12フェアトレード大学

青山学院大学 — 「誰もが入れる学生団体」がない大学は、どう認定されたか

基本データ

大学
青山学院大学
所在
東京都
学生数(認定時)
18,000人余り(2021年7月1日 FTFJプレスリリース)
学生数(現在)
学部20,052人(2026年5月1日現在)+大学院1,521人
認定日
2021年5月14日
更新認定
2024年11月18日
認定順
大学 4 件目
学生団体
総合文化政策学部 フェアトレード・ラボ
担当部署
地域連携部(2024年の組織改編前は社会連携部社会連携課)
計画への位置づけ
記載なし
憲章
本文

青山学院大学は2021年5月14日、日本で4番目、関東で初のフェアトレード大学に認定された。学部生2万人。認定8件のなかで最大の規模である。

この事例が制度に残したのは、2つの前例である。

1つは、基準3の解釈である。認定委員会は、大学当局がフェアトレード産品を「購入し使用している」ことの代わりに、大学が学生の販売企画に出した助成金を認めた。報告書は自らこう書いている。「これは既存のフェアトレード大学の事例と比べてもある意味で画期的なものである。」

もう1つは、基準1の解釈である。この大学のフェアトレード関連の学生組織は3つあるが、1つは正課の授業、1つは経営学部生限定、1つは相模原キャンパスの団体だった。「参加したい全ての学生に門戸を開かれているか」を認定委員会は懸念し、相模原の団体には青山キャンパスの学生も参加できる(前例はないが)ことをもって、基準を満たすと判断した。

3年後、その団体のフェアトレード活動は止まっていた。

2024年の更新審査で、認定委員会は理事会に付帯意見を付けた。「青山キャンパスを含めて基準1を満たせるような普及団体ができることを期待したい。」

背景

この大学のフェアトレードは、学部の中から別々に生まれた。

総合文化政策学部フェアトレード・ラボは2008年、学部の創設と同じ年に始まっている。そして、これは課外サークルではない。

総合文化政策学部では、2年次から始まる「ラボ・アトリエ実習」という演習授業を行っています。これは通常の授業とは異なり、地域のコミュニティ、クリエイター、企業や官公庁などの外部機関と連携して活動するプロジェクト型の授業です。フェアトレード・ラボは「フェアな世界へ、青学から。」をスローガンに、さまざまな形でフェアトレードの啓発活動を行っています。(大学公式サイト)

単位が出る。学生自身が「ラボは授業ですので単位が出るものとなります」と説明している。

経営学部学生リーダーズ(SBSL)は2009年設立、翌2010年7月に経営学部公認となった。オープンキャンパスや新入生イベントの企画運営が主活動で、そのなかの「フェアトレードプロジェクト」がフェアトレード啓発を担う。2017年からワンプラネット・ペーパー協議会との産学連携で、バナナペーパーを使った商品の企画・開発・販売を続けている。

fan×fun 学生ボランティア愛好会は2016年設立、2019年5月16日に大学公認。相模原キャンパスの団体である。

時系列は次のとおりである。

時期 できごと
2008年4月1日 総合文化政策学部フェアトレード・ラボ 設立・大学公認
2009年 経営学部学生リーダーズ(SBSL)設立
2010年7月 SBSL 経営学部公認
2017年 ワンプラネット・ペーパー協議会とSBSLが「バナナプロジェクト」開始
2016年6月8日 fan×fun 学生ボランティア愛好会 設立
2018年 SBSLがバナナペーパーの栞を商品化(オープンキャンパス・学園祭で販売)
2019年初頭 フェアトレード・ラボの学生が憲章の原案を作成。庶務課を通して学長の意見を取り入れ、3回修正
2019年4月22日 2019年度第2回学部長会で憲章を承認(大学側)
2019年5月16日 fan×fun 学生ボランティア愛好会 大学公認
2019年度 ブックカフェでフェアトレードのマカロン・タピオカミルクティーを販売(大学が助成金を拠出)/学食でフェアトレード・カレーを期間限定提供(同)
2019年12月18日 2019年度文化連合会 後期定例総会で承認(学生側①)
2020年3月4日 2019年度学友会運営委員会で承認(学生側②)
2020年4月1日 学長がフェアトレード憲章への支持を表明(FTFJ年表)
2020年10月6日 FTFJへ認定申請
2020年11月19日 認定委員会へ審査を付託
2020年12月4日 第1回認定委員会(オンライン。書類審査)
(2021年1月13日) 現地調査の予定日。東京都の緊急事態宣言の再発動により、大学からの要請で延期
2021年3月19日 現地調査(北澤肯・小林尚朗 両委員)。3月30日にオンライン調査を追加
2021年4月14日 第2回認定委員会
2021年5月8日 認定委員会が理事会へ審査報告
2021年5月14日 認定(日本で4番目/関東初)
2021年7月1日 FTFJがプレスリリースを配信(14:00)。大学も同日ニュースを掲載
2022年 東京都「TOKYOエシカル」パートナーとして参画。SBSLがフェアトレードコットンのハンカチを共同開発
2024年3月 ブックカフェが閉鎖
2024年7月23日 更新審査を認定委員会へ付託
2024年9月27日 更新の現地調査(宮川公平・北澤肯 両委員)
2024年11月18日 1回目の更新認定(公表 12月6日)

