13フェアトレード大学

千葉商科大学 — 学生が食堂を経営し、大学が予算をつけた

基本データ

大学
千葉商科大学
所在
千葉県
学生数(認定時)
6,342人(2023年5月1日現在/学部+大学院)
学生数(現在)
6,474人(2025年5月1日現在/学部6,179人・大学院295人)
認定日
2023年4月25日
認定順
大学 5 件目
学生団体
CUCエシカル学生クラブ
担当部署
学長事務室(2025年度から)
計画への位置づけ
記載なし
憲章
2022年6月1日 本文

千葉商科大学は2023年4月25日、日本で5番目、千葉県で初のフェアトレード大学に認定された。

この事例が他と違うのは、大学がフェアトレードにお金を出していることである。

2026年の更新審査で、認定委員はこう書いた。

総額は分からないが、今まで認証に立ち会った他の大学と比べても潤沢にFT普及やFT製品の調達に資金を支出していることがわかった(いずれも学長事務室予算による)。

その使われ方も具体的である。学食のフェアトレードコーヒーは200円(学生は160円)で提供され、その差額を大学が負担している。学生が運営する食堂には、店舗の賃料と光熱費、そして週3日・1日12時間分のアルバイト給与を大学が出している。

そしてその食堂は、フェアトレードの食堂である。

学生ベンチャー食堂「兎なり」におけるFT産品を使用した常設メニューの提供は他のフェアトレード大学でも例を見ないものであり、その意欲と行動には感服する。

認定8件のなかで、基準3(大学当局の調達)と基準4(学内での販売)が最も充実している事例である。そして、その両方を学生が動かしている。

背景

起点は、学長プロジェクトである。

2017年、原科幸彦学長(当時)の就任に伴い、4つの学長プロジェクトが立ち上げられた。会計学の新展開/CSR研究と普及啓発/安全・安心な都市・地域づくり/環境・エネルギーの4分野である。

「自然エネルギー100%大学」は、このうちプロジェクト04から生まれた。大学所有のメガソーラー発電所などの発電量と、大学の総エネルギー使用量を同量にする——日本の大学で初の試みとして、これを達成している。

フェアトレードは、プロジェクト02「CSR研究と普及啓発」から生まれた。

2017年から立ち上げられた4つの学長プロジェクトのうち、プロジェクト02「CSR研究と普及啓発」のもとで、2020年7月にエシカルクラブが設立され活動が始まった。(2023年 認定審査報告書)

つまり、環境とフェアトレードは、同じ幹から出た別の枝である。大学サイトでも「環境・エネルギーへの取組み」と「フェアトレードへの取組み」は並列のカテゴリとして置かれている。

この構造が、学生団体の位置づけを他大学と違うものにしている。

通常のサークルや部活動とは異なり、学長プロジェクト直轄の学生団体であり、学内に専用の会議場所が用意されており非常に手厚い活動環境を与えられている。そこで定例会議や活動をおこなっており(中略)会議なども原則的に学生のみでおこなっており、学生への聞き取りからは非常に独立した形で活動を行っていることが伺われた。(2023年 認定審査報告書)

時系列は次のとおりである。

時期 できごと
2017年 学長プロジェクト(4分野)発足
2018年 体育の講義・部活動で使うフェアトレード認証ボールの購入を開始
2019年7月 The University DININGのホットコーヒーをフェアトレード認証コーヒーに変更
2019年度 来客・会議用のコーヒー・紅茶をフェアトレード産品に
2019年11月 学長プロジェクトとしてフェアトレード関連の学生活動が始まる
2020年7月16日 CUCエシカル学生クラブ 設立
2020年 憲章の「調印式のようなもの」をオンラインで実施(2026年の現地調査で判明)
2021年 大学生協でフェアトレード商品の販売開始
2022年3月末 エシカルクラブの前代表・現代表を含む学生4名が憲章のたたき台を作成
2022年4月 クラブの「活動指針」が発効
2022年5月 エシカルクラブの会議で憲章草案を承認
2022年6月1日 全学部長会で承認(慎重な意見も付され、文言修正を受けて)
2022年7月13日 第3回自治会連絡会で承認
2022年8月 大学がエシカルクラブを正式に公認
2023年1月16日 FTFJへ認定申請
2023年2月27日 認定委員会へ審査を付託
2023年3月10日 現地調査(宮川・小林 両委員)
2023年3月26日 認定委員会が理事会へ審査報告
2023年4月25日 認定(日本で5番目/千葉県で初)
2023年~ 教員用のバナナペーパー製名刺を採用
2025年2月 千葉市フェアトレードタウン推進協議会にエシカルクラブが参加
2026年2月12日 更新申請書を受理
2026年4月27日 更新の現地調査(小林尚朗 団長・北澤肯 団員)
2026年6月 更新認定

