 |
| 「さっぽろフェアトレードパンフレット」の改訂への参画 | 2026年、4年ぶりの全面改訂。中面デザインを北星学園大学・市立札幌清田高校の生徒と共同で考案・採用 | 基準2・6 |
| 戦略会議との関係 | フェアトレードタウンさっぽろ戦略会議が「あつべつまつり」に協力 | 基準1 |
「あつべつフェアトレードまつり」の体制は、記録に値する。
▼主催 札幌学院大学、北星学園大学・北星学園大学短期大学部 ▼協力 株式会社 札幌副都心開発公社、一般社団法人新さっぽろエリアマネジメント、フェアトレードタウンさっぽろ戦略会議、フェアトレード北海道 ▼後援 札幌市・札幌市教育委員会
推進組織(戦略会議)が「協力」、大学が「主催」である。札幌市の事例記事で確認したとおり、戦略会議の会員は正会員47名+サポート7名(2022年)から6団体17名(2025年)へ縮小している。その時期に、2大学主催のイベントが3年続いている。
FTFJの認定委員会は、2025年の札幌市の更新審査でこれを「新しいフェアトレードタウンとフェアトレード大学との新しいフュージョンの可能性」と評価した。
第1回(2023年5月)の規模は、大学サイトに記録されている。「昨年12月から準備を始め、当日は70名余りの学生スタッフ」「200名以上の親子連れや市民の方々が来場」「両大学の学長、厚別区長からご挨拶」。
※ 出典: 札幌学院大学「【2025年11月29日】第3回あつべつフェアトレードまつり」 https://www.sgu.ac.jp/event/ruc15l000004fjp7.html /同「第1回あつべつフェアトレードまつり 開催報告」 https://www.sgu.ac.jp/abroad/news/nv9huc0000002fhi.html /同「「さっぽろフェアトレードパンフレット」改訂への参画」 https://www.sgu.ac.jp/abroad/news/ruc15l00000iiqx0.html /日本フェアトレード・フォーラム「北海道札幌市」 https://fairtrade-forum-japan.org/townactivity/details/sapporo
成果
| 指標 | 認定時(2019年) | 更新1(2022年) | 更新2(2025年) |
|---|---|---|---|
| 学生数 | 学部2,529人(2020年5月1日) | — | 2,888人(2026年5月1日) |
| 普及学生団体 | ゼミ → サークル(2019年6月20日公認) | フェアトレードサークル | フェアトレードサークル |
| サークルのメンバー数 | — | 14人 | 34人 |
| うち橋長ゼミ所属 | 大半 | 3人 | — |
| 大学当局の年間予算 | 2019年度に戦略予算を確保(2018年度ゼロ) | 約70万円 | 72万円(+旅費10万円) |
| 販売箇所 | 生協売店1か所(江別) | 同左 | 同左(新札幌はイベント時のみ) |
| 憲章の署名者 | 3者(学長・経営学部自治会・ゼミ長) | 変更なし | 変更なし |
| 推進協議会 | — | 設置(2021年に第1回) | 2025年5月30日開催 |
| 大学の計画上の位置づけ | — | — | 国際交流委員会の年次計画に記載。認証評価で「長所」 |
認証評価での位置づけ
札幌学院大学は、2021年度の大学基準協会による認証評価で「適合」認定を受けた(認定期間 2022年4月1日〜2029年3月31日)。
「基準9 社会連携・社会貢献」の<提言>長所として、フェアトレードが明記されている。
2)学部を超えた学生や教職員が協働し「フェアトレード大学」としてさまざまな取り組みを行っている。学内での普及活動やフェアトレード製品の販売にとどまらず、企業と連携した商品開発・販売や、他大学や地域と連携した取り組みにも活動を広げている。このようなSDGsの知識・実践経験を持つことは、単に大学の社会貢献としての位置付けだけでなく、卒業生が社会で活躍するうえで、教育面からも有意義であるといえ、地域や他大学等との連携により今後も更なる発展が期待でき、評価できる。
さらに、大学基準協会は本件を「大学の長所・特色検索」データベースに単独事例として収録している(「学生・教職員の協働による地域と連携したフェアトレード活動の推進」/種別:大学評価/年度:2021年)。
フェアトレード大学認定が、第三者評価機関に「長所」として認められた記録である。認定8大学のなかで、これが確認できたのはここだけである(他校は未調査)。
認知度 — 数値はあるが、出所が示されていない
