新潟国際情報大学は2024年11月18日、日本で6番目、日本海側で初、新潟県内の大学で初のフェアトレード大学に認定された。学生数1,295人。認定8件のなかで最も小規模な大学である。
この事例の特徴は、認定を取った主体である。
2024年の現地調査報告書は、こう書いた。
NUISは学生の自主性を重んじており、学生の活動をサポートはするが、介入は極力しないという方針である。そのため、NUIS FTの活動に大学当局等は関与しておらず、今回の申請に向けた活動も、NUIS FTが中心となっている。学生が主体となり、フェアトレード大学の申請にこぎつけた点は特筆すべきである。
他の4校では、大学当局が申請の主体だった。静岡文化芸術大学は地域連携室、札幌学院大学は学長名、青山学院大学は社会連携課、千葉商科大学は学長プロジェクト。北星学園大学では、顧問教員が申請の主体だった。新潟国際情報大学では、学生団体が申請を組み立てた。
そして、その過程には反対があった。
当初、2021年に申請の話が出たときに、学内から時期尚早ではないかとの声があり、憲章を掲げるならば学内のフェアトレード機運を高めようということで、NUIS FTの学生たちが学内向けレポート(「NUIS FTの活動の軌跡とフェアトレード大学憲章への賛同のお願い」)をメールで配信するなどした。
学生が、学内世論をつくって申請にたどり着いた事例である。
背景
起点は、ゼミである。
同団体は2017年に山田ゼミメンバーを母体として同好会として設立された。(中略)そもそもはNUISをフェアトレード大学にするために活動を開始した。
「フェアトレード大学になるために作られた団体」である。これは、他の5校にない出自である。静岡文化芸術大学のりとるあーす(2011年)、札幌学院大学のフェアトレードサークル(2018年)、北星学園大学の北星フェアトレード(2005年)、青山学院大学のフェアトレード・ラボ(2008年)、千葉商科大学のCUCエシカル学生クラブ(2020年)は、いずれも認定を目的として設立されたわけではない。
そして、認定に7年かかっている。FTFJ代表理事は、認定にあたってこうコメントした。
2017年に同好会として活動が始まり、新型コロナウイルスによる困難な影響を挟みながら、7カ年の期間を揺るぎない熱意と行動力で取り組まれたことに、心より敬服しております。
転機は、2022年8月の視察である。
2022年8月に学生3名と山田教授が青山学院大学に視察に行ったことで、モチベーションが一気に上がったとのことである。
すでに認定されている大学を、これから目指す大学が訪ねる。この横展開が、実際に機能した記録である。→ 執筆キット §9
憲章の作り方も、同じ発想だった。
憲章案はNUIS FTの学生が既存の3つのフェアトレード大学の憲章を参考にしてベースを作成し、山田教授が建学の理念なども踏まえて修正し、策定された
時系列は次のとおりである。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2017年7月 | 山田ゼミのメンバーを母体に、同好会「NUIS FT」設立(目的:NUISをフェアトレード大学にすること) |
| 2019年3月11日 | 学生委員会で公認団体への昇格を承認(議事録で確認) |
| 2019年4月 | 公認団体として本格始動 |
| 2019年3月 | にいがたフェアトレード推進委員会が、新潟市議会選挙の立候補者にフェアトレードに関する政見調査を実施 |
| 2020年2月〜 | 大学事務局:教職員の名刺にバナナペーパーを導入 |
| 2021年 | 申請の話が出るが、学内から「時期尚早ではないか」との声 |
| (その後) | NUIS FTが学内向けレポートをメールで配信(大学の地域連携委員会が内容を確認) |
| 2021年7月〜 | 学内売店 shop JOY でフェアトレード産品の販売開始 |
| 2021年11月〜 | 大学事務局:総務課が管理する教職員用コーヒーにフェアトレードコーヒーを導入 |
| 2022年9月25日 | SDGs World in NIIGATA 2022 に出店 |
| 2022年10月5日〜19日 | 1年ゼミ12ゼミを対象とした貿易ゲームを実施 |