認定より前に、大学の調達が始まっている。ボールが2018年、コーヒーが2019年。学生団体の設立(2020年7月)より2年早い。

※ 出典: 千葉商科大学「フェアトレードへの取組み」 https://www.cuc.ac.jp/about_cuc/activity/fairtrade/index.html /日本フェアトレード・フォーラム「千葉商科大学」 https://fairtrade-forum-japan.org/fairtradeuniversity/details/chiba-university-of-commerce

主体

CUCエシカル学生クラブは、大学の制度に深く組み込まれている。

  • 学長プロジェクト直轄
  • 学内に専用の会議場所
  • 大学からの資金的サポート
  • 担当は学長事務室(2025年度から)

同時に、この団体には規約がない。

当会に規約はないが活動方針は継続され、大学側の認定も毎年更新されているとのことである。(2026年 現地調査報告書)

「活動指針」は毎年度見直され、公認も毎年更新される。北星学園大学も規約を定めていない。強く支援されている団体と、規約を持たない団体は、両立する。

会員数の推移が、この事例で最も注意すべき数字である。

時点 会員数
2023年1月1日(認定申請時) 28名
2026年(更新申請時) 6名
2026年春(新歓後) 12名(4年1・3年1・2年6・1年4)

3年で28名から6名へ。認定委員会はこれを「懸案事項」と書いた。

人数が少ないと、例年の活動をこなすことに手一杯で、新しい企画を打ち出すことができなくなる。今春の新歓で部員が12名に増えたので、新たな取り組みにも挑戦したいとのことである。

そして、学生自身が理由を語っている。

CUCエシカル学生クラブで活動するためには、強い志が必要なのが事実である。華やかではないけれど大切な活動に献身できる学生を確保することはなかなか難しい。

認定委員会の結びは、FTFJ自身への呼びかけになっている。

そのような優れた実績を残し続けているCUCにおいても、安定的なメンバーの確保には苦労しているのが現状である。(中略)FTFJとしても協力・支援できることがないか、前向きに動いていくことを希望したい。

団体の外に、入口がある。サービス創造学部の正課授業「プロジェクト実践3C講義:エシカル講義-フェアトレードとは-」(通年)である。

実践科目ということもあり、既単位取得者の先輩も継続して後輩に引き継ぎやアドバイスを行っており、この授業をきっかけにCUCエシカル学生クラブに入部する学生もいるとのことである。

授業から団体へ、という流れは北星学園大学と同じ構造である。

取り組み

基準1 学生団体の大学公認と顧問教員

認定時(2023年):CUCエシカル学生クラブが2022年8月に大学の正式な公認団体になったことを確認。顧問は副学長と准教授の2名。判定:適合。

更新時(2026年):会員数の減少(28名→6名→12名)が懸案とされたが、大学の支援体制と学生の姿勢が評価された。顧問は交代している。

前回の認定時に今井先生と並んで中心となっていった滝澤先生は、学内の役職の交代ということでCUCエシカル学生クラブの担当ではなくなったとのことであった。

北星学園大学でも、20年務めた顧問が学内規定により交代した。担当教員の交代は、認定大学に繰り返し現れる論点である。→ 執筆キット §9

判定:2回とも適合。

基準2 普及活動・研究教育活動

認定時、認定委員会は研究面に疑問を持ち、確認している。

申請書でリストアップされていた研究一覧には、フェアトレードを論文タイトルに使ったものが見られなかったため、フェアトレードと研究との関連性が不明確と思われたが、複数の論文内でフェアトレードへの言及がなされていることを確認した。

そして、フェアトレードを冠した授業もなかった。

授業については、フェアトレードを冠した授業は無いものの、(中略)複数の先生方の授業内でフェアトレードを学ぶことができるようになっている。

代わりに評価されたのが、図書館である。

図書館にフェアトレード関連の書籍にアクセスできる特設コーナーやフェアトレード関連の映像資料が見られるよう専用の資料棚が設置されるなど、学生たちが学びやすい環境を整えている。

この特設コーナーの存在を示す公開情報は、見つかりませんでした。図書館サイトには2階に「AV資料コーナー」(視聴用ブースあり)が常設と記載されていますが、フェアトレードやSDGsとの結びつきは公開されていません。

