立命館アジア太平洋大学は2025年2月14日、日本で7番目、九州圏内の大学では初のフェアトレード大学に認定された。
この大学の学生の48.9%は、海外から来ている(2026年5月1日現在)。日本語と英語の二言語で運営され、学生は世界各国・地域から集まる。
そして、認定を主導した学生団体「Ones’1 Fair Trade」の活動歴は、20年になる。
特に学生団体「Ones’1 Fair Trade」は、APUでフェアトレード憲章を制定する以前の2006年から現在まで、フェアトレード商品の販売のために、現地訪問や学内外での啓発イベントなどを継続して活動しており、今回の認定にも大きく貢献しました。(大学ニュース)
認定8件のなかで、北星学園大学の北星フェアトレード(2005年12月設立)に次いで2番目に長い。
そして、この大学の憲章には、認定8件で唯一の特徴が2つある。
1つは、日本語と英語の両方で公開されていること。もう1つは、6つの学生団体が賛同していることである。基準5が求めるのは「学生団体・学生自治会・大学当局の三者」だが、この大学ではフェアトレード以外の学生団体5つも名を連ねている。
憲章の本文は、この大学の成り立ちから書き起こされている。
APUには多くの途上国も含む国や地域出身の学生が学んでおり、これらの学生の出身国・地域も含め、世界ではまだ十分に公正な取引が行われていない環境であることを、大学全体として認識しています。
「フェアトレードの生産地から学生が来ている大学」の憲章である。
背景
Ones’1 Fair Tradeの設立は2006年4月1日。大学公認日も同日である。
APUの開学は2000年4月。設立から6年目に、この団体ができている。
FTFJ代表理事は、認定にあたってこうコメントした。
2006年6月から現在にかけて、Ones’1 Fair Tradeが活動を行い、国外のフェアトレード商品販売を通じフェアトレードやエシカルなどの社会や環境を配慮した考えを学び、実践、発信されていることは世界的なコミュニティへの深い貢献を示しています。
団体の活動目的は、申請書にこう書かれている。
フェアトレードやエシカルなどの社会や環境を配慮した考えを学び、実践、発信する。
時系列は次のとおりである。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2000年4月 | APU開学 |
| 2006年4月1日 | Ones’1 Fair Trade 設立・大学公認 |
| 2019年9月 | APU-COOPでフェアトレード商品の取扱いを開始 |
| 2020年10月〜 | キャンパス内ローソンのMACHI Caféでレインフォレスト・アライアンス認証コーヒー豆を使用 |
| 2022年1月〜 | 生協でフェアトレード生産農園限定のセイロン紅茶・コーヒーの取扱い開始 |
| 2022年7月10日・24日 | 「Ones’1カフェ」を別府北高架下商店街「KURUKURU」で開催(以降、継続) |
| 2022年10月29・30日 | 天空祭(大学祭)に出店。フェアトレードのスパイスを使ったネパールのモモを販売 |
| 2022年12月18日 | Ones’1カフェ開催 |
| 2023年1月〜 | 全学企画オフィス(前学長室)で来客用のフェアトレードコーヒー・紅茶を毎月購入 |
| 2023年4月24・25・28日 | COOP主催の「APUパシフィックカフェ」に参加 |
| 2023年4月23日〜7月31日 | 学内COOPに期間限定ブースを設置して手工芸品を販売 |
| 2023年5月 | 立命館アジア太平洋大学フェアトレード憲章 制定(2023年度第4回 大学評議会で承認) |
| 2024年11月〜 | 生協でトニーズチョコレート5種を再販予定 |
| 2024年12月16日 | FTFJへ認定申請(12月24日 修正提出) |
| 2025年2月14日 | 認定(日本で7番目/九州圏内の大学では初) |
| 2025年4月27日 | 「わんずマルシェ」を北浜公園(別府市)で開催(初のマルシェ) |
| 2025年4月28日 | 大学がニュースで公表(日本語・英語) |
| 2025年7月13日 | 「わんずわんマルシェ」をトキハ別府店ブルーテラスで開催(2回目) |
