16フェアトレード大学

フェリス女学院大学 — 2つの学生の集まりの並存と、基準4の後日確認

基本データ

大学
フェリス女学院大学
所在
神奈川県
学生数(現在)
1,818人(2025年5月1日現在/学部1,785・大学院33)
認定日
2025年7月5日
認定順
大学 8 件目
学生団体
国際協力団体 Keep The Smile(KTS)
担当部署
なし
計画への位置づけ
記載なし
憲章
2025年1月8日 本文

フェリス女学院大学は、2025年7月5日にフェアトレード大学に認定された。日本で8番目、女子大としては初めてである。

この大学には、フェアトレードに取り組む学生の集まりが2つある。

1つは、国際協力団体 Keep The Smile(KTS)。2020年5月に設立され、2021年10月に大学の公認団体となった。2023年9月には学生3名と顧問教員がマダガスカルのカカオ産地に渡り、現地の小学校に文房具を届け、その調査を学会誌に発表している。認定申請を組み立てたのもこの団体である。

もう1つは、フェリス・フェアトレード(FFT)。2006年6月から、毎年6月と10月に各1週間ずつ、学内の食堂前でネパリ・バザーロ社のクッキーと紅茶を販売している。部活動でも公認サークルでもなく、教員がテーマを設定し学生が参加する「フェリス・フレンドリー・グループ」という大学の制度の1つである。

2つは、設立の時期も、活動の頻度も、大学のなかでの位置づけも異なる。設立は14年離れており、2020年以降は並存している。

この大学の認定審査には、記録しておくべき点が2つある。

1つ。基準4が、現地調査の日には満たされていなかった。調査団は判定を保留し、2か月後にメールで継続状況を確認したうえで、適合と判断した。

もう1つ。大学の中にフェアトレードの担当部署がない。申請書の「大学内担当部署」欄には、学部名と教員の名前が書かれている。現地調査の方針書には「担当者が教員なのは初」と括弧書きで記されていた。

この記事は、その経緯の記録である。

※ 出典: FTFJ「フェリス女学院大学」 https://fairtrade-forum-japan.org/fairtradeuniversity/details/ferris /フェリス女学院大学「女子大で初となる『フェアトレード大学』に認定」 https://www.ferris.ac.jp/news/2025/07/2056.html

背景

フェリス女学院は1870年(明治3年)、横浜に開かれた日本で最初の女子教育機関である。大学の教育理念は「For Others」——他者のために。

この理念が、憲章の一行目に来る。

フェリス女学院大学の教育理念である「For Others」のもと、公正な社会を目指すフェアトレードの方針に私たちは賛同します。

キャンパスは横浜市泉区の緑園にある。相鉄いずみ野線の緑園都市駅前で、商店街の店と大学がすぐ隣り合っている。

横浜市はフェアトレードタウンではない。

では、この大学の学生はどこでフェアトレードタウンを知ったか。現地調査報告書は、こう記録している。

フェアトレード大学を目指すことになったのは昨年のことで、逗子のイベントに参加したときにフェアトレード・タウンを知ったのがきっかけとのことである。

2023年5月20日、KTSは逗子で開かれたフェアトレードのフォーラムに参加した。逗子市は2016年に認定された、日本で3番目のフェアトレードタウンである。隣の市の市民の集まりが、この大学の認定の起点になっている。

なお、このイベントの名称は、FTFJの資料でも大学の資料でも「逗子市フェアトレードタウン・フォーラム」と書かれている。正しくは「逗子フェアトレードフォーラム2023」、主催は「逗子フェアトレードタウンの会」で、市の主催ではない。FTFJ自身が2023年に出した告知記事と食い違っている。

もう1つ、記録しておくべき人のつながりがある。

2023年2月11日、KTSは横浜南部市場で「横浜のフェアトレードネットワークを広げる交流セミナー」を開いた。その開催報告は日本環境学会の『人間と環境』49巻2号(2023年6月)に載っている。共著者に、静岡文化芸術大学の准教授が入っている。