認定日と公表日が1か月半離れている。8校のうちでは、立命館アジア太平洋大学の73日(2025年2月14日認定/4月28日公表)に次いで大きい。

※ 出典: 青山学院大学「フェアトレードの取り組み」 https://www.aoyama.ac.jp/outline/effort/fairtrade /日本フェアトレード・フォーラム「青山学院大学」 https://fairtrade-forum-japan.org/fairtradeuniversity/details/aoyamagakuinuniversity

主体

この大学には、フェアトレードを全学で統合する組織がない。

2024年の更新審査は、それを明記した。

基準5については、総合文化政策学部の先生や学生、経営学部の先生や学生、そしてIVYCSキャンパスライフ事業部、地域連携部それぞれの状況を確認することはできたが、これらを含めて青山学院大学全体としてフェアトレードを普及・推進していくための全体を統合するような会議体であれ、意思決定の仕組みについての説明はなかった。

静岡文化芸術大学にはフェアトレード推進委員会(年2回・対面)があり、札幌学院大学にはフェアトレード大学推進協議会があり、北星学園大学には三者会議がある。青山学院大学にはない。

代わりに、この大学が2024年に得たのは、事務組織の改編である。

大学当局の組織改編が行われ、地域連携部が設けられたことで、フェアトレードを含めて対外的な対応が一本化されるなど、大学当局が社会貢献活動にこれまで以上に取り組みやすくなったことが評価される。TOKYOエシカルへの参加を例に挙げると、外部と学部・学生たちをつなげやすくなったという意味で、学内の連携もやりやすくなった点が評価できる。

会議体ではなく、窓口を一本化することで解いている。規模が大きい大学では、この形のほうが現実的なのかもしれない。

もうひとつ、この大学に固有の主体がいる。

株式会社IVYCS(学院が100%出資)である。購買会、ブックカフェ、学食を運営している。2024年の更新審査は、この会社を基準4の中心に据えた。

FT大学として認定されて以降、IVYCSは学生とのコラボや学生たちの活動を応援する事例が増えている。(中略)IVYCSキャンパス事業部としては、卒業生や親御さんからの反応が良いこともあり、今後もノベルティグッズだけでなく学生から提案があれば、積極的にコラボしていきたいと考えていることが確認できた。

大学生協ではなく、学院の100%子会社が販売を担っている。認定8件のなかで、この形はここだけである。

取り組み

基準1 学生団体の大学公認と顧問教員 — 3年で崩れた前提

2021年、認定委員会はこの基準を「懸念」つきで通した。

フェアトレードに関わる3つの学生団体(グループ)が存在することを確認した。(中略)フェアトレード・ラボが総合政策学部の演習授業であり、リーダーズが経営学部生のみを対象とした組織である点で、参加したい全ての学生に門戸を開かれているかどうか懸念があったが、fan×funは相模原キャンパスの団体であるが青山キャンパスの学生であっても参加に支障がないとのことなので(前例はないが)、この点をもってクリアしていると考えられる。

「(前例はないが)」という括弧書きが、この判断の性格を示している。

3年後、その前提は失われていた。

相模原キャンパスを拠点とするfan×funボランティア愛好会の活動が長引くコロナ禍の影響で、国外関係の事業から国内事業のみに絞ることになったこと、また先輩からフェアトレード活動を含む国外事業が継承されなかったこともあり、現在停止していることがわかった。

そして、残る2団体についての評価も変わっている。

それぞれの団体への所属については、選抜の仕組みが取られているため、希望する学生全てに全面的な活動の参加の機会が与えられているわけではない。他方、それぞれの団体で主催する行事やイベントには、学内の学生すべてが参加し体験できるようにしている。

認定委員会は、更新を認めたうえで、理事会に付帯意見を付けた。

理事会から青山学院大学(中略)フェアトレードの普及啓発を行う学生団体に関わる教職員の方々には、ぜひとも基準1を満たせるような活動を行っていただきたい旨を伝えていただきたい。 (中略)そのため、青山キャンパスを含めて基準1を満たせるような普及団体ができることを期待したい。

