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自治体の予算をどう確保するか — 委託費・負担金・補助金・認定更新料

この記事が答える問い

フェアトレードタウン基準6は、自治体がフェアトレードを支持し普及することを求めます。しかし「予算を付けること」は求めていません。

そのため8市の予算の形はばらばらです。単独の費目を持つ市もあれば、予算書のどこを探しても「フェアトレード」という語が出てこない市もあります。認定を受けているかどうかと、予算があるかどうかは、別の話です。

この記事は、8市の予算の形を4つの類型に整理し、認定申請料・更新料を誰が払っているかという、あまり表に出ない論点を扱います。

1. 4つの類型

類型 意味 該当する市
① 単独の費目を持つ 予算書に「フェアトレード」を冠した事業名がある 熊本市
② 負担金・補助金として支出する 推進組織や市民団体に渡す形。用途は受け手が決める 逗子市(負担金)/鎌倉市(補助金)
③ 別事業に内包する 消費生活・国際交流などの事業費の一部として執行される 浜松市/札幌市/名古屋市
④ 事業名としては存在しない 予算書に語が現れない。都度の補正や他事業の一部で対応 いなべ市/大府市

2. 逗子市 — 委託費から負担金へ、そして中断と復活

8市のうち、費目・金額・区分の変遷まで公開資料で追えるのは逗子市だけです。

年度 市から推進組織への支援 形式
2016〜2017年度 30万円/年 委託費(市が仕様書を定める)/協働事業提案制度
2018〜2020年度 ゼロ 財政調整基金の不足による緊縮財政措置
2021年度〜 30万円/年 負担金(推進組織が用途を決められる)/一般経費に変更

認定を受けた自治体でも、予算が3年間ゼロになることがあります。逗子市の認定は2016年ですから、認定の2年後から3年間、市からの支出は途切れています。

2021年度の復活時に、2つの制度変更が同時に行われました。

  • 政策的経費から一般経費へ — 政策的経費は毎年度の査定対象になりますが、一般経費は継続しやすい区分です。
  • 委託費から負担金へ — 委託費は市が仕様書で使途を定めます。負担金は受け手が用途を決められます。

この2つの変更は、事業の安定性と自由度をどちらも上げています。予算を「取り直す」のではなく「区分を変える」という手があることを示す事例です。

金額(市の予算参考資料。事業名は「国際交流推進事業」)

年度 事業予算額 内容
令和6年度 387千円 フェアトレード啓発事業負担金 300千円、ほか市制70周年記念フェアトレード懸垂幕の経費など
令和7年度 318千円 「フェアトレード啓発事業負担金 300千円(フェアトレードタウン認定更新料33千円含む)」
令和8年度 317千円 「フェアトレード啓発事業負担金 300千円」

令和7年度の実績額は316,097円です。

市長は予算大綱でこの事業を読み上げています。

国際交流推進事業は、フェアトレード啓発事業負担金及び市制70周年記念フェアトレード懸垂幕の経費などとしまして38万7,000円を計上いたしました。 (令和6年3月定例会 第1回 2月20日-01号/桐ケ谷覚市長)

ただし、事業名は「国際交流推進事業」であり、フェアトレード以外の経費を含みます。また、令和7年度・令和8年度の施政方針および予算提案説明には、フェアトレードへの言及がありません。

3. 鎌倉市 — 8市で唯一、市民が使える補助金がある

鎌倉市は令和5年度に「鎌倉市フェアトレード推進事業費補助金」を創設しました。推進組織への支出ではなく、市民団体や事業者が申請して使える補助金です。

項目 内容
対象 市民団体/事業を営んでいる法人又は個人
対象事業 イベント事業・情報発信事業等
補助率 3分の1
上限 20万円

この制度を作るときの苦労が、現地調査に記録されています。

この予算の財源には、国(消費者庁)の補助金を特定財源として活用しているが、直接市が実施しない事業に充てるという前例(間接補助)がなかったため、理解を得るための苦労はあったが、なんとか獲得することができた

国庫補助を市の事業に使うのは通常のことですが、それを市民団体への補助に回すのは前例がなかった、ということです。この壁を越えた実例として、他の自治体が参照できます。

執行実績と、その読み方

  • 令和5年度 決算額 2万9,000円
  • 2025年度に補助金を活用した推進企画 5件(壁画制作、ハロウィーンイベントでのチョコレート菓子配布など)
  • 令和7年度は「現時点で7件、申請が来ておりまして、金額的には1万円とか1万2000円とか、これは主に学童でやっている子供向けの事業の申請が多い」