認定後、正課授業ができた。

教育活動と実践的活動を組み合わせたものとして、正課授業「プロジェクト実践3C講義:エシカル講義-フェアトレードとは-」という科目もある。これは、サービス創造学部の滝澤淳浩先生が担当する通年科目であり、JR市川駅で店舗運営するカフェプロジェクトがメインで、それに向けておもに前期にはエシカル消費やフェアトレードなどについて学ぶというものである。

学外での活動も広がっている。

時期 活動
毎年5月 ミリオンアクションキャンペーン参加
毎年7月 CUCエシカルデイズ(映画上映、フェアトレード説明会、商品展示、フェアトレードカフェ)
毎年11月 瑞穂祭(大学祭)への出展
2025年9月 フェアトレード全国フォーラム2025 in 名古屋(パネルディスカッション登壇)
2025年11月 ワンプラネット・ペーパーフェス2025(東京)登壇
2025年12月 「イチマツmarket」出展(大学・公民館・神社の3会場)
2025年5月 鎌倉市フェアトレードタウン認定式に参加(運営支援)

「フェアトレード大学になって外部との活動も広がった」と学生は語っている。幼稚園でのバナナワークショップ、館山市のフェアトレードショップとのイベント、白馬村との地元紙上での協力。

判定:2回とも適合。

基準3 大学当局によるフェアトレード産品の購入・利用 — 8件で最も充実している

2026年時点で確認された内容を並べる。

分類 内容
価格差の補填 UDで提供するFTコーヒーを200円(学生は160円)と安価で提供し、その差額を大学が負担
学生食堂への補助 学生ベンチャー食堂に対し、設備使用・光熱費・人件費の補助によって間接的にFT産品の購入を促している
会議・来客 UDカフェのFTコーヒーポットサービスを使用
学長主催の茶話会 教職員向け・学生向けともFTコーヒーを提供
名刺 希望する教職員の名刺にバナナペーパーを使用
ノベルティ 大学キャラクターのステッカーにバナナペーパー/進呈用の巾着・トートバッグにFT認証コットン
地域スポーツ プロバスケットボールチーム「千葉ジェッツ」の大学冠試合でプレゼントする保冷バッグをFTコットンで作製(「評判が良く、販売してほしいとの声が上がっている」)
体育・部活動 フェアトレード認証ボール(サッカー・ラグビー・バレー)を購入し、学生の諸活動で貸出

予算はすべて学長事務室から出ている。

そして、この事例には率直な失敗の記録がある。

2023年(認定時)

しかし、非フェアトレードのサッカーボールなどと比べてバルブに問題があるのか空気漏れが早いことが現場から報告されているとのこと。今後は、サッカーボールなどはバルブ不具合による空気漏れの問題がクリアできれば、積極的に購入していきたいとのことであった。

2026年(更新時)

学校で使用するサッカーボール、バレーボールのFT製品使用を検討したが、前回と引き続き、バルブの欠陥により諦めざるを得なかったとのことである。

3年経っても解決していない。

この記録には、価値がある。フェアトレード産品への切り替えは、理念だけでは進まない。製品の品質が現場の使用に耐えるかどうかが、実際の障壁になる。そして、その障壁は大学の努力では越えられない。

認定時、予算の状況はこうだった。

予算については、現在はフェアトレードやエシカル用の予算はなく、通常予算の範囲内でフェアトレード産品への切り替えが行われている

3年後、認定委員会は「他の大学と比べても潤沢に」と書いた。専用の予算枠を作ったのではなく、学長事務室の予算のなかで規模が広がった。

判定:2回とも適合。

基準4 学内での2品目以上の販売・提供 — 3か所、そのうち1つは学生が経営

① The University DINING(UD)

大学の委託でトランジット・ホールディングスが運営する学食である。

特徴は、大学の関与の形にある。

大学の法人役員と教職員から構成されるUD運営委員会があり、調理・運営コストについても大学が補填している。FTコーヒーの味がいまひとつだったので、UD運営会からの要望で調達先が変更されたこともあった。

運営委員会が、味を理由に調達先を変えている。フェアトレード産品を「置くだけ」ではなく、品質で選び直している記録である。

提供メニューは、コーヒー、チョコレートラテ、カプチーノ、カフェモカ。レジ横にはフェアトレードの仕組みと意義を書いたハガキが置かれている。

② 大学生協 — 千葉大学生協との共同仕入れ

認定時、認定委員会が「これまでのフェアトレード大学では見られない特徴」と評価した工夫がある。

「トニーズ・チョコレート」の販売に当たり、千葉商科大学の生協単独では最小ロット数(700-800)の問題で購入できないところ、他の千葉県内の近隣大学、特に千葉大学の生協と共同で仕入れることで、販売の持続可能性を高めることをしたことが分かった。(中略)近隣大学にもフェアトレード産品の購入で波及効果をもった事例と言える。