同時に、認定委員会は自らこう追記している。

追記:リーダーズやフェアトレードラボのゼミの活動があり、フェアトレードに関心のある学生の活動の受け皿がすでにあることで、フェアトレードサークルが生まれにくい環境があるのではとの感を受けた。そのため学生主体のサークルがないことが要件に合致しないのはその特殊事情を鑑みる必要があるのではないか。

「受け皿が充実しているために、サークルが生まれない」という逆説である。

札幌学院大学では、認定委員会は「ゼミナールは推進組織とは認め難い」と判断し、ゼミからサークルへの移行を求めた。青山学院大学では、正課授業と学部限定団体の充実そのものが、基準1を満たしにくくしている。

同じ基準が、2つの大学で正反対の形で問題になっている。→ 執筆キット §9-13

判定:2回とも適合。

基準2 普及活動・研究教育活動

この基準は、両回とも高く評価されている。

フェアトレード・ラボの活動形態が特徴的である。2023年度は役員班に加えて7つの班が、それぞれ企業・団体と組んでいた。

相手 内容
imperfect表参道 コラボドリンク
ナナカフェ コラボメニュー
立花商店 —
学食(IVYCS) フェアトレード認証のカレー粉を使ったナンタコス(2023年11月)ほか
他大学 中央大学フェアトレード委員会「FACT」とのコラボクッキー(2023年11月)
イオン イオン厚木店の子ども向けイベントに出店(約250名参加)
食品商社 —

学内では、半期に一度「フェアトレード・ウィーク」を開催している。

近年は、企業とのコラボがさらに広がっている。

  • 2025年9月 日本ハムとのコラボメニュー「大麦牛グリルサンド」(エスコンフィールドHOKKAIDO)
  • 2025年11月 Telling – Cafe & Gallery とのコラボスイーツ
  • 2025年12月〜 L for You AOYAMA で「フェア・シナモンチャイラテ」「エシカルティー・クグロフケーキ」を販売

2024年の更新審査は、新しい展開を記録している。

フェアトレードに関する研究・教育の推進についても、フェアトレード大学となり小学校や中学校など教育機関から講演依頼があるなど、学生が主体となってそうした要請に対して、授業内容を工夫するなど積極的に対応していることも確認できた。

判定:2回とも適合。

基準3 大学当局によるフェアトレード産品の購入・利用 — 「助成金」という前例

この基準が、この事例の核心である。

2021年、申請書が挙げたのは購買会での「仕入れ」だった。認定委員会はこれを退けている。

しかし、これらは、販売用の「仕入れ」であって、「フェアトレード産品を購入し、利用している」という基準に該当するとは言いがたい。

代わりに認定委員会が見つけたのが、助成金である。

2019年度にフェアトレード・ラボの企画でブックカフェにおいてフェアトレードのマカロンとタピオカミルクティーを販売した際に、大学予算から助成金を拠出し、その分だけ価格を割り引いて販売したという実績があった。具体的には、学長基本方針対応費からの拠出で、マカロン150円×50個=7,500円、タピオカミルクティー100円×143杯=14,300円の助成であった。

同じ年、学食で提供されたフェアトレード・カレーにも助成金が出ていた。

そして、認定委員会は判断を明文で残した。

認定委員会としては、大学が「身銭を切った項目」として、フェアトレード製品を販売する際の「助成金」の支出を基準3の要件として認めて良いのではないかと結論した。これは既存のフェアトレード大学の事例と比べてもある意味で画期的なものである。

大学当局による「自家消費」は、各認定大学とも苦労している項目であるが、大学当局による「助成金」の拠出によって、大学の構成員である学生や教職員のフェアトレード産品の「購入・利用」を促進し、フェアトレード普及活動にも寄与することは、その代替手段として認められうるのではないかということである。

もうひとつ、報告書は制度の壁とその回避を記録している。

大学内担当部署である庶務課の職員の方々が、大学の予算を職員の飲料費に支出できないため、自分たちで費用を出し合って職場消費用のフェアトレード製品の購入を予定している。これは大学当局による「購入・利用」ではないので基準3に該当するわけではないが、大学のルール上の制約を自分たちで補おうという姿勢は、職員の方々のフェアトレード大学に対する思いを反映していると感じた。

北星学園大学でも同じことが起きていた。2018年10月以降、研究支援課の給湯コーナーのフェアトレード紅茶は、職員がポケットマネーを出し合って購入していた。

3年後、基準3は前に進んでいない。

申請書に記載されている内容は、認定申請時と変わらず基準3というよりも基準4に該当すると考えられる。2024年3月にブックカフェが閉鎖されるまでの期間に、フェアトレード・ラボの学生たちとコラボすることで期間限定でフェアトレードの甘味料を用いたクリームソーダを販売していた実績はあるが、大学当局の購入・利用ではない。