日本で最初に認定されたフェアトレード大学の教員が、8番目に認定される大学のセミナーの開催報告に、共著者として名を連ねている。

※ 出典: 日本環境学会『人間と環境』49(2) 2-4(2023年6月)/FTFJ「逗子フェアトレードフォーラム2023」 https://fairtrade-forum-japan.org/archives/2845 /KTS https://ferris-kts.jp/about/

主体

この大学でフェアトレードに取り組んでいる学生の集まりは、次の2つである。

Keep The Smile(KTS)— 2020年5月設立

2020年5月設立。2021年3月8日に文化部連合会へ公認を申請し、仮承認期間を経て同年10月11日に正式公認となった。

団体名の由来が、この団体の出発点を示している。現地調査報告書から引く。

団体名は、初代代表の学生の名前と、キリバスの笑顔をキープするという目標に由来している。

沈みゆく島国キリバスのために、現地在住の人と共同でパンノキ・チップスを考案して売る——それがこの団体の最初の仕事だった。インドネシア産のアグロフォレストリーの椰子砂糖も扱った。大学のインキュベーション支援「フェリス・チャレンジ制度」のもとで動いていた。

現地調査時点の部員は11名(3年生3名、2年生8名)。大学から交通費などとして年間3万円程度が支給される。

活動は週2回程度、昼休み。イベントの準備、勉強会、大学売店で売るフェアトレード製品のPOP作り、学生食堂のPOP作り。

フェリス・フェアトレード(FFT)— 2006年6月開始

2006年6月から、ネパリ・バザーロ社(WFTO加盟)のクッキーや紅茶を、毎年6月と10月に各1週間ずつ、学内の食堂前で売っている。利益は全額、同社を通じてネパールに寄付される。

FFTは「フェリス・フレンドリー・グループ」という制度の1団体である。部活動でも公認サークルでもない。教員が設定したテーマに賛同する学生が、所属学部・学科に関わらず参加できる——大学と学生の共同の活動組織である。2025年度は7団体が動いている。

担当教員は2012年に着任し、2015年に前任者から引き継いだ。前任者がネパリ・バザーロの担当者とつながっていたことから、販売が始まった。つまりこの活動は、20年のあいだに担当教員が1度交代しても、続いている。

この活動の考え方について、現地調査報告書は担当教員の発言を次のように記録している。以下は、同報告書からの引用である。

フェアトレードを広く長く普及させるためには、KTS(佐藤教授)のような「ガチ勢」とFFT(古内教授)のような「ゆるい派」が必要とのこと。後者は、生活に密着した活動で、常日頃から意識が高いわけではなくても、普段のお買い物で国際協力する。卒業後も学生がフェアトレードを忘れずに、楽しく、緩やかに、末永く、頑張りすぎずにやっていけることを目指したい。

取り組み

基準1 学生団体の大学公認と顧問教員

KTSは2021年10月11日に正式公認となっている。顧問は佐藤輝教授。2004年の着任以降「環境学入門」などを担当し、公認学生団体エコキャンパス研究会にも関わっている。マダガスカル、キリバス、そして横浜の企業やイベントとのつながりの多くが、この教員の関係から生まれている。

現地調査報告書には、次の追記がある。

*追記:KTSの規約には、「フェアトレード」という言葉の記載がない。ただし、活動内容のなかに「国際協力に資する商品の販売」という文言があるほか、上記のウェブサイトにおける「私たちの活動」では、「日本国内でのフェアトレード品の販売やイベント、発表会の開催、発展途上国への調査などを実施しています。」と書かれている。

規約を確認すると、たしかに第2条の目的にも第8条の活動にも「フェアトレード」の語はない。第8条4号が「国際協力に資する商品の販売」である。

そして、この団体の設立年について、公開情報と一次資料が食い違っている。

資料 記載
申請書・現地調査報告書・KTS公式サイト 2020年5月 設立
大学の点検・評価報告書(2021年度) 2019年度に、この授業を履修した学生を中心としたグループが「フェリスチャレンジ制度」を利用して「キリバス応援プロジェクト”Keep the Smile”」を立ち上げた