FTFJが2026年1月に公表した2度目の更新認定のお知らせに、学長コメントとして次の記述がある。
学内アンケートでは、新入生のフェアトレード認知度が8割を超えるなど、確かな手応えを感じております。
この調査の実施主体・実施時期・対象人数・設問文は、公開情報では確認できませんでした。大学サイト、自己点検・評価報告書、認証評価結果のいずれにも言及がありません。
ただし、この調査が計画されていた記録はある。2022年の更新審査報告書の「今後の活動計画」に、次がある。
・新入生対象のアンケート調査(2023年実施予定) -フェアトレードについて知っているか、札幌学院大学がフェアトレード大学であることを知っているか、等
「フェアトレードの認知」と「自分の大学がフェアトレード大学であることの認知」を分けて聞く設計になっている。これはタウン編の都市間比較表とまったく同じ構造である。設問文とnが分かれば、大学編の比較表の最初の1本になる。
※ 出典: 札幌学院大学に対する大学評価(認証評価)結果 https://www.sgu.ac.jp/information/j09tjo000005a40k-att/j09tjo00000e4l0d.pdf /大学基準協会「大学の長所・特色検索」 https://www.juaa.or.jp/case_study/detail—id-1614.html /日本フェアトレード・フォーラム archives/4607 https://fairtrade-forum-japan.org/archives/4607 ※ 公開資料。PDFの該当ページを直接確認済み(2026年8月28日)。
課題
当事者が語った課題のみを記す。
1. 新札幌キャンパスに生協がない(2022年・2025年)
学生の多くがいるキャンパスで、フェアトレード産品を常時買えない。イベント時のみである。2025年の推進協議会で、常務理事から「フェアトレードウィーク」の企画が提案されている。
2. 「フェアトレード」を冠する科目がない(2025年)
2025年の聴き取りで、「北星学園大学のような『フェアトレード』を冠とする科目はない」ことが確認されている。特定の教員のゼミ以外にフェアトレードを学べる科目設定がないかが問われ、大学側は2026年度にグローバルインターンシップ科目を開講し、一般教養科目として体験学習的に学べる形を期待していると回答している。
静岡文化芸術大学の「フェアトレード論」(毎年70名履修)、北星学園大学の「フェアトレード講座」(4単位)と比べたとき、ここが札幌学院大学の弱点である。
3. 国際交流が「留学」に偏っている(2025年)
国際交流センター長が、自ら課題を提起している。
国際交流が留学のイメージに偏りがちな現状に対し、フェアトレード活動が十分に組み込まれているか疑問を呈する。グローバル科目群についても、留学のイメージが強いと感じている。国際交流のイメージを留学だけでなく、国際問題や経済問題、地球規模の視点を提供する活動へと広げていく中で、フェアトレードが担える役割があると考えている。
フェアトレードの所管が国際交流課であることは、他の認定大学にはない特徴である。札幌市(タウン)の所管が国際課であることと同じ構造で、部局の性格が施策の形を決めている。
4. 他のサークル・学生団体との連携がない(2025年)
フェアトレードサークル以外の学生団体(ボランティア活動、子ども関係)との直接の連携は、現状ないことが確認されている。
5. 学生の変化を追跡していない(2025年)
「フェアトレード大学で学ぶことで学生に変化があったか」という問いに対し、卒業後の進路の追跡調査は行っていないと回答されている。
認証評価が「卒業生が社会で活躍するうえで、教育面からも有意義」と評価した点を、大学自身は測っていない。
6. サークルの学年構成の偏り(2025年)
2年生が0人である(4年8人・3年5人・2年0人・1年21人)。2年後に運営の中核が空くリスクがある。
出典
- 札幌学院大学「札幌学院大学フェアトレード憲章」 https://www.sgu.ac.jp/information/fairtrade.html (取得日 2026-08-28)
- 札幌学院大学「「フェアトレード大学」に認定されます」(2019年9月4日) https://www.sgu.ac.jp/news/fair_trade20190904nintei.html (取得日 2026-08-28)
- 札幌学院大学「「フェアトレード大学」認定 記念式典を開催しました」(2019年10月16日) https://www.sgu.ac.jp/news/fair_trade20191012.html (取得日 2026-08-28)