最小ロットの壁は、単独の大学生協では越えられない。共同仕入れで越えた。

取扱品目は、エシカル学生クラブの要請で置かれるようになったものである。紅茶、ハチミツ、シアバターの石鹸、チョコレート、工芸品。販売用のPOPや販促活動も学生が中心になって行っている。

一方、価格の壁が記録されている。

トニーズのチョコは現在492円。昨年に430円から値上がりしたばかりであるが、また値上がるという情報もあるとのこと。もともと売り始めたときは300円台であったとのことで、500円台になると日常で学生が購入するというのは難しくなるのではないかとのことであった。

300円台 → 430円 → 492円。認定大学の生協が共通して直面している問題である。北星学園大学でも「学生の購買力が落ちている」ことを理由に紅茶の取扱いが止まっている。

③ 学生ベンチャー食堂「兎(と)なり」 — 他に例のない事例

CUCには「学生ベンチャー食堂」の制度があり、3つのうち1つを元エシカル学生クラブの学生が運営している。

食堂の看板や幟にも「フェアトレード」と明記されており、学生への周知、啓発に大きな働きをしていると見受けられた。エプロンにはシサム工房のFTコットン製のものを使用する徹底ぶりである。

運営の実態も記録されている。

  • 仕入れは、価格面に大きく影響しない食材を選ぶ(ゴマ、胡椒)
  • 試作から最終的なメニュー決定まで半年から8か月
  • エシカル学生クラブの関係学生4名を含め、学内の知り合い15人ほどをアルバイトとして雇用
  • 週3日・1日12時間分のアルバイト給与は大学が負担
  • 店舗の賃料と光熱費も大学が負担

そして、始めた動機が記録されている。「高校の時の探求プロジェクトで知った世界の貧困問題が、フェアトレードに関心をもったきっかけだった。」

認定委員会の評価は率直である。

学生ベンチャー食堂「兎なり」におけるFT産品を使用した常設メニューの提供は他のフェアトレード大学でも例を見ないものであり、その意欲と行動には感服する。

判定:2回とも適合。

基準5 憲章の策定と三者の賛同 — 署名のない憲章、その理由

千葉商科大学の憲章には、策定日も署名もない。

認定時、認定委員会はこれを指摘している。

ただし、策定した日付や策定にかかわった学生団体、大学当局などの署名がついていないため、近いうちにこれらを大学のサイトで公表したいとのことである。

3年後の更新審査で、その理由が判明した。

ウェブサイト上にあるフェアトレード憲章に日付や署名がないことについては、もともと2020年にコロナの関係で調印式のようなものをオンラインで行った経緯がある。今後検討するとのことであった。

コロナ禍のオンライン調印が、署名の残らない形になった。

憲章の起草プロセスは、明確に学生主体である。

草案は2022年3月末に、エシカルクラブ前代表と現代表を合わせた4人の学生たちがたたき台を作成し、顧問の滝澤氏と同じく顧問で副学長の今井氏によるアドバイスを受けて作成した。エシカルクラブとしては2022年5月の会議で憲章草案を承認した。

担当教員自身も、公開の場でこう語っている。「千葉商科大学フェアトレード憲章の案はすべて学生が考えました。私たち教員は内容の確認をしたくらいで、ほとんどノータッチです。」

承認の経路は2つである。

その後、2022年6月に研究教育組織の実質的な最高意思決定機関である「全学部長会」で、慎重な意見も付されたものの、文言修正を受け承認された。

そして2022年7月の第3回自治会連絡会において、自治会を含む学生組織全体で憲章草案について承認がなされた。

この自治会連絡会の議事録は、次のとおり記録している。第3回、2022年7月13日(水)12時〜14時、場所はTeams。出席者数9名、議題成立数7名、委任状0枚。議題1「千葉商科大学フェアトレード憲章について 審議承認」は、代表者7名の承認により決議された。(2026年8月30日 原本で確認)

「慎重な意見も付された」という記述は、他の大学の審査報告書には見られない。

憲章の中身は、この大学の創設者から書き起こされている。

千葉商科大学の創設者である文学博士遠藤隆吉は、1920年代における我が国の商業道徳の退廃を憂い、武士的精神の注入を通じてその回復を果たしたいと考えた。ここでいう武士的精神とは、相手を慈しむ心すなわち仁であり、根底には「卑怯なことはいけない」、「強い者は弱い者をいたわらないといけない」、「金銭よりも道徳を重んじる」という道徳観であり、行動規範である。