| 2022年8月 | 学生3名と山田教授が青山学院大学を視察 |
| 2024年5月17日 | フェアトレード大学憲章 制定(学長 越智敏夫 署名) |
| 2024年6月5日 | 全学教授会に学生委員会から報告 |
| 2024年8月27日 | FTFJへ認定申請。同日、認定委員会へ付託 |
| 2024年10月31日 | 現地調査(坂田 団長・小林 団員/1日) |
| 2024年11月15日 | 認定委員会が認定を妥当と判断。理事会へ報告 |
| 2024年11月18日 | 認定(日本で6番目/日本海側で初) |
| 2024年12月28日 | FTFJがPR TIMESで公表 |
| 2025年1月24日 | 認定式(みずき野キャンパス 国際交流センター) |
| 2026年2月28日 | セミナー「フェアトレード 新潟の10年 これからの10年」に登壇(中央キャンパス。三条商業高校・新潟県立大学の学生とともにパネルディスカッション) |
※ 出典: 新潟国際情報大学「フェアトレード大学認定の取り組みと活動について」 https://www.nuis.ac.jp/fairtrade/ /同「日本海側初のフェアトレード大学に認定されました」 https://www.nuis.ac.jp/44907-2/ /日本フェアトレード・フォーラム「新潟国際情報大学」 https://fairtrade-forum-japan.org/fairtradeuniversity/details/niigatakokusaijyouhou
主体
NUIS FTは、大学の委員会によって公認されている。
学生委員会は両学部の専任教員若干名と学務課長で構成される委員会組織であり、公認団体の承認や予算配分などを決定する大学の委員会である。
そして、大学は介入しない。
NUISは学生の自主性を重んじており、学生の活動をサポートはするが、介入は極力しないという方針である。
顧問教員の役割も、その方針に沿っている。
山田教授は、現在も顧問としてNUIS FTの活動をサポートしている。特にコロナ後、活動が停滞した際には、主要メンバーに対するヒアリングや励ましを行うなどして、学生の自主的な活動をサポートしてきた。
「ヒアリングと励まし」——これが顧問の仕事として記録された唯一の事例である。
同時に、認定委員会はこの構造の弱点も指摘している。
NUISにおける活動はNUIS FTの活動に偏っている印象はあるものの、認定のために必要な要件は満たしていると考える。(基準2の結論)
「大学が介入しない」ことは、学生の主体性を守ると同時に、大学の関与を薄くする。
なお、顧問教員の氏名は、大学サイトにもFTFJサイトにも報道にも記載がない。認定式を報じた記事にFTFJ代表理事の「担当の先生をはじめ、学生の皆さんの継続的な活動が実を結んだ」という発言があるが、氏名は出ていない。8件のなかで、顧問教員が公開されていないのはこの大学だけである。
取り組み
基準1 学生団体の大学公認と顧問教員
2017年に同好会として設立、2019年3月11日に公認団体へ昇格。議事録で確認されている。判定:適合。
この大学の学生団体は、目的を持って作られた。「そもそもはNUISをフェアトレード大学にするために活動を開始した。」そして、認定を得たあと、活動の重心が移っている。
近年は、基準2のリストに示すように認定だけではなく、学内での普及啓発活動そのものを積極的に行っている。コロナによる停滞はあったものの2023年度・2024年度は活発な活動が展開されている。
「認定を目的に作られた団体が、認定後に何をするか」は、この事例の次の3年の焦点である。
基準2 普及活動・研究教育活動 — 貿易ゲームと、研究の不在
この大学の普及活動の中心は、1年生への「貿易ゲーム」である。
貿易ゲームは、NUIS FTが1年生向けの全ゼミに呼びかけて実施しており、当日のファシリテートも担当している。2023年度は国際学部の全ゼミ(7ゼミ)、経営情報学部の12ゼミ中7ゼミが貿易ゲームを実施した。
学生団体が、正課のゼミに入って授業を担当している。19ゼミ中14ゼミである。
FTFJの公式サイトには、年間の活動サイクルが記載されている。