「2019年度のプロジェクト」が「2020年5月の団体設立」の前身にあたる可能性が高いが、断定できる資料がない。

判定:適合。

基準2 普及活動・研究教育活動 — マダガスカルまで行った学生調査

この大学の基準2については、学外での普及活動と、研究・教育活動の両方が確認されている。

まず、学外での活動である。

時期 内容 場所
2022年11月26日 アフリカ産フェアトレード品の販売(売上7千円) 横浜南部市場
2023年2月11日 フェアトレード交流セミナーの主催(横浜市内3団体と連携、参加者20名) 横浜南部市場
2023年2月25日 横浜アクションアワードに出場、審査員特別賞を受賞(来場者約80名) 横浜市役所1階アトリウム
2023年11月3〜4日 大学祭 Ferris Festival に出店、マダガスカルの写真展示(売上4.5万円) 学内
2024年10月26日 オリジナル商品カカオ・ティーの販売・展示(20袋完売) 関東学院六浦中学・高等学校 文化祭
2024年11月3〜4日 大学祭 Ferris Festival に出店(来場者投票で展示部門第1位、売上4.6万円) 学内

横浜南部市場への出店は、地元のNPO法人とのつながりから始まっている。関東学院六浦中学・高等学校とのつながりは、横浜アクションアワードへの出場がきっかけだった。

次に、研究・教育活動である。

2023年9月9日から17日まで、KTSのメンバー3名と佐藤教授がマダガスカルに渡った。目的は、自分たちが売っているマダガスカル産チョコレートが本当にフェアトレードなのかを、自分の目で確かめることである。

渡航費は、横浜の建築企業が持つSDGs基金から40万円の補助を受けた。学生1名あたり13万円が助成されている。

出発前、段ボール箱を7か所に20日間置いて文房具の寄付を募り、1,000点以上を集めた。現地で訪ねた小学校2校に届けている。

そして、現地で聞いた話が報告書に残っている。

札束で買い叩くバイヤーの話、輸送手段を持たないため買い付け人の言い値に従う現状など、現地の生々しい話も聞けたとのことであった。

この調査は、日本環境学会の学会誌『人間と環境』第51巻第1号(2025年2月10日発行)に「マダガスカル共和国のチョコレート産業を体験する環境教育実習の新設に向けた予備的な現地調査」として掲載された(pp.53-60)。学生2名が共著者に入っている。

この論文で使われている語を数えると、「フェアトレード」が4回、「レイズトレード」(生産国の中で加工・製品化して付加価値を残す考え方)が7回である。

授業についても、現地調査で確認されている。

教員 科目 扱い
佐藤 輝 教授 環境学入門 森林再生・森林農法の一環でチョコレート、バナナ、ヤシ砂糖について講義
知足 章宏 教授 「アジアの環境問題」ほか 「フェアトレードと市民の役割」という回を設け、フェアトレードだけを解説する。「環境と開発問題」「ボランティア活動が変える世界」でも扱う

いずれも申請書には書かれておらず、現地調査で見つかったものである。

なお、「アジアの環境問題」という科目名は大学の公開情報では確認できませんでした。2025年度のグローバル教養学部の科目例には「世界の環境問題」があります。

判定:適合。

基準3 大学当局によるフェアトレード産品の購入・利用 — 調査団が「主体性は感じられなかった」と書いた

基準3については、現地調査報告書に留保の記述が残っている。

申請書に書かれていたのは、次の2件だけだった。

区分 内容
使用履歴 2024年12月〜 学生食堂でフェアトレードの塩(インドネシア産テジャクラ塩)とゴマ(ニカラグア産いりごま)を利用者向け調味料として使用
1年以内の計画 2025年4月〜 大学ドキュメントセンターが、教職員向けにバナナペーパー(ザンビア産)を使った名刺印刷サービス(選択制)を提供