予算額は令和7年度の600千円から、令和8年度は90千円に減っています。この減額について、市は議会で明確に説明しています。

当初、20万円の補助額なので、3分の1なので60万円規模の事業に対して、3分の1補助で20万円を3件で、それで60万円という計算をしていたんですけれども。で、やっていく中で、そんなに大きな規模の事業が実際にはなくて、それで減額しています。実態に合わせて減額しただけで、決して縮小しているというところではない (令和8年一般会計予算等審査特別委員会・2026年3月6日/小川共生共創部次長)

上限20万円の設計に対し、実際の申請は1万円台が中心でした。制度を作る側にとって、これは重要な実務情報です。上限額の設定は、想定する事業規模から逆算する必要があります。

あわせて、所管と財源が動いています。

令和7年度 令和8年度
事業名 エシカル消費推進事業 消費生活事業
所管 共生共創部 地域共生課 市民防災部 市民安全課
事業費 1,340千円(国県支出金670/一般財源670) 685千円(全額一般財源)
うち補助金 600千円 90千円

令和8年度の財源から「国県支出金」が消えています。消費者庁の補助金(間接補助)が令和8年度は入っていない可能性がありますが、公開資料からは確定できません。

4. 浜松市 — 単独費目はないが、市が更新手数料を払っている

浜松市の予算書に「フェアトレード」という語を含む事業名は存在しません。関連経費は「消費生活推進事業」に含まれます(令和6年度7,324千円/令和7年度7,827千円/令和8年度7,158千円。フェアトレード分の内訳は非公開)。

それでも浜松市は、認定更新手数料を市の予算で負担しています。2023年の現地調査報告書は、この点を高く評価しています。

他のフェアトレードタウンと比較して大きく進んでいる点は、認定更新手数料の負担をはじめ、フェアトレードマップの作成において経費負担に加えて取り扱い店舗の調査までも同市の負担で実施されている。(中略)他の自治体の規範となる点と言える。 逗子市をはじめ自治体負担が徐々に拡がりを見せてはいるものの、他自治体、特に今後タウン認定を目指す自治体においては事例と共に啓発していく必要がある

浜松市には、国の補助金を使った実例もあります。啓発冊子「ぼくたち・私たちの消費行動が世界を変える! 学ぼう 広げよう フェアトレード」は、消費者庁の10分の10補助金で作成されました。ただし「10分の10補助はゼロ精算(収支が同額であること)が求められ、収支報告書の作成が極めて煩雑」という記録も残っています。

また、フェアトレードマップの店舗調査は浜松市消費者団体(と協力する学生)が実施し、経費は「消費者問題意識啓発事業委託料」の一部として支出されています。基準5の裏取りに必要な調査を、委託料の枠で処理した例です。

5. 札幌市 — 費目はないが、現物で支えている

札幌市には単体の予算費目がありません。2025年の現地調査で市の担当課が「フェアトレードに関わる事業への予算措置と執行の実績に関して、単体の予算費目はない」と回答しています。

令和7・8年度の局別施策の概要、一般会計予算説明書、予算の概要(合計200万字を超えます)を全文検索しても、「フェアトレード」は1件もヒットしません。

その代わり、市は現物で支えています。フェアトレードパンフレット/マップを推進組織と共同で作成し、印刷代等の費用を市が負担しています(最初に6,000部、2022年の改訂時に2,000部増刷)。

そして、認定料は推進組織が払っています。現地調査での回答は「認定料は戦略会議の方に見てもらっている」というものでした。浜松市・逗子市が市の予算で更新手数料を負担しているのとは対照的です。

6. 大府市 — 記念式典だけが予算に現れた

大府市の令和6〜8年度の当初予算に「フェアトレード」を冠した事業名は存在しません。

明示的に計上された唯一の例は、令和7年度の補正予算(第7号、2025年12月議決)です。企画広報戦略課「シティプロモーション事業」として、報償費37万円(認定記念式典の出演・出席謝礼、記念品等)、需用費18万8,000円(記念式典の横断幕等)。記念品は「本年度作製しました大府市のオリジナルのフェアトレードコーヒー」を主に検討する、と担当課長が答弁しています。

令和8年度には、農業の枠で1件現れます。

地産地消推進事業(所管:農業振興課)事業費 29,283千円 ◎(5)「有機農業及びフェアトレードの普及を目的としたマルシェを市役所で開催します。」

認定の翌年度に、施策としての足場が農政に置かれた形です。担当課も企画政策部 企画広報戦略課から産業振興部 商工業ウェルネスバレー推進課に移っています。

7. 認定申請料・更新料は誰が払っているか

これは申請を検討する自治体からよく聞かれる論点ですが、8市の記録は揃っていません。

市 負担者 金額
逗子市 市 更新料 33千円(令和7年度の負担金300千円に内包)
浜松市 市 記録なし
札幌市 推進組織(フェアトレードタウンさっぽろ戦略会議) 記録なし
熊本市・名古屋市・いなべ市・鎌倉市・大府市 審査記録に記載なし —