- 札幌学院大学「「フェアトレード大学」認定 記念式典」(2019年9月20日) https://www.sgu.ac.jp/news/fair_trade20190920.html (取得日 2026-08-28)
- 札幌学院大学「第1回あつべつフェアトレードまつり 開催報告」(2023年6月27日) https://www.sgu.ac.jp/abroad/news/nv9huc0000002fhi.html (取得日 2026-08-28)
- 札幌学院大学「【2025年11月29日】第3回あつべつフェアトレードまつり」 https://www.sgu.ac.jp/event/ruc15l000004fjp7.html (取得日 2026-08-28)
- 札幌学院大学「「さっぽろフェアトレードパンフレット」改訂への参画」(2026年7月14日) https://www.sgu.ac.jp/abroad/news/ruc15l00000iiqx0.html (取得日 2026-08-28)
- 札幌学院大学「フェアトレードフェスタinさっぽろ2026で活動報告」(2026年7月15日) https://www.sgu.ac.jp/abroad/news/ruc15l00000ilji5.html (取得日 2026-08-28)
- 札幌学院大学に対する大学評価(認証評価)結果 https://www.sgu.ac.jp/information/j09tjo000005a40k-att/j09tjo00000e4l0d.pdf (取得日 2026-08-28)
- 札幌学院大学 自己点検・評価報告書(2020年度) https://www.sgu.ac.jp/information/j09tjo000005a40k-att/j09tjo00000e4l0i.pdf (取得日 2026-08-28)
- 札幌学院大学 自己点検・評価年次報告書 2024-2025年度版 https://www.sgu.ac.jp/information/ruc15l0000040hmv-att/ruc15l0000040hpw.pdf (取得日 2026-08-28)
- 札幌学院大学 入学者数・在籍者数・収容定員数 https://www.sgu.ac.jp/information/j09tjo000001je2h-att/j09tjo000001jhy8.pdf (取得日 2026-08-28)
- 大学基準協会「大学の長所・特色検索」 https://www.juaa.or.jp/case_study/detail—id-1614.html (取得日 2026-08-28)
- 日本フェアトレード・フォーラム「札幌学院大学」 https://fairtrade-forum-japan.org/fairtradeuniversity/details/sgu (取得日 2026-08-28)
- 日本フェアトレード・フォーラム「6番目のフェアトレードタウン、2番目のフェアトレード大学2校が誕生!」 https://fairtrade-forum-japan.org/archives/342 (取得日 2026-08-28)
- 日本フェアトレード・フォーラム「札幌学院大学をフェアトレード大学として2度目の更新認定」 https://fairtrade-forum-japan.org/archives/4607 (取得日 2026-08-28)
- 日本フェアトレード・フォーラム「北海道札幌市」 https://fairtrade-forum-japan.org/townactivity/details/sapporo (取得日 2026-08-28)
- 日本フェアトレード・フォーラム 認定委員一覧 https://fairtrade-forum-japan.org/overview/committee-member-2-2 (取得日 2026-08-28)
- フェアトレード北海道「北星学園大学・北星学園短期大学部と札幌学院大学が2校同時にフェアトレード大学認定」(2019年12月28日) http://fairtrade-hokkaido.org/?p=290 (取得日 2026-08-28)
- 札幌学院大学フェアトレードサークル 公式サイト https://sguftcircle.wixsite.com/fairtrade2018 (取得日 2026-08-28)
- 大学プレスセンター「第3回あつべつフェアトレードまつり」(2025年11月26日) https://www.u-presscenter.jp/article/39059 (取得日 2026-08-28)