現地調査団は、塩とゴマが食事の受け渡し口に置かれ、学食利用者が自由に使えるようになっていることを確認した。

そのうえで、報告書はこう書いている。

学食の塩とゴマについて、大学当局の主体性というものは感じられなかった。

理由も具体的である。

  • 購入は環境学の予算(教務課)から出ている。かつて60万円あった予算は現在20万円に縮小され、そこから塩やゴマの購入も、フェアトレード大学の認定料も支払われている
  • 設置を主導したのは佐藤教授とKTSの学生である
  • 学食での表示は「国際協力団体 Keep The Smile/協力:(株)レパスト」となっていた。大学の名前が出ていない

報告書の言葉を、もう一度引く。

予算が厳しいなかで大学予算から支出されていることは素晴らしいことであるが、指標を満たしていることになるのか、気になる点である。

そして、計画のほうは未達だった。

2025年4月からのバナナペーパー名刺は、現地調査(4月2日)の時点で実現していない。代わりに、ボランティアセンターが報告書などの冊子の仕切り紙としての導入を検討していた。報告書は「今回認定された場合、更新時に実現したかどうかの確認が必要」と明記している。

ここで、調査団は申請書に書かれていなかったものを見つけている。

学校法人フェリス女学院が、2012年度から、インド・ケララ州のキリスト教系NGOが制作するクリスマスカードを学院全体で使っていた。

項目 内容
開始 2012年度
2024年度の発注枚数 3,130枚(学院2,233枚・大学647枚・中高150枚)
支出 年間 530,250円(学院から)
制作者 25人の女性(うち12人が耳の不自由な方たち、13人がダリッドの方たち)
製法 菩提樹の押し葉の上に絵柄を描き、1か月ほど乾燥させる

報告書の判断は、慎重である。

「フェアトレード産品」として評価できるかどうかであるが、エシカルであることは疑いない。

「フェアトレード産品」と断定していない。FI認証でもWFTO加盟団体でもないためである。

この大学の場合、これは「基準3を補強する材料」として扱われ、主たる根拠にはなっていない。

判定:適合(ただし報告書に留保の記述あり)。

基準4 学内での2品目以上の販売 — 現地調査の日には満たされていなかった

現地調査(2025年4月2日)の時点で、基準4の「1年以上にわたって継続的に」が満たされていなかった。

キャンパス内の丸善キャンパス・ショップには、確かに複数のフェアトレード産品があった。

産品 備考 販売開始(申請書)
オリジナル・フェアトレードポーチ(2種) 文学部・国際交流学部の同窓会組織「りてら」が制作(FI認証コットン) 2024年5月〜
フェアトレード・ドライフルーツ(2種) FI認証 2024年6月〜
フェアトレード・キャンディー(2種) わかちあいプロジェクト(FLO-CERT取得) 2024年11月〜
(期間限定)ショコラ・デ・パプア オルター・トレード・ジャパン。KTSからの提案で販売 2024年6・7月

申請書に書かれていた「古内洋平(教授)研究室/クッキー7種/2006年6月〜」については、現地調査の結果、研究室で常時売っているわけではなく、毎年6月と10月に各1週間ずつの学内販売だと分かった。基準4では対象外と判断されている。

つまり、20年続いてきた販売のほうが基準を満たさず、前年に始まったばかりの売店の商品が基準を担うことになった。

そこで調査団は、判定を保留した。

現地調査の時点でこの点を佐藤教授にも確認し、改めてこの点については5月末に確認をさせて頂きたい旨をお伝えした。それを受けて、5月30日に佐藤先生にメールにて継続状況の問い合わせをし、5月31日に少なくともポーチとキャンディーの販売が継続されているとの返信を受け取ったことから、基準4に適合していると判断できる。

2025年4月2日に現地を見て、5月30日にメールで問い合わせ、5月31日の返信で確定した。

現地調査は1日で行われるが、「1年以上にわたって継続的に」という指標は、その1日では確認できない。この案件では、その時間差を現地調査後の照会で埋めている。

売店の側の話も、報告書に残っている。

店長によれば、「医食同源」を是とする社長が、自然に近いもの、身体に良いもの、とくに若い女性が通うキャンパス内ではそのようなものを扱いたいということで、会社経由で仕入れるようになったとのことである。