そして、認定委員会は自分たちの情報不足を記録した。

調達については、静岡文化芸術大学のような調達方法があることまでは想定していなかったようで、今後学内での調達の広がりに期待が持てるような感想を述べていた。

判定:2回とも適合。

基準4 学内での2品目以上の販売・提供

購買会に「学生企画:フェアトレード商品」というカテゴリがある。

商品 価格(税込) 状況
【国際フェアトレード認証】フェアトレード&オーガニックコットンハンカチ 840円 販売中
バナナペーパーノート A7 680円 SOLD OUT
バナナペーパー 付箋 全7柄(ガウチャー礼拝堂/校章/エシカル/原監督/正門/ツリー〈点火祭〉/風船) 各520円 全てSOLD OUT

付箋の7柄が、この大学らしさを示している。礼拝堂、校章、正門、点火祭のツリー、そして駅伝の監督。大学の象徴とフェアトレードを掛け合わせたノベルティ設計である。

ハンカチは、SBSLのフェアトレードプロジェクトが企業と共同開発したものである。国際フェアトレード認証のコットンを100%使い、今治で生産している。2022年の発売時は790円、現在は840円である。

2024年の更新審査は、この広がりを評価した。

SBSLは従来のバナナペーパー商品のほかにもフェアトレードコットンを使用したハンカチやタオルを企業とコラボし、青山学院大学のロゴを入れた商品としてデザインし、IVYCSの購買部で販売するようになった。(中略)認定申請時から恒常的に販売される商品が増加したことが確認できただけでなく、IVYCSキャンパス事業部が積極的に学生とコラボし、学内でのフェアトレードの普及啓発活動において大きな役割をはたしていることが確認できた。

一方、2017年から国際フェアトレード認証コーヒーを提供していたブックカフェは、2024年3月に閉鎖された。

判定:2回とも適合。

基準5 憲章の策定と三者の賛同 — 署名ではなく、議決で

青山学院大学の憲章には、日付も署名もない。

PDFは全文が3段落で、末尾は本文で終わっている。策定日の記載も、署名欄も、署名者名もない(2026年8月28日確認)。

では、三者の賛同はどう確認されたのか。それぞれの機関の議決を、議事録で確認する形である。

主体 承認の場 日付
大学当局 2019年度 第2回学部長会 2019年4月22日
学生① 2019年度文化連合会 後期定例総会 2019年12月18日
学生② 2019年度学友会運営委員会 2020年3月4日

2021年の審査報告書は、確認方法を明記している。

学生会の承認は2019年の12月18日に2019年度文化連合会後期定例総会、2020年3月4日に2019年度学友会運営委員会で承認されたことを議事録により確認。また学友会メンバーとの面談で直接確認もおこなった。また、いずれのFT普及学生団体からも、フェアトレード大学憲章に賛同している旨を聞くことができた。

基準5の条文は「三者が同憲章に賛同している」であり、署名を求めていない。静岡文化芸術大学(学長のみ署名)、札幌学院大学(3者署名・非公開)、北星学園大学(3者署名・公開)に続いて、青山学院大学は「署名なし・議決で確認」という4つ目の型である。

憲章そのものにも、この大学に固有の論理がある。

フェアトレード運動のはじまりはアメリカのキリスト教会によるものといわれており、キリスト教信仰にもとづく教育を「建学の精神」とする青山学院大学は、これまでも学内外においてフェアトレードの啓発活動を行ってきました。

「フェアトレード運動の起源はキリスト教会」と「本学の建学の精神はキリスト教信仰にもとづく教育」を直結させる。北星学園大学が「人間性・社会性・国際性」という理念から書き起こしたのに対し、青山学院大学はフェアトレードの起源そのものを大学の由来に接続している。

憲章の起草主体も記録されている。

フェアトレード・ラボの学生が中心となり2019年初頭にフェアトレード憲章の原案が作られた。庶務課を通して学長の意見も取り入れ、3回の修正の後に最終案が決められた。

そして2021年の審査報告書は、この事例の性格をこうまとめている。

本学がフェアトレード大学認定に取り組む契機は、学生たちの希望から始まり、それを指導教員が大学当局につなぎ、大学側がその動きをサポートしていく形で進められてきた事例となっている。

判定:2回とも適合。

所在自治体との関係 — タウンのない大学

渋谷区も相模原市も、フェアトレードタウンではない。認定8件のうち、所在自治体がフェアトレードタウンなのは静岡文化芸術大学(浜松市)と北星学園大学(札幌市)の2校だけで、この大学を含む6校はタウンでない。

それでも、認定時にはタウンへの展望が語られていた。2021年の審査報告書が記録している。

フェアトレード・ラボでは、相模原キャンパスの先生方の協力も得て、青山キャンパス周辺のフェアトレードマップを作成する計画を進めつつあるとのことで、将来的に渋谷区のフェアトレードタウン計画、青山通り周辺のエシカルなお店の多い通りをエシカルロード、フェアトレードストリートという名称にして、青山からフェアトレードを発信する構想もあるとのことであった。