金額が公開資料で確認できているのは、逗子市の更新料33千円だけです。初回の認定申請料の額は、8本の事例記事のどこにも記録がありません。

「記載がない=推進組織が負担している」とは読まないでください。確認できていない、という状態です。

8. 8市の一覧

市 費目・名目 判明している金額 所管部署 認定料の負担
熊本市 フェアトレードシティ推進経費(当初予算に毎年計上) 記事では非掲載 政策局総合政策部国際課 記載なし
名古屋市 不明(「毎年継続して確保」とのみ) 記事では非掲載 環境局環境企画課 記載なし
逗子市 フェアトレード啓発事業負担金 負担金300千円(R6〜R8) 市民協働部市民協働課 市(33千円)
浜松市 単独費目なし(消費生活推進事業に内包) 事業計 7,158〜7,827千円 市民部市民生活課くらしのセンター 市
札幌市 単体の費目なし なし(予算文書に0件) 総務局国際部国際課 推進組織
いなべ市 事業名なし(予算書ヒット0件) 不明 農林商工部商工観光課 記載なし
鎌倉市 フェアトレード推進事業費補助金(上限20万円・補助率1/3) 補助金600千円→90千円 R8より市民防災部市民安全課 記載なし
大府市 当初予算に事業名なし(R7補正/R8地産地消推進事業内) R7補正 報償費37万円+需用費18.8万円 産業振興部商工業ウェルネスバレー推進課 記載なし

【FTFJ編集部による解説】これから予算を取ろうとする自治体へ

1. 認定に予算は要りません。しかし、続けるには要ります。 札幌市・いなべ市・大府市は予算書に事業名を持たないまま認定を維持しています。一方で、逗子市の3年間の中断が示すとおり、予算がない状態は財政状況の変化に対して無防備です。

2. 「委託費」より「負担金」を検討してください。 委託費は市が仕様書で使途を定めます。負担金は推進組織が用途を決められます。逗子市は復活の際にこの区分を変えました。

3. 「政策的経費」より「一般経費」を検討してください。 毎年度の査定対象から外れるかどうかが変わります。これも逗子市の実例です。

4. 市民が使える補助金は、上限額を実態から逆算してください。 鎌倉市は上限20万円・3分の1補助で設計しましたが、実際の申請は1万円台が中心でした。制度の魅力は上限額ではなく、申請の手続きの軽さで決まる可能性があります。

5. 国庫補助を間接補助に回す道があります。 鎌倉市が消費者庁の補助金を市民団体への補助の財源にした事例が、現時点で唯一の実例です。前例がないことを理由に諦める必要はない、ということを示しています。

6. 単独費目がなくても、現物で支えられます。 札幌市の印刷費負担、浜松市の店舗調査の委託料処理。予算費目を新設するより、既存事業の枠で処理するほうが早い場合があります。

7. 認定更新手数料の負担は、市の姿勢が最も分かりやすく出る箇所です。 審査側が「他の自治体の規範となる点」と明記したのが、浜松市の更新手数料負担でした。金額としては小さくとも、市が費用を負担するかどうかは、運動を市の事業として位置づけているかどうかの指標として読まれます。

8. FTFJへ 認定申請料・更新料の金額と負担者は、8本の事例記事のうち3市でしか確認できませんでした。申請様式に「認定料の負担者」の記入欄を設ければ、この情報が毎回残ります。これから申請する自治体にとって、費用の見通しは最初に知りたい情報のひとつです。


参照した公開情報

  • 逗子市 予算参考資料(令和6・7・8年度)、令和6年3月 第1回定例会 会議録
  • 鎌倉市 令和7・8年度予算、令和8年一般会計予算等審査特別委員会(2026年3月6日)、令和6年9月19日 決算特別委員会
  • 浜松市 令和6・7・8年度予算
  • 札幌市 局別施策の概要・一般会計予算説明書・予算の概要(令和7・8年度)
  • いなべ市 事務事業別予算説明資料・当初予算書(令和6〜8年度)
  • 大府市 令和7年度補正予算(第7号)、令和8年度当初予算および施政方針
  • 熊本市 令和8年度当初予算(案)要求状況一覧