ポーチは「価格が手頃ということもあり、よく売れている」。一方でキャンディーは「あまり売れていない。いまの学生はキャンディーやガムはあまり買わず、グミやチョコの人気が高い」。

現地調査で聞き取った内容に基づくと、この大学の売店では、同窓会組織「りてら」が制作したポーチが、価格が手頃なこともあってよく売れており、キャンディーはあまり売れていない、ということが言える。

判定:適合(後日確認により)。

基準5 憲章の策定と三者の賛同 — 学長オフィスアワーに持ち込まれた原案

憲章の原案は、KTSの学生2名が書いた。

参考にしたのは、先輩への相談と、既存5大学の憲章、そして大学の教育理念「For Others」である。

そして学生は、その原案を「学長オフィスアワー」に持って行った。学生が自由に学長と話せる時間である。

学長の反応について、現地調査報告書は次のように記録している。

学長からは憲章案について、持続性を担保するためにも「ただ他者のためだけでなく、自分のためでもある」という文言を加えてもらいたいと伝えたとのことであった。

憲章の第3段落に、それが入っている。

この意識と経験に基づくフェアトレードへの活動は、他者のためだけでなく自らのためでもあります。したがって、フェアトレードに関する取り組みを大学内で主体的に推進し、多くの人々とともに啓発・普及し合い、地域(横浜)に根差した幅広い課題解決へと広げていくことを目指していきます。

報告書はこう続ける。「回り回って自分たちのためになるというのは学生たちも同意し、横浜という地域に根ざした取り組みにすることとして結実した」。

手続きも記録しておく。

日付 事項
2024年9〜10月 学友会の常任委員会(各公認団体の代表者で構成)で議論
2024年11〜12月 学友会が憲章案を確認
— 学生委員会(10名ほど、知足教授が委員長)が文言の確認作業。憲章自体への反対や修正はなし
2025年1月8日 全学教授会で承認(2025年度から新設されるグローバル教養学部の運営会議として開催)
2025年1月17日 学長と学友会長の連名で、大学サイトに支持表明を掲載。同日、FTFJに認定申請書を提出

議事録について、申請書に注記がある。

※新学部(グローバル教養学部)運営会議として開催され、議事録(記録)は旧学部で取りまとめられておりますので(2024年度限りの大学内での経過措置)、ご容赦をお願い申し上げます。

学部改組の移行期に、承認の手続きが行われている。

学長は、現地調査で次のように語っている。

  • 前任校の在籍時からフェアトレードを知っていた
  • とりわけ女子大としては、ジェンダーの観点から女性が搾取される問題は深刻である。インド・ケララ州からクリスマスカードを購入しているのも、立場の弱い女性を支援したいという考えに基づく
  • 認定されれば女子大として日本で初めてであり、他の女子大にも影響を与えられるかもしれない
  • 入試課や広報課は高校生への訴求力を期待している
  • 全学教授会でも理事会でも全会一致で(学長の言葉では「あっさりと」)承認された

そして、報告書の最後に、この大学に固有の論点が置かれている。

3月12日の認定委員会の際に指摘の挙がっていた大学の担当部署について佐藤教授に確認した。他大学では事務組織のなかに担当部署がある旨をお伝えしたところ、フェリス女学院大学には現状そのような部署がないとのことであった。ただ、今後フェアトレード大学に認定された場合、担当部署がなければ佐藤教授ご自身も大変だということで、検討したいとのことであった。

現地調査の方針書には、基準1の調査事項の1行目にこう書かれている——「(大学内担当部署で事務局の関与は。担当者が教員なのは初)」。

判定:適合。

所在自治体・地域との関係

横浜市はフェアトレードタウンではない。

しかしKTSは、活動実績に「横浜のフェアトレードタウン化に向けた公開セミナー開催と関係団体との情報共有(2022年〜現在)」を掲げている。そして公式サイトには「横浜フェアトレード」というページがあり、大学とは無関係の市内の店を紹介している。憲章の「地域(横浜)に根差した」という一節に、活動が対応している。