認定(2月14日)から大学の公表(4月28日)まで、73日ある。
※ 出典: 立命館アジア太平洋大学「APUのフェアトレードに関する取組み」 https://www.apu.ac.jp/home/about/content267/ /同「APUが「フェアトレード大学」に認定 九州圏内の大学では初」(2025年4月28日) https://www.apu.ac.jp/home/news/article/?storyid=3576 /日本フェアトレード・フォーラム「立命館アジア太平洋大学を国内7大学目となるフェアトレード大学に認定」 https://fairtrade-forum-japan.org/archives/4158
主体
この大学には、憲章に賛同する学生団体が6つある。
| 団体 | フェアトレードとの関係 |
|---|---|
| Ones’1 Fair Trade | 普及学生団体(基準1の対象) |
| PRENGO | 賛同団体 |
| DUCT | 賛同団体 |
| ミツミツ | 賛同団体 |
| ハビタットAPU | 賛同団体 |
| PosPos | 賛同団体 |
大学のニュースは「6つの学生サークルと協力しながら、大学内のフェアトレード普及に積極的に取り組んできました」と書いている。
基準5が求めるのは「FT普及学生団体、学生自治会(ないし学友会などそれに準ずる組織)、大学当局の三者」である。この大学は、フェアトレード以外の学生団体5つも憲章に賛同させることで、その外側に層を作った。
一方、団体の規模には注意が必要である。
| 出所 | 会員数 |
|---|---|
| 申請書(2024年7月3日現在) | 21名 |
| 大学の団体紹介ページ(公開・時点表記なし) | 国内学生12名、国際学生0名 |
学生の48.9%が国際学生である大学で、この団体の登録部員は国内学生のみである(公開ページの記載による)。
組織体制は、申請書に記載されている。代表・副代表・会計責任者・システム管理者の4役である。
大学内の担当部署は「全学企画オフィス」。申請書の連絡先も同オフィスの職員である。
取り組み
基準1 学生団体の大学公認と顧問教員
Ones’1 Fair Tradeは2006年4月1日に設立され、同日に大学公認となっている。
設立日と公認日が同じなのは、認定8件でこの大学だけである。他の大学では、設立から公認まで時間がかかっている。
| 大学 | 設立 | 公認 | 差 |
|---|---|---|---|
| 静岡文化芸術大学 | 2011年 | 同好会→2021年に公認クラブ | 10年 |
| 札幌学院大学 | 2018年10月 | 2019年6月20日 | 8か月 |
| 北星学園大学 | 2005年12月 | 2022年11月2日 | 16年11か月 |
| 千葉商科大学 | 2020年7月16日 | 2022年8月 | 2年 |
| 新潟国際情報大学 | 2017年7月 | 2019年3月11日 | 1年8か月 |
| 立命館アジア太平洋大学 | 2006年4月1日 | 2006年4月1日 | 0日 |
APUの正課外活動団体は、毎年度の継続審査を受ける仕組みになっている。申請書には添付資料として「APU2024年度正課外登録活動団体継続審査について」「APU2024年度クラブサークル継続活動申請結果」が付されている。
判定:適合。
基準2 普及活動・研究教育活動 — 商店街のカフェ
この大学の活動で特徴的なのは、キャンパスの外にある。
「Ones’1カフェ」は、別府北高架下商店街の「KURUKURU」で開催されている。申請書の記載を引く。
Ones’1カフェを開催。直接取引しているタイのフェアトレードコーヒーや紅茶、フィリピン(NGO LOOB)、ラオスの手工芸品を販売。 【成果】APU生を中心にフェアトレードについて商品の紹介を通して知ってもらえる機会となった。
2022年12月の回では、成果の書き方が変わっている。
APU生や商店街を利用されている地元の方にフェアトレードについて商品の紹介を通して知ってもらえる機会となった。
「直接取引している」という記述が、この団体の性格を示している。タイのコーヒー・紅茶は、団体が現地と直接取引している。FTFJ代表理事のコメントにある「現地訪問」も、これに対応する。