1年生を対象とした「貿易ゲーム」を前期・後期にわたり毎年開催しているほか、フェアトレード産品の試食会(4月、1月)、クリスマス会(12月)、大学祭「紅翔祭」での商品販売(10月)、全学年に向けたフェアトレード講習会(6月)などを定例的に実施しています。
一方、研究活動については率直な記録がある。
研究活動については、具体的な事項は見られなかった。しかしながら、同大学の国際学部の教員による途上国関連の研究等は数件存在するとのことであった。次回更新時にはこのような活動を網羅して掲載するよう依頼した。
基準2の指標(2)は「フェアトレードに関する研究・教育活動が推進・推奨されている」である。認定委員会は、教育活動(貿易ゲーム)で基準を満たすと判断し、研究については次回への宿題とした。
千葉商科大学でも同じことが起きている。「申請書でリストアップされていた研究一覧には、フェアトレードを論文タイトルに使ったものが見られなかった」(2023年)。フェアトレードの専門研究者がいない大学で、基準2の指標(2)をどう評価するかは、繰り返し現れる論点である。→ 執筆キット §9
判定:適合。
基準3 大学当局によるフェアトレード産品の購入・利用 — 金額が記録されている
確認されたのは2点である。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 職員用コーヒー | 2021年11月から一部をフェアトレードコーヒーに。2023年実績で80袋(20kg)=約81,000円。2024年も同様のペース |
| 教職員の名刺 | バナナペーパーの使用を認めている(2020年2月〜)。実際に発注している教員は3名。職員の利用は現状ではまだない |
8件のなかで、調達額が金額で記録されているのは北星学園大学とこの大学だけである。
| 大学 | 年度 | 調達額 |
|---|---|---|
| 北星学園大学 | 2019年度 | 7,236円 |
| 北星学園大学 | 2020・2021年度 | 0円 |
| 北星学園大学 | 2022年度 | 88,200円 |
| 新潟国際情報大学 | 2023年 | 約81,000円 |
名刺の実績が「教員3名、職員は0名」と記録されているのも、この大学だけである。静岡文化芸術大学では2021-23年度でのべ85名・10,800枚が使われている。制度として認めることと、使われることは別である。
判定:適合。
基準4 学内での2品目以上の販売・提供 — 価格まで記録されている
販売箇所は2つ。いずれも有限会社ヌイス(大学が所有する会社)の運営である。
売店「shop JOY」
2021年からフェアトレードコーナーが設置されている。
| 品目 | 銘柄 | 価格 |
|---|---|---|
| コーヒー | アートコーヒーのドリップバッグ | 1つ110円(5つで517円) |
| 紅茶 | クリッパーのティーバッグ3種(イングリッシュ・ブレックファースト/アールグレイ/サマーベリー) | 1つ60円(2つで100円) |
| トートバッグ | — | — |
そして、売り方に工夫がある。
横に設置されているポットのお湯を利用して、購入者がその場で飲むこともできる。(中略)その場で飲む際は、紙コップが無料で提供される。
60円の紅茶をその場で飲める。認定大学の生協で「フェアトレード商品は高い」という声が繰り返し記録されているなかで、この価格帯は例外的である。
参考までに、千葉商科大学の生協ではトニーズ・チョコレートが492円で「500円台になると日常で学生が購入するというのは難しくなる」と記録されている。
喫茶「CONTINUE(コンティニュー)」
通常のコーヒー以外にフェアトレードコーヒーが提供されており、通常のコーヒーの価格(110円)に10円上乗せすることで、フェアトレードコーヒーを選択できる。
110円か、120円か。10円で選べる。
青山学院大学では、大学が助成金を出して価格差を埋めた。千葉商科大学では、大学が差額を負担して200円(学生160円)で提供している。新潟国際情報大学では、10円の差を学生が払う。
そして、この売り場に学生が関わっている。