同じ構想は、認定を報じた媒体にも載っている。

今後は学内の全学生のフェアトレードへの意識をより高めるとともに、大学のある渋谷区を、街ぐるみでフェアトレードを推進する「フェアトレードタウン」としての認定につなげる取り組みなども進める構想も温めている。(サステナブル・ブランド ジャパン、2021年7月14日)

この構想が5年間でどうなったかを示す公開情報は、見つかりませんでした。渋谷区側の動きも確認できませんでした。

実際に確認できる地域との関わりは、次のとおりである。

関わり 内容
東京都 「TOKYOエシカル」パートナーとして2022年から参画
渋谷エリア 渋谷スクランブルスクエアでのPOP-UPショップ(2023年5月)、渋谷ヒカリエ「Tokyo Chocolate Salon」出店(2023年9月)
表参道・南青山 imperfect表参道、L for You AOYAMA、Telling – Cafe & Gallery とのコラボ
他大学 中央大学フェアトレード委員会「FACT」とのコラボクッキー(2023年11月)
神奈川県内 イオン厚木店での子ども向けイベント出店
教育機関 小学校・中学校からの講演依頼に、学生が主体となって対応(2024年)

認定タウンのない地域で、大学が単独でフェアトレードの拠点になっている事例である。そして、その相手は自治体ではなく、都のプロジェクト、周辺の店舗、他大学、そして小中学校である。

なお、FTFJの事務所は東京都渋谷区神宮前にあり、青山キャンパスとは徒歩圏にある。両者の地理的近接に言及した公開情報は見つかりませんでした。

※ 出典: 青山学院大学「フェアトレードの取り組み」 https://www.aoyama.ac.jp/outline/effort/fairtrade /サステナブル・ブランド ジャパン「青山学院大に『フェアトレード大学』認定」(2021年7月14日) https://www.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/1203549_1501.html

成果

指標 認定時(2021年) 更新1(2024年)
学生数 18,000人余り 学部20,052人(2026年5月1日)
FT関連の学生組織 3(フェアトレード・ラボ/SBSL/fan×fun) 2(fan×funのフェアトレード活動は停止)
誰もが参加できる団体 fan×fun(前例はないが、青山キャンパスの学生も参加可) なし(付帯意見が出る)
学内推進体制 — なし(窓口は地域連携部に一本化)
基準3の実績 助成金(2019年度:7,500円+14,300円) 進展なし(ブックカフェは2024年3月閉鎖)
購買会の恒常販売品 バナナペーパーの付箋・メモ帳ほか 増加(フェアトレードコットンのハンカチ・タオルを追加)
憲章の賛同確認 議事録による議決の確認(署名なし) 変更なし
法人の計画への位置づけ 記載なし 記載なし

法人の計画には、ほとんど書かれていない

学校法人青山学院の公開文書を全文検索した結果は、次のとおりである(2026年8月28日確認)。

文書 「フェアトレード」の出現数
事業計画書(2020〜2026年度・全7年分) すべて0
2021年度 事業報告書 1箇所(認定の実績報告)
事業報告書(2020・2022・2023・2024・2025年度) すべて0
2020年度 自己点検・評価報告書(認証評価提出書類・107頁) 0
大学基準協会 大学評価(認証評価)結果(2021年度・43頁) 0
内部質保証報告書(2021・2022・2023)/改善報告書(2025) すべて0
サステナビリティレポート2025(中長期計画) 0(総合文化政策学部・経営学部の各ページ本文とも)

2021年度事業報告書の記載は、次のとおりである。

●フェアトレード大学として認定【大学】 2021年5月、一般社団法人日本フェアトレード・フォーラムから、国内の大学では4校目(関東の大学初)となるフェアトレード大学として認定されました。(後略)

注目すべきは2点である。

第一に、認証評価の受審年度(2021年度)と認定年(2021年5月14日)がほぼ同時期でありながら、提出書類にも評価結果にも一切登場しない。札幌学院大学は2021年度の認証評価で「基準9 社会連携・社会貢献」の長所として明記され、大学基準協会の事例集に収録されている。同じ年度の受審で、扱いが正反対である。

第二に、2024年12月に公表された更新認定は、2024年度・2025年度の事業報告書のいずれにも記載がない。

大学公式サイトでは、「フェアトレードの取り組み」がグローバルナビゲーションの常設項目である。「大学の顔」としては扱われ、「法人の計画」には入っていない。

この構図は、北星学園大学とまったく同じである。(北星学園大学は法人文書での出現数が全て0。青山学院大学は1件のみ。)→ 執筆キット §9

認知度

学内のフェアトレード認知度を測った調査は、公開情報でも一次資料でも確認できませんでした。

代わりに、2024年の更新審査に定性的な記述がある。

経営学部と総合文化政策学部に入学する学生の中には、入学時にそれぞれの学部で行われているフェアトレードについての取り組みを知っているケースもあり、入学者に一定の認知度があると思われる。