【FTFJ編集部による解説】他地域への示唆
1. ゼミは、普及学生団体ではない。2019年に引かれたこの線は、いま読み直す価値がある。
札幌学院大学の申請書は、普及学生団体を教員のゼミナールとしていた。現地調査団はこれを認めず、理由を3つ挙げた。参加に学年的制約があること。誰もが参加できるとは限らないこと。そして、担当教員が不在になれば継続性が突然失われること。
この3つ目が、大学編を通じて最も重い。
静岡文化芸術大学では、発起人の教員が退職し、期間限定プロジェクトが終わった。札幌市のタウン記事では、基準5のベースデータを支える北星学園大学の講座が、1人の教員に依存していることを記録した。そして札幌学院大学自身、フェアトレードの起点は1人の教員の着任である。
2019年の判断は正しかった。3年後の更新審査で、サークルのメンバー34人中、橋長ゼミ所属は3人になっていた。ゼミからサークルへの移行が、実際に「開かれた組織」を作った。
これから認定を目指す大学への含意は明快である。ゼミが起点でよい。だが、申請の時点でゼミから独立した学生団体に移していること。そして、その団体にゼミ外・学部外の学生が実際に入っていること。
2. 認定審査は、大学の内部手続きを動かすことがある。
札幌学院大学のサークル公認制度には、「申請を受け付ける」という手続きが存在しなかった。1年間の活動報告を経て、大学が逐次判断する形である。基準1は「公認されている、ないし公認の申請を行っている」を求めるが、そもそも申請という行為ができない。
現地調査の10日後、大学はサークルを公認した。通常より4か月早い決定である。
これは、認定制度が持つ副次的な力である。外部の基準が、大学に自分の制度を説明させ、そして動かす。フェアトレードタウンで、市議会決議や首長表明が「認定のために」行われるのと同じ構造である。
同時に、これは審査側への問いでもある。申請制度がない大学に対して、この基準はどう適用されるべきか。今回は大学が公認を早めることで解決したが、それは大学の善意に依存している。基準の指標に「公認申請の制度がない場合」の但し書きを置くかどうかは、検討に値する。
3. 学生自治会が学部別の大学では、基準5はどう適用されるか。
札幌学院大学には全学の学生自治組織がない。自治会は3学部にあり、横の連携組織もない。憲章に署名したのは経営学部の自治会だけである。
認定委員会は、これを「学生自治会(学友会などそれに準ずる組織)」の「準ずる組織」と認定した。
この判断は、実務的には妥当である。だが、記録として残しておく意味がある。憲章は大学全体を拘束する文書であり、署名したのは1学部の学生代表である。8校を書き終えた時点で、各大学がこの基準をどう満たしたかを横断的に並べる。→ 執筆キット v6 §9-11
4. 【FTFJ自身への指摘】自校の審査に、自校の教員である認定委員が加わっている。
これはFTFJの運用に関する記録であり、事例記事として書く以上、正直に記す。
橋長真紀子氏は、札幌学院大学経済経営学部教授であり、フェアトレードサークルの顧問である。同時に、2023年2月からFTFJの認定委員を務めている(FTFJ認定委員一覧に掲載)。
2025年9月23日、札幌学院大学の更新認定審査に関わる認定委員会がオンラインで開催された。参加委員のなかに橋長氏の名前がある(一次資料で確認)。
現地調査団は坂田・八木の2名であり、橋長氏は調査団には入っていない。また、認定委員会が合議体である以上、1名の参加が結論を左右したと考える理由はない。それでも、認定機関としてこれを記録し、扱いを決めておく必要がある。
FTFJの認定要領・内規に、除斥・忌避の規定があるかを確認すべきである。認定委員が所属する大学・自治体の審査から外れる手続きが明文化されていない場合、それは制度の欠落である。
これは個人の問題ではない。フェアトレード大学の認定委員には、フェアトレードの研究者・実践者が就く。その母数は小さく、認定大学の教員と重なるのは構造的に避けられない。だからこそ、重なったときにどうするかを、あらかじめ書いておく必要がある。
タウン編でも同じ論点があった。執筆キット原則8は「執筆者がその都市・大学の審査に関与する立場にある場合は、記事末尾に①FTFJ内での立場 ②当該審査への関与 を明記する」と定めている。審査そのものにも、同じ水準の開示ルールが要る。
執筆キット v6 §9 に「9-12 認定委員の除斥・忌避」として追記する。
※ 文責: 内山大志 ※ 執筆者はFTFJ代表理事であり、札幌学院大学の2度目の更新認定を行った理事会の構成員である。上記4は、その立場を明示したうえで、FTFJ自身の記録として記載している(原則8)。