そして、こう接続する。

本学の建学の理念は、経済的立場の弱い生産者が作った商品を正当な価格で購入し、生産者の生活や社会の成長を支援する仕組みであるフェアトレードに合致する。

5本を書いた時点で、憲章の書き出しは5通りある。浜松市の多文化共生(静岡文化芸術大学)、大学の4つの理念(札幌学院大学)、建学の理念「人間性・社会性・国際性」(北星学園大学)、フェアトレードのキリスト教起源(青山学院大学)、そして創設者の商業道徳論(千葉商科大学)。

判定:2回とも適合。

所在自治体との関係 — 市川市ではなく、千葉市

市川市はフェアトレードタウンではない。そして、2026年の更新審査はその状況を明記している。

千葉県で初めてのFT大学認定ということで、千葉市のFTタウンの推進協議会から連携の申し出があった。また当大学が所在する市川市ではFTタウンの動きがまだないようだが、市川市総合環境課より依頼があり、エコキャンパスツアーを開催。子供達にFT講義を行った。

千葉市は令和8年度のフェアトレードタウン認定を目指し、令和7年(2025年)2月に「千葉市フェアトレードタウン推進協議会」を設置した。CUCエシカル学生クラブは、そのメンバーに選出されている。

「大学が、隣の市のタウン認定の推進組織に入っている」——他の認定大学にはない形である。

そして、認定は大学を全国のフェアトレードタウンにつないだ。

今井先生によれば、FT大学になったことで多方面から依頼が来るようになったとのことである。千葉市や市川市など近隣の行政組織を始め、逗子市や鎌倉市などのFTタウンからも協力や登壇の依頼があったとのことである。

2025年5月、エシカル学生クラブは鎌倉市のフェアトレードタウン認定式に運営支援として参加している。

市川市をフェアトレードタウンにする構想は、大学側から公開で表明されている。2023年10月の公開講座は「フェアトレード大学認定から学生と共に市川市をフェアトレードタウンへ」という題だった。登壇者には札幌市の職員2名と、千葉市のフェアトレードタウン推進グループのメンバーが招かれている。

市川市側の動きは、公開情報では確認できませんでした。

※ 出典: 千葉市「フェアトレードタウンについて」 https://www.city.chiba.jp/shimin/shimin/kokusai/fairtrade.html /千葉商科大学 CUC公開講座2023 第6回 https://www.cuc.ac.jp/sdgs/approach/la2mjk0000000eaw.html /大学ジャーナルオンライン(2025年3月14日) https://univ-journal.jp/column/2025251888/

成果

指標 認定時(2023年) 更新(2026年)
学生数 6,342人(2023年5月1日) 6,474人(2025年5月1日)
学生団体の会員数 28名 6名 → 12名(新歓後)
顧問教員 今井重男 副学長/滝澤淳浩 准教授 今井重男 理事・学長補佐/伊藤康 教授(滝澤氏は役職交代により離任)
FT専門の授業 なし(複数の授業内で扱う) 「プロジェクト実践3C講義:エシカル講義-フェアトレードとは-」(通年)
大学当局の予算 専用の予算枠なし(通常予算の範囲内) 専用枠はないが「他の大学と比べても潤沢」(学長事務室予算)
基準3の調達 ボール/来客・会議のコーヒー・紅茶 8種類以上(価格差補填/学生食堂への補助/名刺/ステッカー/巾着・トートバッグ/千葉ジェッツの保冷バッグ ほか)
販売箇所 生協+UD(2か所) 生協+UD+学生ベンチャー食堂(3か所)
憲章の署名 なし(「近いうちに公表したい」) なし(「今後検討する」)
千葉市との関係 — フェアトレードタウン推進協議会のメンバー
大学の計画への位置づけ 記載なし 記載なし

認定が、入学の理由になっている

この事例には、他の認定大学で確認できていない成果がある。

新入生のなかには、「CUCがフェアトレード大学だから入学した」、「自然エネルギー100%キャンパスだから入学した」という学生も増えているし、オープンキャンパスなどで保護者から言われることも多いとのことである。(2026年 現地調査報告書)

学長も同じ趣旨を語っている。「FT大学の現実的な成果・効果として、周辺の自治体や高校生などへの訴求効果も大きい。」

そして、認定は大学の「柱」として位置づけられ始めている。

従来からの環境問題への取り組みと並ぶCUCの柱になり始めているとのことであった。(今井理事)

静岡文化芸術大学でも、大学案内2025に「フェアトレード大学として有名なSUACへ」入学した在学生の声が掲載されていた。認定が入試広報として機能する事例は、これで2件目である。