「思われる」であり、調査に基づくものではない。

※ 出典: 学校法人青山学院 事業計画・事業報告 https://www.aoyamagakuin.jp/introduction/data/business/index.html /2021年度事業報告書 https://cdn-aoyamagakuin.com/wp-content/uploads/2022/06/0622_2021_jigyouhoukoku.pdf /大学評価(認証評価)結果 https://www.aoyama.ac.jp/wp-content/uploads/2022/04/pp_accreditation2021_result.pdf /青山学院大学 学生数 https://www.aoyama.ac.jp/wp-content/uploads/2026/06/01_pp_info-undergraduate_2026.pdf ※ すべて公開資料。PDFを全文テキスト化して機械検索した(2026年8月28日)。

課題

当事者および認定委員会が記録した課題のみを記す。

1. 「誰もが参加できる普及団体」がない(2024年・付帯意見)

fan×funのフェアトレード活動が停止し、残る2団体は選抜制である。認定委員会は理事会への付帯意見として、この点を明示した。

同時に、認定委員会自身が「受け皿がすでにあることで、フェアトレードサークルが生まれにくい環境があるのでは」と記録している。

2. 基準3(大学当局の調達)が3年間動いていない(2024年)

申請書の記載は「認定申請時と変わらず基準3というよりも基準4に該当する」と評価された。認定時に基準を満たす根拠となった助成金の対象(ブックカフェ)は、2024年3月に閉鎖されている。

大学側の状態は「手詰まり感」と記録されている。

大学のルール内でどのように実践していいのか、アイデアが思いつかないこともあり、手詰まり感の様子であった。(付帯意見2)

3. 全学を統合する意思決定の仕組みがない(2024年)

基準5の調査で、「全体を統合するような会議体であれ、意思決定の仕組みについての説明はなかった」と記録された。

4. 第2部(今後3年間の目標)が全体として設定されていない(2024年)

第二部に関する内容については、全体として一体となった取り組みの目標の設定とはなっていないものの、今回現地訪問調査でのインタビューを通して、個々の団体・組織のこれまでの活動の成果を改めて振り返るとともに、今後に向けての課題点についても認識した様子であった。

札幌市(タウン)で2回続けて指摘された「第2部が具体的でない」という論点が、ここでも現れている。

5. 相模原キャンパスでの活動が途絶えた(2024年)

fan×funの活動が国内事業のみに絞られ、フェアトレード活動が先輩から継承されなかった。相模原キャンパス発のフェアトレード関連ニュースは、大学サイトでも確認できませんでした。

なお、更新審査は回復の可能性も記録している。「フェアトレード・ラボ担当の森島教授が愛好会とのコラボも検討していることもあり、相模原キャンパスでもフェアトレード関連の活動が復活することが期待される。」

【FTFJ編集部による解説】他地域への示唆

1. 基準3は「自家消費」だけではない。助成金という道がある。

2021年、認定委員会は基準3の解釈を1つ広げた。大学が学生の販売企画に助成金を出し、その分だけ価格を下げて販売する。その支出を「大学が身銭を切った」ものとして、購入・利用の代替と認めた。

認定委員会は、この判断の意義を自ら書いている。「大学当局による『自家消費』は、各認定大学とも苦労している項目である。」

実際、そのとおりである。

  • 静岡文化芸術大学:認定時の実績は「入試業務での飲料提供」1件のみ。2024年度、その1件が財政事情で消えた
  • 北星学園大学:2020・2021年度の調達額は0円。職員がポケットマネーで紅茶を買っていた
  • 青山学院大学:職員が費用を出し合って職場消費用の製品を買う予定だった
  • 札幌学院大学:2018年度は予算そのものがなかった

基準3は、大学の予算規程と正面からぶつかる基準である。公費で運営される法人は収益活動に直接支出できず、私立大学でも職員の飲料費に予算は使いにくい。

だからこそ、選択肢を増やす必要がある。「助成金」(青山学院大学)、「寄付返礼品」(北星学園大学・札幌学院大学)、「卒業証書の台紙と名刺」(静岡文化芸術大学)、「高校訪問の手土産」(札幌学院大学)。どれも、大学のルールの中で見つけられた解である。

そして、これを大学は自力では見つけられない。2024年、青山学院大学の担当者は「静岡文化芸術大学のような調達方法があることまでは想定していなかった」と語り、認定委員会は「手詰まり感」を記録した。