学内では、生協との協働がある。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2023年4月24・25・28日 | COOP主催の「APUパシフィックカフェ」に参加。タイのフェアトレード手工芸品(石鹸・アクセサリー中心)とコーヒーを販売 |
| 2023年4月23日〜7月31日 | 学内COOPに期間限定ブースを設置。「日本では珍しい商品もあったためか、予想を上回る(売上)」(申請書) |
| 2022年10月29・30日 | 天空祭(大学祭)に出店。フェアトレードのスパイスを使ったネパールのモモを販売 |
2025年からは、市街地でのマルシェが始まっている。
- 2025年4月27日「わんずマルシェ」(別府市 北浜公園。「私たちが初めてマルシェを開催します!」)
- 2025年7月13日「わんずわんマルシェ」(トキハ別府店 ブルーテラス。2回目)
告知文には「毎月の別府市内でのカフェや、APUでつながってきた団体の方々を集め」とあり、月次のカフェ出店が定着していることが分かる。
判定:適合。
基準3 大学当局によるフェアトレード産品の購入・利用
申請書に記載された使用履歴は、3件である。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2023年1月〜現在 | 全学企画オフィス(前学長室)で、来客用のフェアトレードコーヒーを毎月購入 |
| 2023年1月〜現在 | 同オフィスで、来客用のフェアトレード紅茶を毎月購入 |
| 2023年1月〜現在 | 同オフィスで、職員のためにフェアトレードチョコレートを不定期に購入 |
そして、1年以内の計画が1件。
2025年1月〜2025年8月 APU創設25周年のため、記念品をフェアトレード対象製品より企画・作成予定
APUの開学は2000年4月。2025年が25周年である。記念品にフェアトレード産品を使う計画が、認定申請の時点で示されている。
「全学企画オフィス(前学長室)」という部署名は、記録に値する。この大学の基準3は、学長直下の部署の予算で動いている。青山学院大学の「学長基本方針対応費」、千葉商科大学の「学長事務室予算」と同じ構造である。
判定:適合。
基準4 学内での2品目以上の販売・提供 — キャンパス内のローソン
この大学の販売箇所には、認定8件で唯一のものがある。キャンパス内のローソンである。
| 販売場所 | 取扱産品 | 販売時期 |
|---|---|---|
| キャンパス内ローソン | MACHI Café(レインフォレスト・アライアンス認証コーヒー豆を使用) | 2020年10月〜現在 |
| 本学生協 | フェアトレード生産農園限定 セイロン紅茶 | 2022年1月〜現在 |
| 本学生協 | フェアトレード生産農園限定 コーヒー | 2022年1月〜現在 |
| 本学生協 | ピープルツリー 板チョコレート | 2023年 |
| 本学生協 | トニーズチョコレート 5種類 | 2024年11月〜再販予定 |
申請書は、MACHI Caféのコーヒーについて「FT普及学生団体が適切と認めるフェアトレード団体の産品」として扱い、根拠URLを添えている。
レインフォレスト・アライアンス認証は、フェアトレード認証(FI/WFTO)ではない。基準4の但し書きは「FT普及学生団体が適切と認めるフェアトレード団体の産品」を含めることを認めており、その判断は学生団体に委ねられている。
北星学園大学でも、2025年に同種の判断があった。「FIラベル認証産品、WFTO加盟団体の産品ではないが、地元に由来するチョコレート菓子の商品を知らせていきたいという工夫がされていることも評価したい」。
大府市の認定審査で、バランゴンバナナが「推進団体が認める団体」のリストに含まれず基準3の留保になった件(執筆キット §9-4)と同じ構造である。
なお、トニーズチョコレートは千葉商科大学の生協でも扱われている。千葉商科大学は最小ロット(700〜800個)の問題を千葉大学生協との共同仕入れで解いた。大学間の共同仕入れは、この大学にも当てはまる論点である。
判定:適合。
基準5 憲章の策定と三者の賛同 — 日英2言語の憲章