学内の店舗の運営者である有限会社ヌイスの担当者は、学生の自主性を極力重んじたいとの考えで積極的に学生の意見を聞いている。そのなかで、2022年、2023年には学内の喫茶コンティニューにおけるフェアトレードコーヒーとクッキーやチョコレートのセットメニューの提案などは学生が行ったものである。また、フェアトレードのスパイスを活用したカレーやガパオライスの提供なども議論している。この他、キャンパス内での販売について、学内売店JOYに対する提案、POPの作成などを実施している。
大学が所有する会社が売り場を運営し、学生が商品を提案する。大学生協でも、外部委託でもない、第3の形である。
判定:適合。
基準5 憲章の策定と三者の賛同 — 「時期尚早」からの3年
憲章の承認経路は、次のとおりである。
フェアトレード憲章については、NUIS FTが策定し、学友会の賛同を経て、全学教授会および常務理事会の承認を得たものである。
そして、そこに至るまでに3年かかっている。
当初、2021年に申請の話が出たときに、学内から時期尚早ではないかとの声があり、憲章を掲げるならば学内のフェアトレード機運を高めようということで、NUIS FTの学生たちが学内向けレポート(「NUIS FTの活動の軌跡とフェアトレード大学憲章への賛同のお願い」)をメールで配信するなどした(大学の地域連携委員会が内容は確認した)。
「時期尚早」という反対に対して、学生は学内世論をつくることで応えた。
そして、外部の事例が背中を押した。
また、2022年8月に学生3名と山田教授が青山学院大学に視察に行ったことで、モチベーションが一気に上がったとのことである。
憲章そのものも、他大学を参照して作られている。
憲章案はNUIS FTの学生が既存の3つのフェアトレード大学の憲章を参考にしてベースを作成し、山田教授が建学の理念なども踏まえて修正し、策定されたとのことである。
承認は円滑だった。
学友会の全学委員会ではとくに意見なく承認された。全学教授会からも、憲章案について文言に関する提案はあったが、とくに異議はなかったとのことである。常務理事会からもすんなり承認された。
認定委員会の結論は、この事例の性格を明確に言い当てている。
策定過程は学生主導の色彩が濃く、学生の今後の活動が期待できる。また、それをサポートしようと大学当局側が支援した姿勢も評価できる。
憲章の本文は、大学の理念から書き起こされている。
新潟国際情報大学は、「情報社会を先導し、国・地域・人の文化を尊重しつつ、国や地域を超えて、人類の福祉向上に貢献する」ことを理念の一つとしています。(中略)フェアトレードを推進することは本学建学の理念と合致します。
そして、地域への広がりを明記している。
国際的な幅広い交流を目指して、私たちは新潟国際情報大学から新潟県へ、世界へと力強くフェアトレードを広めていきます。
憲章の日付は2024年5月17日、署名者は学長ひとりである。
6本を書いた時点で、憲章には6つの型が並んだ。
| 大学 | 署名 | 承認機関 |
|---|---|---|
| 静岡文化芸術大学 | 学長のみ | 大学運営会議・教育研究審議会・両学部教授会 |
| 札幌学院大学 | 3者 | 大学協議会 |
| 北星学園大学 | 3者 | 大学評議会 |
| 青山学院大学 | なし | 学部長会・文化連合会・学友会運営委員会 |
| 千葉商科大学 | なし(2020年にオンライン調印式) | 全学部長会・自治会連絡会 |
| 新潟国際情報大学 | 学長のみ | 学友会(賛同)→ 全学教授会 → 常務理事会 |
新潟国際情報大学は、唯一「常務理事会」まで通している。
判定:適合。
所在自治体・地域との関係 — 卒業生がつくった推進委員会
新潟市はフェアトレードタウンではない。そして、この事例には他にない接続がある。
学外での活動については、にいがたフェアトレード推進委員会の岡田氏・佐藤氏はNUISの卒業生であり、定期的に交流を行っている。年に1〜2回は同会の参加するイベントにNUIS FTも出展している。
「にいがたフェアトレード推進委員会」は、ミッションに次を掲げている。
短期的・中期的には、新潟市のフェアトレードタウン認定を目指します。
FTFJの「日本各地のフェアトレードタウン運動」ページにも、新潟市(にいがたフェアトレード推進委員会)が掲載されている。
つまり、この大学の卒業生が、所在都市のタウン運動を担っている。