2. 「誰もが参加できる団体」は、認定の要件であると同時に、認定後の脆さの源でもある。

青山学院大学の基準1は、fan×fun 1団体で支えられていた。フェアトレード・ラボは正課授業、SBSLは経営学部生限定。「参加したい全ての学生に門戸を開かれているか」を満たすのは、相模原キャンパスの公認サークルだけだった。

その団体のフェアトレード活動は、3年で止まった。理由は「先輩からフェアトレード活動を含む国外事業が継承されなかった」ことである。

1団体で満たしている基準は、その1団体が変わると失われる。

同時に、この事例は基準そのものへの問いも投げている。認定委員会自身が「受け皿がすでにあることで、フェアトレードサークルが生まれにくい環境があるのでは」と書いた。正課授業と学部公認団体が充実しているために、課外サークルが育たない。

札幌学院大学では、ゼミからサークルへの移行が求められた。青山学院大学では、正課授業と学部団体の充実そのものが基準を満たしにくくしている。

これから認定を目指す大学への含意は、次のとおりである。学部やゼミの取り組みが強い大学ほど、「全学の誰もが入れる団体」を意識的につくる必要がある。そして、その団体を1つに依存させないこと。

3. 憲章は、署名しなくても成立する。ただし、確認の手間が変わる。

青山学院大学の憲章には、日付も署名もない。三者の賛同は、学部長会・文化連合会後期定例総会・学友会運営委員会という3つの機関の議決を、議事録で確認する形をとった。認定委員は学友会メンバーとの面談でも直接確認している。

基準5の条文は「三者が同憲章に賛同している」であり、署名を求めていない。だから、この形は基準を満たす。

だが、2018年の静岡文化芸術大学の付帯意見が指摘したのは、まさにこの点だった。

審査の上では、本来、基準を満たすことが書面審査で確認できるものであることが必要であり、それがない申請書類は好ましくない。(中略)その判定への客観的事実の収集に苦慮することになり、また調査に時間を要することになる恐れがある。

青山学院大学の場合、3つの機関の議事録を確認する必要があった。大学が丁寧に対応したため確認できたが、書面1枚で済む話ではない。

4本を書いた時点で、憲章には4つの型が並んだ。

署名 公開 確認の手間
静岡文化芸術大学 学長のみ あり 策定プロセスの追跡が必要(付帯意見が出た)
札幌学院大学 3者 なし 原本で確認
北星学園大学 3者 あり 原本1枚で確認できる(「ひな型」と評価された)
青山学院大学 なし (憲章のみ公開) 3機関の議事録+面談

基準5の指標に「三者の賛同をどのように書面で示すか」を明記するかどうかは、検討に値する。→ 執筆キット §9-11

4. 【FTFJ自身への指摘①】認定日の誤記が、5年間そのままになっていた。

青山学院大学の初回認定日について、FTFJの内部と公開情報の間に3つの値が並んでいた。

出所 値
FTFJ発行の更新通知書(2024年) 2021年5月14日
認定証(大学が画像で公開) 2021年5月14日
青山学院大学 公式サイト 2021年5月14日
学校法人青山学院 2021年度事業報告書 2021年5月
FTFJのお知らせ archives/4415 2021年5月
FTFJ公式サイト 大学ページ 2021年7月1日
FTFJのお知らせ archives/3993(更新認定) 「2021年7月に」

認定日は2021年5月14日である。FTFJ発行の更新通知書と認定証が一次資料であり、大学と学校法人の公式文書も一致している。

「2021年7月1日」は、FTFJがプレスリリースを配信した日である。同日14時にPR TIMESで配信され、大学も同日ニュースを掲載した。

問題は、FTFJ自身がその後この誤りを引き継いだことである。2024年12月の更新認定リリースは「2021年7月に青山学院大学」と書き、大学の学長コメントも「2021年7月にフェアトレード大学として認定を受けましたが」となっている。FTFJの誤記が、大学側の認識にまで及んでいる。

執筆キットの正誤表 #3 に「要判断」として残っていた項目は、これで解決した。正しい認定日は2021年5月14日である。

5. 【FTFJ自身への指摘②】2024年の付帯意見は、FTRCを求めている。

2024年11月16日、認定委員会は理事会に2つ目の付帯意見を出した。全文を引く。

フェアトレード大学やフェアトレードタウンの実践例を、事例集としてまとめ、学内で普及促進を拡大させていこうとする大学が参考にできるようにすべきである。

青山学院大学の社会連携部をはじめとして大学法人や研究教育組織双方が基準3を満たせるような工夫について、認定委員が訪問調査時に別のフェアトレード大学の事例をお伝えしたが、大学のルール内でどのように実践していいのか、アイデアが思いつかないこともあり、手詰まり感の様子であった。

この記事群が、その付帯意見への回答である。

執筆キット §9-5(2022年 いなべ市の申し送り)、§9-4(第3カテゴリー団体リストの公開)に続き、3件目の「事例の横展開を求める申し送り」である。タウンからも大学からも、認定委員会からも推進組織からも、同じ要望が出ている。