憲章は、大学の基本理念から書き起こされている。
立命館アジア太平洋大学(APU)は、「自由・平和・ヒューマニティ」、「国際相互理解」、「アジア太平洋の未来創造」を基本理念として、世界各国・地域から未来を担う若者が集い、ともに学び、生活し、相互の文化や習慣を理解し合い、人類共通の目標を目指す知的創造の場として開学しました。
そして、この大学に固有の一節が続く。
APUには多くの途上国も含む国や地域出身の学生が学んでおり、これらの学生の出身国・地域も含め、世界ではまだ十分に公正な取引が行われていない環境であることを、大学全体として認識しています。
「フェアトレードの生産地から学生が来ている」という自己認識が、憲章に書き込まれている。認定8件で、これはこの大学だけである。
結びも、この大学の目標に接続している。
APUで学んだ人たちが、人間の尊厳に対する畏敬の念を抱き、世界で、日本で、それぞれの住む地域や立場で、他者のために、社会のために行動することで、世界を変えることを目標としています。
制定は2023年5月。承認機関は大学評議会である。申請書の添付資料④に、議事録の該当部分が転記されている。
- フェアトレード大学認定の取得に向けたフェアトレード大学憲章の制定について(事務局)より、別紙資料に基づき、フェアトレード大学認定の取得に向けたフェアトレード大学憲章の制定について提案があり、これを承認。
そして、憲章は日本語と英語の両方で公開されている。
認定8件で、英語版の憲章を公開しているのはこの大学だけである。学生の半分が国際学生である大学として、当然の措置ではあるが、記録に値する。
一方、署名者は公開されていない。憲章本文に署名欄がなく、ページ冒頭に学長のメッセージが併記されているのみである。
7本を書いた時点で、憲章には7つの型が並んだ。
| 大学 | 署名 | 公開言語 | 承認機関 |
|---|---|---|---|
| 静岡文化芸術大学 | 学長のみ | 日 | 大学運営会議・教育研究審議会・両学部教授会 |
| 札幌学院大学 | 3者 | 日(署名は非公開) | 大学協議会 |
| 北星学園大学 | 3者 | 日 | 大学評議会 |
| 青山学院大学 | なし | 日 | 学部長会・文化連合会・学友会運営委員会 |
| 千葉商科大学 | なし | 日 | 全学部長会・自治会連絡会 |
| 新潟国際情報大学 | 学長のみ | 日 | 学友会→全学教授会→常務理事会 |
| 立命館アジア太平洋大学 | なし | 日・英 | 大学評議会 |
判定:適合。
所在自治体・地域との関係
別府市はフェアトレードタウンではない。
この大学と地域の接点は、商店街と市街地である。
| 場所 | 内容 |
|---|---|
| 別府北高架下商店街「KURUKURU」 | Ones’1カフェの開催地(2022年7月〜。月次で継続) |
| 北浜公園 | わんずマルシェ(2025年4月27日) |
| トキハ別府店 ブルーテラス | わんずわんマルシェ(2025年7月13日) |
| 鉄輪エリア(スクランブルベップ) | フェアトレードカフェの出店(2026年6月20・21日/タイ渡航で撮影した写真展を併催) |
2026年6月の出店は、地元の運営団体が次のように紹介している。
APUのフェアトレードサークル(中略)主にAPUと別府市内でフェアトレードを広める活動を行っており、月に一回カフェの出店やマルシェを開催されています。当日はタイ渡航で撮影した、コーヒーの実の採取からコーヒー豆になるまでの様子を収めた写真展も予定されています。カフェメニューには、実際にタイで焙煎したフェアトレードコーヒーをはじめ、フェアトレード商品を利用したお菓子をご用意。
「実際にタイで焙煎した」——学生が生産地に行って焙煎したコーヒーを、別府の温泉地で出している。
ただし、この記事はサークル名を「Fairtrade」と記載しており、「Ones’1 Fair Trade」と表記が一致しません。同一団体と断定できる公開情報は見つかりませんでした。
大学と別府市・大分県の間には包括的な連携協定がある(「別府市まちづくり連携交流協定」「大分県と学校法人立命館及び立命館アジア太平洋大学との連携交流に関する協定」)。ただし、これらの協定にフェアトレードへの言及は確認できませんでした。