ただし、いずれも定性的な証言であり、調査に基づく数値ではありません。

法人の計画には、書かれていない

学校法人千葉学園・千葉商科大学の公開文書を全文検索した結果は、次のとおりである(2026年8月28日確認)。

文書 「フェアトレード」の出現数
第3期中期経営計画(2024-2029) 0
事業計画(2022〜2026年度・全5年分) すべて0
2021年度 自己点検・評価報告書(126頁) 0
自己評価報告書 令和4年度(131頁) 0
大学機関別認証評価 結果 令和4年度(21頁) 0
一方、事業報告書には記載がある
2022年度 事業報告書 7
2023年度 事業報告書 12(「9.「フェアトレード大学」認定」として独立項目)
2025年度 事業報告書 1(学長メッセージ内)

認証評価は令和4年度(2022年度)に受審しており、認定(2023年4月)の直前である。自己点検・評価報告書は7年ごとで、最新は2021年度=認定前。次回は2028年度頃とみられ、認定後の自己点検記載はまだ存在しない。

この構図は、北星学園大学・青山学院大学と同じである。

大学 中期計画・事業計画 認証評価 事業報告書
静岡文化芸術大学 明記+KPI (法人評価で「特に評価する項目」) 記載あり
札幌学院大学 記載なし(委員会の年次計画に記載) 「長所」として明記 —
北星学園大学 0件 0件 0件
青山学院大学 0件 0件 1件(2021年度のみ)
千葉商科大学 0件 0件 あり(2023年度は独立項目)

5校のうち、計画文書にフェアトレードが位置づけられているのは静岡文化芸術大学だけである。

※ 出典: 千葉商科大学 中期経営計画 https://www.cuc.ac.jp/about_cuc/cuc_plan/index.html /学校法人千葉学園 事業計画・事業報告 https://www.cuc.ac.jp/chibagakuen/data/index.html /自己点検・評価 https://www.cuc.ac.jp/about_cuc/evaluation/selfcheckevaluation/index.html ※ すべて公開資料。PDFを全文テキスト化して機械検索した(2026年8月28日)。

課題

当事者および認定委員会が記録した課題のみを記す。

1. 会員の確保(2026年・最重要)

28名から6名へ。新歓で12名に回復したが、認定委員会は「安定的なメンバーの確保には苦労している」と明記した。

学生自身の言葉:「強い志が必要なのが事実である。華やかではないけれど大切な活動に献身できる学生を確保することはなかなか難しい。」

そして、認定委員会はFTFJに向けてこう書いた。「FTFJとしても協力・支援できることがないか、前向きに動いていくことを希望したい。」

2. 会議時間の確保(2026年)

部員が集まる会議の時間の確保には苦労しており、集まるのは火曜のお昼休みであるが、学生ベンチャー食堂(後述)の関係で参加できない人もいる。

食堂の運営が、団体の会議を圧迫している。成果と負担が同じ場所から出ている。

3. フェアトレード認証ボールのバルブ不良(2023年・2026年)

3年経っても解決していない。製品の品質が、切り替えの障壁になっている。

4. トニーズ・チョコレートの価格上昇(2026年)

300円台 → 430円 → 492円。「500円台になると日常で学生が購入するというのは難しくなるのではないか」(生協)

5. 憲章に署名と日付がない(2023年・2026年)

2023年に「近いうちに公表したい」、2026年に「今後検討する」。3年間、状況は変わっていない。

6. オリジナル商品の開発が未達(2026年)

FT製品を独自に開発することはまだ達成できてないが、現在バナナペーパー製のFTカルタの制作を進めているとのことである。

札の内容は固まりつつあり、絵の依頼先の伝手も確保できそうだが、コスト面の課題が残っている。

【FTFJ編集部による解説】他地域への示唆

1. 基準3を動かすのは、理念ではなく予算の置き場所である。

千葉商科大学の基準3は、8件のなかで最も充実している。価格差の補填、学生食堂への補助、名刺、ステッカー、ノベルティ、地域スポーツチームとの冠試合の景品。

それを可能にしているのは、「学長事務室の予算」である。

専用の予算枠があるわけではない。認定時には「フェアトレードやエシカル用の予算はなく、通常予算の範囲内」と記録されている。3年後、認定委員会は「他の大学と比べても潤沢に」と書いた。変わったのは枠の有無ではなく、どの部署の予算に載っているかである。