その委員会は、2019年3月に新潟市議会選挙の立候補者へ政見調査を行っている。設問は7問(フェアトレードの認知度、関心度、関連語、関わり方、フェアトレードタウンの認知度・目標への関心、自由記述)で、候補者の氏名と回答が実名で公開されている。
認定大学の周辺で、市議会議員候補への調査が行われた事例は、これだけである。
ただし、同委員会のサイトは2019年3月30日の投稿を最後に更新が止まっている(2026年8月28日確認)。
新潟県内では、他の動きも始まっている。
- 新潟県立三条商業高等学校が、FTFJの「フェアトレードスクール」に登録(全国9番目)
- 2026年2月28日、セミナー「フェアトレード 新潟の10年 これからの10年」が新潟国際情報大学中央キャンパスで開催され、三条商業高校・新潟国際情報大学・新潟県立大学の学生がパネルディスカッションに登壇
- 佐渡市佐渡島でも「さどをフェアトレード・アイランドにしよう会」が活動(FTFJ掲載)
なお、新潟市と大学はSDGs推進の連携協定を締結している(令和4年9月29日)。ただし、市の連携ページに「フェアトレード」の記載は1件もない。
※ 出典: にいがたフェアトレード推進委員会 http://www.ft-niigata.info/ /同「フェアトレードに関する政見調査」(2019年3月30日) http://www.ft-niigata.info/archives/607 /日本フェアトレード・フォーラム「日本各地のフェアトレードタウン運動」 https://fairtrade-forum-japan.org/townactivity/details /新潟市「新潟国際情報大学との連携」 https://www.city.niigata.lg.jp/shisei/seisaku/jigyoproject/sdgs_miraivision/sdgs_keihatsu/sdgs_kokusaijoho.html
成果
| 指標 | 認定時(2024年) |
|---|---|
| 学生数 | 1,295人(2024年5月1日)/収容定員1,000人 |
| 学生団体 | NUIS FT(2017年設立/2019年3月11日公認) |
| 顧問教員 | 山田裕史 教授(氏名は公開されていない) |
| 大学当局の調達 | 職員用コーヒー 約81,000円/年(2023年実績80袋・20kg)/名刺のバナナペーパー(発注教員3名・職員0名) |
| 販売箇所 | 売店JOY(2021年〜)/喫茶CONTINUE(+10円でFTを選択可) |
| 貿易ゲーム | 19ゼミ中14ゼミ(2023年度/国際学部7・経営情報学部7) |
| 研究活動 | 「具体的な事項は見られなかった」(次回更新時への宿題) |
| 憲章の署名 | 学長のみ(2024年5月17日) |
| 中期計画への位置づけ | 記載なし(第Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ期とも) |
大学自身が、率直に総括している
この事例で最も参照価値が高いのは、大学が自分で書いた総括である。
令和6年度 年度報告書「3)SDGs 教育の構築・推進」(第Ⅱ期総括)
フェアトレード大学に認定され、積み重ねてきたSDGs活動の成果が実を結んだが、全学的・組織的なSDGs教育については、2023年度の新カリキュラムに反映されておらず、ごく一部の教員がゼミ等で実施するなど限定的なものであった。
【2020〜2024年度の総括】 2024年度にフェアトレード大学として認定されたことは、大きな成果であったが、SDGs教育としては、全学的・組織的なものではなく限定的なものであった。SDGsの達成目標は2030年のため、今後の活動計画は検討が必要である。
同じ指摘は、認定の2年前から繰り返されている。
令和4年度・令和5年度 年度報告書(ほぼ同文)
SDGs教育の一環として実施されてきたフェアトレード大学認定に関しては、JOY及びコンティニューでフェアトレードに関する商品の販売がおこなわれ、認定申請に向けた活動があった。しかし、全学的・組織的なSDGs教育については新カリキュラムにも反映されておらず、ごく一部の教員がゼミ等で実施しているにすぎない。早急に何らかの対策が必要である。