※ 出典: 湯治ぐらし「フェアトレードカフェ「ONE’S CAFE」開催(6/20・6/21)」 https://www.toji-gurashi.jp/post/20260619-1 /APU 学生団体ページ https://apu-online.jp/clubs/113 /APU「地域連携」 https://www.apu.ac.jp/home/society/content3/
成果
| 指標 | 認定時(2024〜2025年) |
|---|---|
| 学生数 | 6,252人(2024年5月1日)→ 6,699人(2026年5月1日/国際学生48.9%) |
| 学生団体 | Ones’1 Fair Trade(2006年4月1日 設立・同日公認)/会員21名 |
| 憲章に賛同する学生団体 | 6団体(認定8件で最多) |
| 憲章の公開言語 | 日本語・英語(認定8件で唯一) |
| 大学当局の調達 | 全学企画オフィス(前学長室)で来客用コーヒー・紅茶を毎月、職員用チョコを不定期 |
| 販売箇所 | キャンパス内ローソン(MACHI Café)+生協 |
| 学外の拠点 | 別府北高架下商店街「KURUKURU」の月次カフェ/北浜公園・トキハ別府店のマルシェ/鉄輪 |
| 大学の計画への位置づけ | 記載なし |
法人の計画には、記載がない
学校法人立命館およびAPUの公開文書を全文検索した結果は、次のとおりである(2026年8月28日確認)。
| 文書 | 「フェアトレード」の出現数 |
|---|---|
| APU2030ビジョンとチャレンジ・デザイン(2021〜2030年度の中長期計画) | 0件(本文) |
| 学校法人立命館 2023年度 事業報告書 | 0件 |
| 学校法人立命館 2024年度 事業報告書(認定を含む期間) | 0件 |
| 学校法人立命館 2024年度 事業計画書の概要 | 0件 |
| APU 大学評価(認証評価)結果(2023年3月) | 0件 |
| APU 2021年度 自己点検・評価報告書 | 0件 |
2025年2月に認定を受けたにもかかわらず、2024年度事業報告書に記載がない。
7校の状況を並べると、次のとおりである。
| 大学 | 中期計画・事業計画 | 認証評価 | 事業報告書 |
|---|---|---|---|
| 静岡文化芸術大学 | 明記+KPI | (法人評価で「特に評価する項目」) | 記載あり |
| 札幌学院大学 | 記載なし | 「長所」として明記 | — |
| 北星学園大学 | 0件 | 0件 | 0件 |
| 青山学院大学 | 0件 | 0件 | 1件(2021年度のみ) |
| 千葉商科大学 | 0件 | 0件 | あり(2023年度は独立項目) |
| 新潟国際情報大学 | 0件 | 0件 | あり |
| 立命館アジア太平洋大学 | 0件 | 0件 | 0件 |
7校のうち、計画文書にフェアトレードが位置づけられているのは静岡文化芸術大学だけである。そして、事業報告書にも記載がないのは、北星学園大学と立命館アジア太平洋大学の2校である。
認知度
学内のフェアトレード認知度を測った調査は、公開情報でも一次資料でも確認できませんでした。
※ 出典: APU2030ビジョン https://www.apu.ac.jp/home/about/content7/ /学校法人立命館 情報公開 https://www.ritsumeikan-trust.jp/publicinfo/disclosure/apu/ /APU 大学評価(認証評価)結果 https://www.apu.ac.jp/home/about/content190/230403_Accreditation_Results_J.pdf /APU 学生数等データ https://www.apu.ac.jp/home/about/content250/ ※ すべて公開資料。PDFを全文テキスト化して機械検索した(2026年8月28日)。
課題
この記事は、他の6校と比べて課題の記述が薄い。理由がある。
FTFJの現地調査報告書と理事会宛の審査報告書が、Google Drive に実体として存在しないためである。
07 立命館アジア太平洋大学/01 認定資料/20250131_認定委員会審査資料/ にあるのは、次の2件のファイル名だけである。