他の4校と比べると、この差ははっきりする。

大学 フェアトレード予算の所管 状況
静岡文化芸術大学 地域連携室 30万円 推進委員会を「実行委員会」として、大学予算とは別枠の支出を可能にした
札幌学院大学 国際交流課 72万円(+旅費10万円) 常務理事「さらに予算が必要であれば前向きに増額を検討する」
北星学園大学 枠なし 2020・2021年度の調達額は0円
青山学院大学 学長基本方針対応費 助成金という形で支出(2019年度に2回)
千葉商科大学 学長事務室 「他の大学と比べても潤沢」

予算が学長直下にある大学が、最も動いている。静岡文化芸術大学の「学長基本方針対応費」(青山学院大学)と学長事務室予算(千葉商科大学)は、いずれも学長の裁量で動く費目である。

これから認定を目指す大学への含意は具体的である。フェアトレードの予算を、どの部署のどの費目に置くかを、認定を目指す段階で決めておくこと。部局の通常予算に載せると、その部局の事情に左右される。静岡文化芸術大学では、入試業務のフェアトレード飲料が大学全体の財政事情でカットされた。

2. 学生に事業を持たせると、続く。ただし負担も移る。

学生ベンチャー食堂「兎なり」は、他のフェアトレード大学に例のない形である。元エシカル学生クラブの学生が運営し、看板と幟に「フェアトレード」を掲げ、エプロンもフェアトレードコットンを使い、フェアトレード食材を使った常設メニューを出している。

大学は、店舗の賃料と光熱費、そして週3日・1日12時間分のアルバイト給与を負担している。

この形が強いのは、3つの理由からである。

  • 常設メニューである。イベント的な販売ではなく、日常の食事として提供される
  • 経済的に自立している。大学が固定費を持つことで、フェアトレード食材の割高分を吸収できる
  • 学生が経営している。仕入れも、メニュー開発(試作から決定まで半年〜8か月)も、雇用も学生の判断である

同時に、代償が記録されている。エシカル学生クラブの会議時間が、食堂の運営で圧迫されている。成果が出るほど、担い手の時間は減る。

そして、この形にも属人性がある。食堂を始めたのは、高校の探求プロジェクトで貧困問題を知った1人の学生である。その学生が卒業したあと、フェアトレードの食堂として続くかどうかは、まだ分からない。

3. 最小ロットの壁は、大学が組めば越えられる。

トニーズ・チョコレートの最小ロットは700〜800個。単独の大学生協では買えなかった。千葉商科大学の生協は、千葉大学の生協と共同で仕入れることで、これを解いた。

認定委員会は「これまでのフェアトレード大学では見られない特徴であり、近隣大学にもフェアトレード産品の購入で波及効果をもった事例」と評価した。

この論点は、認定大学すべてに共通する。北星学園大学と札幌学院大学は同じ札幌市厚別区にあり、すでにイベントを共催している。共同仕入れは、その次にできることである。

FTRCが整備すべき情報の1つは、「フェアトレード産品の最小ロットと、共同仕入れの可能性」である。

4. 認定は、隣の市のタウン運動を動かしうる。

千葉商科大学は、市川市にある。市川市はフェアトレードタウンではない。

そして、千葉市が令和8年度の認定を目指して設置した「千葉市フェアトレードタウン推進協議会」に、この大学の学生団体がメンバーとして選出されている。

大学は、自分の市ではなく、隣の市のタウン運動の当事者になった。

大学編を5本書いて分かったのは、大学とタウンの関係が一様ではないことである。

大学 所在自治体 タウンとの関係
静岡文化芸術大学 浜松市(タウン) 認定式の会場。マップの共同作成。授業に市民団体が参画
札幌学院大学 江別市(タウンでない) 札幌市のイベントを主催。新札幌キャンパスは札幌市内
北星学園大学 札幌市(タウン) 授業の調査がタウン基準5のデータになった
青山学院大学 渋谷区(タウンでない) 都のプロジェクトに参画。タウン構想は進展が確認できない
千葉商科大学 市川市(タウンでない) 隣の千葉市のタウン推進協議会のメンバー。鎌倉市の認定式を運営支援

「所在自治体がタウンでない」ことは、大学が動けない理由にならない。むしろ、隣接自治体や他のタウンとの関係が広がる余地がある。

5. 【FTFJ自身への記録】理事会向けの審査報告書(簡略版)が廃止された。

2026年5月16日、認定委員会は理事会に次のように申し出た。

なお、従前は認定委員会向けの上記「(中略)現地調査報告書」のほか、理事会向けの簡略版を作成のうえご報告いたしておりましたが、その必要性が現状を鑑みて明確ではないこと、また、審査件数が増えるなかで認定委員の負担を軽減するため、割愛させて頂きたく存じます。