相手 内容
逗子フェアトレードタウンの会 2023年5月20日のフォーラムに参加。フェアトレードタウンを知ったきっかけ
横浜南部市場(NPO法人グリーンパワーファクトリー) 2021年以降、アフリカ産フェアトレード品の販売。2023年2月の交流セミナーの会場
緑園都市 A.cafe インドネシア産カスカラ・ティーを使った共同開発のクッキー・オリジナル飲料
関東学院六浦中学・高等学校 2024年2月の講演会、同年10月の文化祭でカカオ・ティー販売
横浜市立鶴ヶ峰小学校 2023年12月、マダガスカルとフェアトレードに関する講演会
横浜の建築企業 SDGs基金からマダガスカル渡航費に40万円

大学の近くの店、隣の市の市民団体、近隣の中学・高校、そして地元企業の基金。この大学の学外との接点は、いずれも神奈川県内にある。

※ 出典: KTS https://ferris-kts.jp/about/ /横浜アクションアワード2023 http://action-awards.yokohama/2023.html

成果

指標 認定時(2025年)
学生数 1,906人(2024年5月1日)→ 1,818人(2025年5月1日)
学生団体 KTS(2020年設立・2021年10月公認/会員11〜12名)+FFT(2006年〜/8名)
顧問・担当 教員のみ。学内担当部署なし
憲章 学生2名が起案 → 学長オフィスアワー → 学生委員会 → 全学教授会(2025年1月8日)
支持表明 学長・学友会長の連名(2025年1月17日)
大学当局の調達 学食の塩・ゴマ(環境学予算20万円から)/学院のクリスマスカード 年530,250円(2012年度〜)
販売箇所 丸善キャンパス・ショップ(ポーチ2種・ドライフルーツ2種・キャンディー2種)
学外の拠点 横浜南部市場/緑園都市A.cafe/関東学院六浦中高/逗子
大学の計画への位置づけ 記載なし

女子大として初めて、という位置づけ

この認定は、公開情報のすべてで「女子大では初」と書かれている。

学長のコメントは、それをWFTOの原則に接続している。

本学は、ジェンダーの観点からもフェアトレードをさらに推進する立場にあると考えております。一つの根拠として、世界フェアトレード連盟(WFTO)の10基準のうち、基準の6番目でも「公正な男女関係」に対する項目があります。この点は、発展途上国のみならず、日本でもSDGsの5番目のジェンダー平等が最も遅れていると国際的にも指摘されているからです。

法人の計画には、記載がない

学校法人フェリス女学院および大学の公開文書を全文検索した結果は、次のとおりである(2026年8月28日確認)。

文書 「フェアトレード」の出現数
中期計画 2026-2028 0件
中期計画 2021-2025 0件
事業計画書(2023・2024・2025・2026年度) すべて0件
事業報告書(2023・2024年度) 0件
事業報告書(2025年度)=認定を含む年度 0件
大学基準協会による大学評価(認証評価)結果(2023年) 0件(42ページ)
大学グランドデザイン Ferris Univ.2030 0件
150周年記念サイト「将来構想」 0件
点検・評価報告書(2021年度) 3件(いずれも制度の説明のなかの例示)

2025年7月5日に認定を受けたにもかかわらず、2025年度事業報告書に記載がない。

8校の状況を並べると、次のとおりである。

大学 中期計画・事業計画 認証評価 事業報告書
静岡文化芸術大学 明記+KPI (法人評価で「特に評価する項目」) 記載あり
札幌学院大学 記載なし 「長所」として明記 —
北星学園大学 0件 0件 0件
青山学院大学 0件 0件 1件(2021年度のみ)
千葉商科大学 0件 0件 あり(2023年度は独立項目)
新潟国際情報大学 0件 0件 あり
立命館アジア太平洋大学 0件 0件 0件
フェリス女学院大学 0件 0件 0件(認定年度を含む)