- 立命館アジア太平洋大学現地調査報告書.gdoc(238バイト)
- 立命館アジア太平洋大学認定報告書(理事会).gdoc(238バイト)
いずれもGoogleドキュメントへのショートカットで、ファイル自体に本文は入っていない。
他の7校では、審査報告書と現地調査報告書から、当事者が語った課題を引くことができた。この大学については、それができていない。
申請書と公開情報から確認できる論点は、次のとおりである。
1. 学生団体の会員構成(公開情報)
大学の団体紹介ページは、部員を「国内学生12名、国際学生0名」と記載している。学生の48.9%が国際学生である大学で、フェアトレード普及学生団体に国際学生が登録していない。
2. 基準3の調達が、1部署に限られている(申請書)
確認できるのは、全学企画オフィス1部署の来客用・職員用の飲料と菓子である。「1年以内の計画」として挙げられた25周年記念品が実現したかは、次回更新審査での確認事項になる。
3. 法人の計画に位置づけがない
APU2030ビジョン、事業報告書、認証評価結果のいずれにも記載がない。
出典
- 立命館アジア太平洋大学「APUのフェアトレードに関する取組み」(憲章全文) https://www.apu.ac.jp/home/about/content267/ (取得日 2026-08-28)
- Ritsumeikan Asia Pacific University “APU’s Fair Trade Initiatives”(英語版) https://en.apu.ac.jp/home/about/content267/ (取得日 2026-08-28)
- 立命館アジア太平洋大学「APUが「フェアトレード大学」に認定 九州圏内の大学では初」(2025年4月28日) https://www.apu.ac.jp/home/news/article/?storyid=3576 (取得日 2026-08-28)
- 立命館アジア太平洋大学 学生団体「Ones’1 Fair Trade」 https://apu-online.jp/clubs/113 (取得日 2026-08-28)
- 立命館アジア太平洋大学 学生数等データ https://www.apu.ac.jp/home/about/content250/ (取得日 2026-08-28)
- 立命館アジア太平洋大学 APU2030ビジョン https://www.apu.ac.jp/home/about/content7/ (取得日 2026-08-28)
- 立命館アジア太平洋大学 大学評価(認証評価)結果 https://www.apu.ac.jp/home/about/content190/230403_Accreditation_Results_J.pdf (取得日 2026-08-28)
- 学校法人立命館 情報公開(APU) https://www.ritsumeikan-trust.jp/publicinfo/disclosure/apu/ (取得日 2026-08-28)
- 日本フェアトレード・フォーラム「立命館アジア太平洋大学を国内7大学目となるフェアトレード大学に認定」 https://fairtrade-forum-japan.org/archives/4158 (取得日 2026-08-28)
- PR TIMES(FTFJ配信) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000013.000081541.html (取得日 2026-08-28)
- 湯治ぐらし「フェアトレードカフェ「ONE’S CAFE」開催(6/20・6/21)」(2026年6月19日) https://www.toji-gurashi.jp/post/20260619-1 (取得日 2026-08-28)
※ 大分合同新聞をはじめとする独立した報道は、見つかりませんでした。確認できたのはプレスリリース配信(PR TIMES、ニコニコニュース転載)のみです。
【FTFJ編集部による解説】他地域への示唆
1. 憲章は、その大学にしか書けないことを書いたときに強い。