認定件数が増えたことによる、審査事務の簡素化である。

この変更は、事例記事の執筆にも影響する。タウン8市・大学5校を書いてきた過程で、「理事会宛の審査報告書」は最も参照頻度の高い一次資料だった。現地調査報告書より短く、基準ごとの判定が整理されているため、記録として扱いやすい。

簡略版を廃止するのであれば、現地調査報告書の側に「基準ごとの結論」を明示する書式を維持する必要がある。幸い、2026年の千葉商科大学の現地調査報告書は各基準に「(結論)」を置いており、この点は満たされている。

執筆キット §5(対応表)に、この変更を反映する。

※ 文責: 内山大志 ※ 執筆者はFTFJ代表理事であり、2026年6月の更新認定を行った理事会の構成員である。上記5は、その立場を明示したうえで、FTFJ自身の記録として記載している(原則8)。


出典

  1. 千葉商科大学「フェアトレードへの取組み」(憲章全文) https://www.cuc.ac.jp/about_cuc/activity/fairtrade/index.html (取得日 2026-08-28)
  2. 千葉商科大学「フェアトレード大学について」 https://www.cuc.ac.jp/about_cuc/activity/fairtrade/nintei/index.html (取得日 2026-08-28)
  3. 千葉商科大学「本学での取組み」 https://www.cuc.ac.jp/about_cuc/activity/fairtrade/torikumi/index.html (取得日 2026-08-28)
  4. 千葉商科大学「CUCエシカル学生クラブ」 https://www.cuc.ac.jp/about_cuc/activity/fairtrade/ethicalclub/index.html (取得日 2026-08-28)
  5. 千葉商科大学「「フェアトレード大学」に認定されました」(2023年5月8日) https://www.cuc.ac.jp/news/2023/mstsps000002wjos.html (取得日 2026-08-28)
  6. 千葉商科大学 CUC公開講座2023 第6回「フェアトレード大学認定から学生と共に市川市をフェアトレードタウンへ」 https://www.cuc.ac.jp/sdgs/approach/la2mjk0000000eaw.html (取得日 2026-08-28)
  7. 千葉商科大学「The University DININGが「FOOD MADE GOOD Japan Awards 2025」でBESTフェアトレード賞を受賞」(2025年11月26日) https://www.cuc.ac.jp/news/2025/h0f6gu000000mm85.html (取得日 2026-08-28)
  8. 千葉商科大学 SDGsポータル https://www.cuc.ac.jp/sdgs/index.html (取得日 2026-08-28)
  9. 千葉商科大学 中期経営計画 https://www.cuc.ac.jp/about_cuc/cuc_plan/index.html (取得日 2026-08-28)
  10. 学校法人千葉学園 事業計画・事業報告 https://www.cuc.ac.jp/chibagakuen/data/index.html (取得日 2026-08-28)
  11. 千葉商科大学 収容定員・在籍者数(2025年5月1日現在) https://www.cuc.ac.jp/about_cuc/outline/data/mstsps000000b0ls-att/20250501_capacity.pdf (取得日 2026-08-28)
  12. 千葉市「フェアトレードタウンについて」 https://www.city.chiba.jp/shimin/shimin/kokusai/fairtrade.html (取得日 2026-08-28)
  13. 日本フェアトレード・フォーラム「千葉商科大学」 https://fairtrade-forum-japan.org/fairtradeuniversity/details/chiba-university-of-commerce (取得日 2026-08-28)
  14. 日本フェアトレード・フォーラム「千葉商科大学をフェアトレード大学に認定」 https://fairtrade-forum-japan.org/archives/2704 (取得日 2026-08-28)
  15. 日本フェアトレード・フォーラム(プレスリリース) https://fairtrade-forum-japan.org/archives/2993 (取得日 2026-08-28)
  16. 日本フェアトレード・フォーラム「千葉商科大学をフェアトレード大学に更新認定」 https://fairtrade-forum-japan.org/archives/4801 (取得日 2026-08-28)
  17. 大学ジャーナルオンライン「学生主体でフェアトレード大学認定を実現!千葉商科大学「CUC エシカル学生クラブ」」(2025年3月14日) https://univ-journal.jp/column/2025251888/ (取得日 2026-08-28)
  18. 共同通信PRワイヤー「千葉商科大学が「フェアトレード大学」に認定」(2023年5月31日) https://kyodonewsprwire.jp/release/202305316007 (取得日 2026-08-28)

※ 2026年6月の更新認定については、FTFJのお知らせ記事以外の報道・プレスリリースは見つかりませんでした。大学もニュース/プレスリリースとしては発信しておらず、フェアトレード専用ページの更新のみです。