大学は、認定を「大きな成果」と評価しつつ、それが全学に届いていないことを自分の言葉で記録している。
そして、第Ⅲ期中期計画(2025〜2029年)には、フェアトレードもSDGsも記載がない。(全文検索で確認。2026年8月28日)
この落差は、他の4校とも共通する。
| 大学 | 中期計画・事業計画 | 認証評価 |
|---|---|---|
| 静岡文化芸術大学 | 明記+KPI | (法人評価で「特に評価する項目」) |
| 札幌学院大学 | 記載なし | 「長所」として明記 |
| 北星学園大学 | 0件 | 0件 |
| 青山学院大学 | 0件 | 0件 |
| 千葉商科大学 | 0件 | 0件 |
| 新潟国際情報大学 | 0件(第Ⅲ期はSDGsも0件) | 0件 |
認定後の情報発信が止まっている
大学サイトのフェアトレード関連ニュースは、2025年1月31日(認定式の開催報告)が最後である(2026年8月28日時点で全件確認)。常設ページのみが2026年6月17日に更新されている。
報道も、2025年2月の新潟日報が最後である。
一方、学生団体は活動している。2026年5月20日更新の大学公式クラブ一覧に公認団体として掲載され、2026年2月28日のセミナーにも登壇している。
「活動は続いているが、発信されていない」状態である。
※ 出典: 新潟国際情報大学 中期計画・年度報告書 https://www.nuis.ac.jp/university_annai/ /自己点検・評価 https://www.nuis.ac.jp/jihee/ /事業報告書(令和6年度) https://www.nuis.ac.jp/pub/common/pdf/2025/houkoku.pdf ※ すべて公開資料。PDFを全文テキスト化して機械検索した(2026年8月28日)。
課題
当事者および認定委員会が記録した課題のみを記す。
1. 活動がNUIS FTに偏っている(2024年・認定委員会)
NUISにおける活動はNUIS FTの活動に偏っている印象はあるものの、認定のために必要な要件は満たしていると考える。
「大学は介入しない」という方針の裏面である。
2. 研究活動が確認できなかった(2024年・認定委員会)
研究活動については、具体的な事項は見られなかった。(中略)次回更新時にはこのような活動を網羅して掲載するよう依頼した。
3. 全学的・組織的なSDGs教育になっていない(大学自身の総括)
令和4年度から令和6年度まで、3年続けて同じ指摘が大学の年度報告書に書かれている。「ごく一部の教員がゼミ等で実施しているにすぎない。早急に何らかの対策が必要である。」
4. 名刺の利用が広がっていない(2024年)
教職員用の名刺としてバナナペーパーの使用を認めている。実際に発注している教員は3名である。職員の利用は現状ではまだない。
5. 情報発信が止まっている(2025年1月以降)
大学サイトのニュースは2025年1月31日が最後。第Ⅲ期中期計画にも記載がない。
出典
- 新潟国際情報大学「フェアトレード大学認定の取り組みと活動について」(憲章全文) https://www.nuis.ac.jp/fairtrade/ (取得日 2026-08-28)
- 新潟国際情報大学「日本海側初のフェアトレード大学に認定されました」(2024年12月25日) https://www.nuis.ac.jp/44907-2/ (取得日 2026-08-28)
- 新潟国際情報大学「フェアトレード大学認定記念事業を開催しました」(2025年1月31日) https://www.nuis.ac.jp/45397-2/ (取得日 2026-08-28)
- 新潟国際情報大学 クラブ・サークル一覧 https://www.nuis.ac.jp/campus_club/ (取得日 2026-08-28)
- 新潟国際情報大学 中期計画・年度報告書 https://www.nuis.ac.jp/university_annai/ (取得日 2026-08-28)
- 新潟国際情報大学 自己点検・評価 https://www.nuis.ac.jp/jihee/ (取得日 2026-08-28)