8校のうち、計画文書にフェアトレードが位置づけられているのは静岡文化芸術大学だけである。

認知度

学内のフェアトレード認知度を測った調査は、公開情報でも一次資料でも確認できませんでした。

※ 出典: 学校法人フェリス女学院 情報公開 https://www.ferris.jp/about/report.html /フェリス女学院大学 自己点検・評価 https://www.ferris.ac.jp/about/evaluation/ /同 学生数 https://www.ferris.ac.jp/mt_img/1_student.pdf ※ すべて公開資料。PDFを全文テキスト化して機械検索した(2026年8月28日)。

課題

1. 大学当局の主体性(2025年・現地調査団)

基準3について「大学当局の主体性というものは感じられなかった」と明記されている。予算は縮小した環境学予算、主導は教員と学生、学食の表示に大学名は出ていない。

2. 学内担当部署がない

認定後に検討するとされたが、認定から1年以上たった時点でも、部署が設置されたという公開情報は確認できませんでした。FTFJの大学ページは担当部署を「学生課」と記載しているが、一次資料と食い違っている。

3. バナナペーパーの計画が未達(更新時の確認事項)

申請書の「1年以内の計画」(2025年4月〜、ドキュメントセンターの名刺印刷)は、現地調査時点で実現していない。報告書自身が「更新時に実現したかどうかの確認が必要」と書いている。

4. 基準4を支えているのが、始まったばかりの販売である

20年続いてきたFFTのクッキー販売は、基準4では対象外と判断された。基準を担っているのは2024年5月以降に始まった売店の3品目で、現地調査の日には「1年以上」を満たしていなかった。

5. 認定後の情報発信

認定を告知した記事は、大学サイト(2025年7月25日)とFTFJのお知らせのみである。

  • KTS公式サイト(2025年4月30日完成)に、認定の告知がない
  • 大学のクラブ紹介ページは「フェアトレード大学認証に向けた調整」のまま更新されていない(さらに「認証」は用語の誤り)
  • 大学の「フェリスとSDGs」ページの新着一覧に、2025年1月17日の憲章記事はあるが、2025年7月25日の認定リリースがない

6. 規約に「フェアトレード」の語がない

現地調査報告書が指摘したとおりである。あわせて、規約第9条は「年会費を徴収する(500〜1000円程度)」としているが、現地調査では「部費は徴収しておらず」と記録されている。

【FTFJ編集部による解説】他地域への示唆

※ この節は、FTFJ編集部の見解である。本文の事実記述とは区別してお読みいただきたい。

1. 性格の異なる2つの集まりを、並存させる。

8校を通じて最も多く現れた課題は、「学生は4年で入れ替わる」だった。

フェリス女学院大学では、性格の違う2つの集まりが並存している。

KTS(2020年〜) FFT(2006年〜)
性格 学生の自発的な公認団体 教員がテーマを設定し、学生が参加する大学の制度
活動量 週2回+海外渡航+学会発表 年2回、各1週間の販売のみ
続いた年数 6年 20年(担当教員が1度交代して継続)

FTFJ編集部は、この並存が継続を支えていると考える。活動量の多い団体は、意欲のある学生が揃う年に強い。活動量を求めない仕組みは、担い手の少ない年を越えられる。

なお、担当教員の発言(「主体」の節に引用)にあるとおり、FFTは「頑張りすぎずに」続けることを目指すものとして運営されてきた。無理のない範囲で続く仕組みを大学の制度として持っているかどうかは、認定を目指す大学が最初に点検すべきことだと、FTFJ編集部は考える。