7校の憲章を並べると、書き出しがすべて違う。地域(静岡文化芸術大学=浜松市の多文化共生)、大学の理念(札幌学院大学、北星学園大学、新潟国際情報大学)、フェアトレードの起源(青山学院大学=キリスト教会)、創設者の思想(千葉商科大学=遠藤隆吉の商業道徳論)。
立命館アジア太平洋大学の憲章には、他の6校が書けない一節がある。
フェアトレードの生産地から、学生が来ている。その事実を大学の自己認識として書いた憲章は、これだけである。
そして、日本語と英語の両方で公開されている。フェアトレード大学の認定は日本の制度だが、この憲章は日本語を読まない学生にも届く。
これから憲章をつくる大学への含意は、次のとおりである。他大学の憲章を参考にするのはよい(新潟国際情報大学は既存3大学、フェリス女学院大学は既存5大学の憲章を参考にしている)。ただし、自分の大学にしか書けない一節を必ず入れること。それが、憲章が使われ続けるかどうかを決める。
2. 認証の枠を、学生団体が判断する仕組みは、実際に使われている。
この大学の基準4には、キャンパス内のローソンが入っている。MACHI Caféのコーヒーはレインフォレスト・アライアンス認証であり、フェアトレード認証(FI/WFTO)ではない。
基準4の但し書きは、フェアトレード産品に「FT普及学生団体が適切と認めるフェアトレード団体の産品」を含めることを認めている。その判断は学生団体に委ねられ、条件は「WFTOの10原則に立って活動している」「事業の透明性が確保されている」の2つである。
この「第3カテゴリー」の運用は、8件のうち少なくとも3件で使われている。
そして、2022年に札幌市の推進組織がFTFJに出した要望が、まさにここを指していた。
大府市の認定審査でバランゴンバナナが基準3の留保になったのも、同じ問題である。
FTRCが整備すべきものの1つは、「第3カテゴリー団体リスト」である。タウン編で確認したとおり、逗子市の申請書に5団体、浜松市の申請書に20団体以上が列挙されている。大学編でも、判断の実例が積み上がっている。
3. 学外の定位置を持つと、活動は続く。
Ones’1 Fair Tradeは、2022年7月から別府北高架下商店街の「KURUKURU」で月1回のカフェを開いている。2025年からは北浜公園、トキハ別府店、鉄輪へと出店先が広がった。
キャンパスの外に定位置を持つことの効果が、申請書に記録されている。2022年7月の回の成果は「APU生を中心に」だったが、12月の回は「APU生や商店街を利用されている地元の方に」に変わっている。
大学のイベントは、大学祭とオープンキャンパスに集中しがちである。年2回の大きな機会は、担い手が入れ替わると再現が難しい。月1回の小さな定位置は、引き継ぎやすい。
他の認定大学の学外活動と比べても、この頻度は際立っている。
4. 【FTFJ自身への指摘】この大学の審査記録が、Drive に残っていない。
Google Drive の
07 立命館アジア太平洋大学/01 認定資料/20250131_認定委員会審査資料/にあるのは、Googleドキュメントへのショートカット2件(各238バイト)だけである。他の7校では、審査報告書と現地調査報告書がWordまたはPDFの実体としてDriveにある。この大学だけが、ファイル名しか残っていない。
Googleドキュメントの本体は別の場所にあるはずだが、認定資料のフォルダを開いた人には内容が見えない。執筆キット原則9が求める「着手前に資料フォルダの中身を開いて確認する」というチェックを通っても、この状態は「ファイルはある」と見えてしまう。
あわせて、FTFJ公式サイトの問題も記録する。
?page_id=4647&preview=trueというプレビューURLで、現在HTTP 404を返す。WordPressのREST APIも401(権限なし)を返し、ページが下書き/非公開状態であることが確認できる。Internet Archiveにもスナップショットがなく、一度も公開されていないとみられる執筆キット §9-7(公式サイトの構造的な問題)に追記する。
※ 文責: 内山大志 ※ 執筆者はFTFJ代表理事であり、2025年2月14日の認定を行った理事会の構成員である。上記4は、その立場を明示したうえで、FTFJ自身の記録として記載している(原則8)。