- 学校法人新潟平成学院 事業報告書(令和6年度) https://www.nuis.ac.jp/pub/common/pdf/2025/houkoku.pdf (取得日 2026-08-28)
- 新潟国際情報大学 教員紹介(山田裕史) https://www.nuis.ac.jp/teacher_yamada/ (取得日 2026-08-28)
- 日本フェアトレード・フォーラム「新潟国際情報大学」 https://fairtrade-forum-japan.org/fairtradeuniversity/details/niigatakokusaijyouhou (取得日 2026-08-28)
- 日本フェアトレード・フォーラム「1月24日 新潟国際情報大学フェアトレード大学認定記念事業」 https://fairtrade-forum-japan.org/archives/4016 (取得日 2026-08-28)
- 日本フェアトレード・フォーラム「『フェアトレード 新潟の10年 これからの10年』セミナー登壇報告」 https://fairtrade-forum-japan.org/archives/4667 (取得日 2026-08-28)
- 日本フェアトレード・フォーラム「日本各地のフェアトレードタウン運動」 https://fairtrade-forum-japan.org/townactivity/details (取得日 2026-08-28)
- PR TIMES「新潟国際情報大学を国内6大学目となるフェアトレード大学に認定」(2024年12月28日) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000081541.html (取得日 2026-08-28)
- にいがたフェアトレード推進委員会 http://www.ft-niigata.info/ (取得日 2026-08-28)
- にいがたフェアトレード推進委員会「フェアトレードに関する政見調査」(2019年3月30日) http://www.ft-niigata.info/archives/607 (取得日 2026-08-28)
- 新潟市「新潟国際情報大学との連携」 https://www.city.niigata.lg.jp/shisei/seisaku/jigyoproject/sdgs_miraivision/sdgs_keihatsu/sdgs_kokusaijoho.html (取得日 2026-08-28)
報道
- NST新潟総合テレビ「新潟国際情報大学”フェアトレード”認定!開発途上国の商品を適正価格で輸入 理解・浸透に取り組む」(2025年1月24日) https://news.nsttv.com/post/20250124-00000014-nst/
- BSN新潟放送「日本海側では初めての『フェアトレード大学』に 新潟国際情報大」(2025年1月27日) https://newsdig.tbs.co.jp/articles/bsn/1690404
- にいがた経済新聞「【国内6番目の認定】新潟国際情報大学でフェアトレード大学の認定式」(2025年1月27日) https://www.niikei.jp/1398110/
- 新潟日報「新潟国際情報大学が全国6番目の『フェアトレード大学』認定 大学祭の普及イベントや商品通年販売が評価」(2025年2月6日) https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/551711
- UX新潟テレビ21(2025年1月/リンク切れで内容を確認できませんでした)
※ 2025年2月以降、この大学のフェアトレードに関する報道は見つかりませんでした。
【FTFJ編集部による解説】他地域への示唆
1. 認定は、学生だけでも取れる。ただし、その先が問題になる。
新潟国際情報大学の申請は、学生団体が組み立てた。認定委員会は「大学当局等は関与しておらず(中略)学生が主体となり、フェアトレード大学の申請にこぎつけた点は特筆すべきである」と記録した。
そして、学内には反対があった。2021年、「時期尚早ではないか」という声に対して、学生は憲章への賛同を求める学内向けレポートを全学にメール配信した。大学の地域連携委員会が内容を確認したうえでの配信である。