あわせて、8本の記事を通じて確認できた事実として、学生が共著者として学会誌に掲載された例は、この大学が初めてである。

2. 現地調査の1日で確認できない指標は、後日確認してよい。

「1年以上にわたって継続的に」という指標を、1日の現地調査で確認するのは原理的に難しい。

この案件で調査団が取った方法は、判定を保留し、2か月後にメールで確認して確定するというものだった。

認定8件のうち、現地調査後の照会によって基準の適合を確定させた例は、この案件が初めてである。

FTFJ編集部は、これを審査の運用として他の案件にも使えると考える。現地調査で「あと2か月で1年になる」状態に出会ったとき、不適合とするか、日程を後ろにずらすか、後日確認で埋めるか——3つ目の選択肢があることを、この案件が示した。ただし、この案件では理事会への報告期限を44日超過している。後日確認を運用として認めるなら、報告期限の設計もあわせて見直す必要がある。

3. 学生が書いた原案を、学長が受け取る回路があるか。

この大学の憲章は、学生が書いた原案を「学長オフィスアワー」に持ち込むところから動き出した。

8校の憲章の起案と承認の経路を並べると、次のようになる。

大学 起案 大学トップへの回路
静岡文化芸術大学 学生2団体 顧問教員 → フェアトレード推進準備会
札幌学院大学 学生 学生が常務理事にプレゼン → 理事会
北星学園大学 学生 顧問教員が大学当局へ
青山学院大学 学生(フェアトレード・ラボ) 指導教員・庶務課 → 学部長会
千葉商科大学 学生4名 全学部長会 → 自治会連絡会
新潟国際情報大学 学生 学友会 → 全学教授会・常務理事会
立命館アジア太平洋大学 事務局 大学評議会
フェリス女学院大学 学生2名 学長オフィスアワー(学生が直接会える時間)

「学生が学長に直接会える時間が制度としてあるか」は、憲章の中身にまで影響する。この大学では、その30分ほどのやりとりで「他者のためだけでなく自らのためでもある」という一節が加わった。

4. 女子大・単科大学という切り口を、認定の意味に接続する。

この大学は、認定の意味を「日本の女子大で初」に置き、それをWFTOの第6原則(差別の禁止、ジェンダー平等)とSDGs目標5に接続して説明した。8校のうち、認定の意味を国際的な基準の条文に結びつけて説明したのは、この大学が初めてである。

大学には、それぞれ固有の切り口がある。女子大、キリスト教系、国際学生の多い大学、商業教育の大学、地方の小規模大学。認定を「フェアトレードに取り組みました」で終わらせず、その大学が何者であるかに接続したとき、記事にできる認定になる。

5. 認定を、大学の計画文書に載せる。

8校のうち6校で、中期計画にも事業計画にも認証評価にもフェアトレードの記載がない。残る2校のうち、静岡文化芸術大学は中期計画にKPIつきで明記され、札幌学院大学は認証評価で「長所」として明記されている。事業報告書まで含めた3項目すべてが0件なのは、北星学園大学・立命館アジア太平洋大学・フェリス女学院大学の3校である。

学生団体の活動は4年で入れ替わり、顧問教員はいつか異動する。計画文書に載れば、大学の事業として残る。

次の更新審査の申請書に「大学の中期計画・事業報告書における記載の有無」の欄を設けることを、FTFJに提案する。

6. 事例の横展開は、記事より前に、人の移動として起きている。

この大学がフェアトレードタウンを知ったのは、隣の逗子市の市民団体が開いたフォーラムだった。2023年2月に横浜南部市場で開いた交流セミナーの開催報告には、静岡文化芸術大学の准教授が共著者として入っている。新潟国際情報大学は、青山学院大学の視察を経て認定に進んだ。

FTFJ編集部は、認定校どうし、そして認定校とフェアトレードタウンをつなぐ場を意識的に設けることが、次の認定につながると考える。


出典

FTFJ

大学

研究

  • 佐藤輝ほか「マダガスカル共和国のチョコレート産業を体験する環境教育実習の新設に向けた予備的な現地調査」『人間と環境』51(1) 53-60(2025年2月10日発行)
  • 佐藤輝ほか「『横浜のフェアトレードネットワークを広げる交流セミナー』開催報告」『人間と環境』49(2) 2-4(2023年6月)

その他