FTRCが最初に整備すべきは、基準3の実践例である。8校の記事が揃った時点で、「大学当局によるフェアトレード産品の調達 — 実践例集」として独立させる。

※ 文責: 内山大志 ※ 執筆者はFTFJ代表理事であり、2024年11月18日の更新認定を行った理事会の構成員である。上記4・5は、その立場を明示したうえで、FTFJ自身の記録として記載している(原則8)。


出典

  1. 青山学院大学「フェアトレードの取り組み」 https://www.aoyama.ac.jp/outline/effort/fairtrade (取得日 2026-08-28)
  2. 青山学院大学 フェアトレード憲章(PDF) https://ac.cdn-aoyamagakuin.com/wp-content/uploads/2020/10/aa_fairtrade_kensyou.pdf (取得日 2026-08-28)
  3. 青山学院大学「フェアトレードの取り組みについて」(学長表明・PDF) https://ac.cdn-aoyamagakuin.com/wp-content/uploads/2020/10/aa_fairtrade_hyoumei.pdf (取得日 2026-08-28)
  4. 青山学院大学「青山学院大学がフェアトレード大学として認定されました」(2021年7月1日) https://www.aoyama.ac.jp/post05/2021/news_20210701_02 (取得日 2026-08-28)
  5. 青山学院大学「青山学院大学がフェアトレード大学として更新認定されました」(2024年12月6日) https://www.aoyama.ac.jp/social_info/2024/news_20241206 (取得日 2026-08-28)
  6. 青山学院大学「SBSLが株式会社フェアトレードコットンイニシアティブ(FCI)と共同開発」(2022年4月16日) https://www.aoyama.ac.jp/post02/2022/news_20220415_03 (取得日 2026-08-28)
  7. AGU NEWS 130号 特集「フェアトレード・ラボ」 https://agu-news.a01.aoyama.ac.jp/feature/267 (取得日 2026-08-28)
  8. 青山学院購買会オンラインショップ「学生企画:フェアトレード商品」 https://ivycskoubaikai.shop-pro.jp/?mode=grp&gid=2708418 (取得日 2026-08-28)
  9. 学校法人青山学院 2021年度事業報告書 https://cdn-aoyamagakuin.com/wp-content/uploads/2022/06/0622_2021_jigyouhoukoku.pdf (取得日 2026-08-28)
  10. 学校法人青山学院 事業計画書・事業報告書 https://www.aoyamagakuin.jp/introduction/data/business/index.html (取得日 2026-08-28)
  11. 青山学院大学に対する大学評価(認証評価)結果(2021年度) https://www.aoyama.ac.jp/wp-content/uploads/2022/04/pp_accreditation2021_result.pdf (取得日 2026-08-28)
  12. 青山学院大学 学生数(2026年5月1日現在) https://www.aoyama.ac.jp/wp-content/uploads/2026/06/01_pp_info-undergraduate_2026.pdf (取得日 2026-08-28)
  13. 日本フェアトレード・フォーラム「青山学院大学」 https://fairtrade-forum-japan.org/fairtradeuniversity/details/aoyamagakuinuniversity (取得日 2026-08-28)
  14. 日本フェアトレード・フォーラム「青山学院大学を国内4大学目となるフェアトレード大学に認定」 https://fairtrade-forum-japan.org/archives/1737 (取得日 2026-08-28)
  15. 日本フェアトレード・フォーラム「青山学院大学をフェアトレード大学に更新認定」 https://fairtrade-forum-japan.org/archives/3993 (取得日 2026-08-28)
  16. サステナブル・ブランド ジャパン「青山学院大に『フェアトレード大学』認定 学生の取り組みを高く評価」(2021年7月14日) https://www.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/1203549_1501.html (取得日 2026-08-28)
  17. MIRASUS「学生主体で広がるフェアトレードの輪、青山学院大学フェアトレード・ラボの活動に迫る!」(2023年12月28日) https://mirasus.jp/students/13871 (取得日 2026-08-28)
  18. 株式会社山櫻 CSV情報「バナナペーパー 栞」(2018年9月24日) https://www.yamazakura.co.jp/csv/detail/csv_20180924_01 (取得日 2026-08-28)

報道

  • サステナブル・ブランド ジャパン 2021年7月14日(認定時の唯一の独自取材記事)
  • テレビ朝日「東京サイト」 2024年10月29日放送「フェアトレードを学ぶ」(本学学生2名が出演。購買会の学生企画商品を紹介)
  • PR TIMES(FTFJ配信)2021年7月1日/2024年12月6日

※ 2021年の認定時、全国紙・地方紙・テレビによる報道は見つかりませんでした。