これから認定を目指す学生団体への、最も実務的な助言がここにある。
同時に、この形には代償がある。認定委員会は「NUISにおける活動はNUIS FTの活動に偏っている」と書いた。そして大学自身が、認定の翌年に「全学的・組織的なSDGs教育としては限定的なものであった」と総括している。
学生が取った認定を、大学がどう受け取るか。それが、この事例の次の3年の主題である。
2. 認定大学の視察は、制度の実装を早める。
2022年8月、新潟国際情報大学の学生3名と顧問教員が青山学院大学を視察した。その1年3か月前、青山学院大学は認定を受けている(2021年5月14日)。
そして、憲章そのものも既存3大学のものを参照して作られている。
これは、FTRCが目指す「事例の横展開」が、記事より前に、人の移動として実際に起きていたことを意味する。
2024年11月、青山学院大学の更新審査で、認定委員会は理事会に付帯意見を出した。「フェアトレード大学やフェアトレードタウンの実践例を、事例集としてまとめ、学内で普及促進を拡大させていこうとする大学が参考にできるようにすべきである。」
視察は、行ける人だけが行ける。事例集は、誰でも読める。
FTRCが整備すべきものの1つは、「認定を目指す大学のための、認定校訪問の窓口」である。8校のうち、どの大学が訪問を受け入れられるかを整理し、FTFJが仲介する。→ 執筆キット §9
3. 価格の壁は、売り方で下げられる。
認定大学の生協・売店では、「フェアトレード商品は高い」という声が繰り返し記録されている。
新潟国際情報大学の売店は、この壁を売り方で下げている。
単価の低い品目を選び、その場で消費できるようにする。これは、大学が予算で価格差を埋める方法(青山学院大学の助成金、千葉商科大学の差額負担)とは別の解である。
そして、この売り場は学生が動かしている。セットメニューの提案、POPの作成、売店への商品提案。運営するのは大学が所有する会社であり、その担当者は「学生の自主性を極力重んじたい」という考えで学生の意見を聞いている。
4. 卒業生が、地域の運動を担うことがある。
「にいがたフェアトレード推進委員会」の共同代表2名は、この大学の卒業生である。同委員会は新潟市のフェアトレードタウン認定を目標に掲げ、2019年には市議会議員候補への政見調査を実施して結果を実名で公開している。
大学が地域のタウン運動を支える形は、これまで3通り確認されてきた。
4つ目は、最も時間がかかり、最も長く続きうる形である。
そして、この事例は次の段階に入りつつある。2026年2月、新潟県立三条商業高校(フェアトレードスクール)と新潟県立大学の学生が、この大学のキャンパスでパネルディスカッションに登壇した。高校・大学・市民団体・卒業生が、県内で同時に動いている。
5. 【FTFJ自身への指摘】認定を告知するお知らせ記事が、FTFJサイトに存在しない。
新潟国際情報大学の認定(2024年11月18日)を告知するFTFJのお知らせ記事は、公開情報の調査で見つかりませんでした。FTFJによる公表はPR TIMES(2024年12月28日)で行われている。
FTFJサイトにあるのは、認定式を報じた記事(archives/4016)と、2026年のセミナー登壇の報告(archives/4667)の2本である。
他の認定にはお知らせ記事がある。青山学院大学(archives/1737)、千葉商科大学(archives/2704, 2993)、フェリス女学院大学(archives/4415)、札幌学院大学の更新(archives/4607)、北星学園大学の更新(archives/4632)。新潟国際情報大学だけが抜けている。
執筆キット §9-7(公式サイトの構造的な問題)に追記する。認定・更新のたびにお知らせ記事を作る運用が、抜けている案件がある。
あわせて、FTFJの大学ページにも問題が2つある。
※ 文責: 内山大志 ※ 執筆者はFTFJ代表理事であり、2024年11月18日の認定を行った理事会の構成員である。また、2025年1月24日の認定式で記念講演を行っている。上記5は、その立場を明示したうえで、FTFJ自身の記録として記載している(原則8)。